20年以上AIと歩み、現在もAI組織を率いる研究者は、AIを「道具」ではなく「共に勝つための仲間」と定義する。マネジメントの視点や実務事例を交え、AIとチームで成果を出すための「真の共存戦略」を解き明かす。
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生成AI(人工知能)の大衆化から、3年。日常生活でAIに触れる場面は劇的に増えました。しかし、世にあふれる「AIを使いこなせ」「AIを使う側になれ」というあおり文句に、どこか物足りなさや違和感を覚えたことはありませんか?
私は、画像処理・認識技術の研究開発に10年以上従事し、新規事業企画を経て2017年にGA technologiesへ入社しました。研究機関「Advanced Innovation Strategy Center」を設立し、社会に出てから約20年、一貫してAIと共に歩んできました。
そんな私にとって、AIは単なる「道具」ではなく、ある種の「仲間」です。AIと共に「チーム」として成果を出す。これこそが、私の考える「AIとの共存戦略」です。
20年前に研究を始めたころから、AIブームの波は何度も訪れ、そのたびに「人間の仕事がAIに置き換わる」と予測されてきました。
しかし実際には、想像されたほどの代替は進みませんでした。理由の一つは、AIの精度が100%に到達しない一方で、社会には「100%の精度でなくていい仕事」が意外に少なかったからでしょう。これまでの「認知AI(Cognitive AI:認識、判断に特化したAI)」は、世の中の構造を根本から変えるほどのインパクトには至りませんでした。
対して「生成AI(Generative AI)」は、本質的なパラダイムシフトを起こす可能性を秘めています。特にデジタル完結の領域では、人間を凌駕(りょうが)する速度で試行、学習を繰り返せるため、ソフトウェア開発などの業務の在り方を劇的に変えつつあります。
それでも、私は「AIが人間に完全に置き換わることはない」と考えています。
動画のレコメンドや議事録作成など、「膨大な物量」や「即時性」が求められる作業はAIの得意分野です。しかし、「そもそも、なぜこの動画サービスを運営するのか」「この会議で何を決定すべきか」といった意志決定や目的設定の領域は、人間にしか担えません。
だからこそ、「AIを仲間と捉え、チームで勝つ」という視点が重要になるのです。
AIをチームの一員として迎えるには、まず人間側が「AI駆動型の思考法」にシフトする必要があります。AIを無理に人間の既存業務に合わせるのではなく、人間側が「AIが力を発揮しやすい形」に業務をリデザインする考え方です。
これはSaaS(Software as a Service)の導入に似ています。
SaaSを導入する際には、「Fit to Standard(業務をシステムに合わせる)」という言葉がよく使われます。自社独自のフローに合わせてシステムをカスタマイズしようとすると、多大なコストがかかるだけでなく、システムの進化に取り残されるリスクが生じるからです。実は、その「独自のこだわり」の多くは単なる慣習に過ぎず、洗練された標準フローに適応した方が、結果として業務効率は飛躍的に高まります。
AIの活用も、これと同じです。「AIに完璧を求める」のではなく、「高速でアウトプットを出すAIの強みを生かし、最終的な正誤確認は人間が行う」という役割分担(標準フローへの適応)が、最も投資対効果が高くなります。
また、AIを「自律的な実験、学習のパートナー」と捉える姿勢も欠かせません。一度の失敗で「使えない」と切り捨てるのは早計です。
AIをパートナーとして使いこなすためのポイントを記します
AIはいまこの瞬間も進化しています。トライ&エラーを繰り返し、その進化のスピードに並走し続けることが、共に勝つための唯一の道です。
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