少し補足すると、システムが正常に動作しなかったのにはアプリケーションの不具合も確かにあり、その点はベンダーの責任を否定できない。
ただ、不具合の中にはユーザー企業が別途契約したソフトウェアとのいわゆる「相性」の問題もあったようで、そこに明確な瑕疵(かし)があったわけではないらしい。そして「システムが全く動かない」というよりも、「そこかしこに不具合がある」という状態でもあったので、納品以降の修正は保守契約の中でやっていこうということになったようだ。
とはいえ、システムは業務に耐え得るものではなく、ユーザー企業はベンダーの責任で正常に動作するようにしてほしいと求めたが、ベンダーは「不具合の中には自分たちが作っていない部分が問題となっているものもあり、そこまでの責任は持てない。保守管理の責任は自分たちが作ったアプリケーションのみである」と反論している。
保守に関する契約でベンダーの責任範囲や具体的な業務内容などを開発の契約とは別に検討して明記するなどすればこうした問題は起きなかったのかもしれない。実際、その点を注意している読者もいるだろう。しかし本件のように、契約内容をあいまいにしたために後で問題になるケースも多いのではないかと思う。
「アプリケーションを作って保守を請け負うのだから、対象となるのはアプリケーションだけであって、それ以上は責任を持ちかねる」というベンダーの考え方は、一応は筋が通っているように見える。他方で、「開発契約については確かにアプリケーションのみを責任範囲とすればよいが、保守管理契約とは一般的にシステム全体の安定稼働を保証するために結ぶものであり、開発契約とは別の責任範囲になるはずである」という論も理屈ではある。
さて、裁判所はどのように判断したのだろうか。
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