ガラスストレージは「長持ちするだけ」ではない? 商用化を目指すMicrosoftの執念1万年以上先までアーカイブ 「身近な素材」で実現

Microsoftは、フェムト秒レーザーを用いてガラスにデータを記録する技術「Project Silica」の研究成果を発表した。

» 2026年03月30日 13時00分 公開
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 Microsoftは2026年2月18日(米国時間)、ガラスベースのデータストレージ技術「Project Silica」に関する研究成果を学術誌『Nature』に発表した。

 フェムト秒レーザー(超短パルスレーザー)を用いてガラスの内部にデータを記録する技術で、1万年以上先までデータ保存が可能になるという。

一般的なガラス材でデータ保存を実証

 発表によると、従来のProject Silicaは高価な溶融シリカガラスを使用していたが、キッチン用調理器具やオーブンのドアに使われる一般的なホウケイ酸ガラスでもデータ保存が可能であることを実証したという。これにより、ストレージメディアの材料コストと入手性の面で、商用化への障壁が低減したという。

 読み取り装置に必要なカメラは従来の3〜4台から1台に削減され、装置の小型化と低コスト化を実現。書き込み装置も部品数が簡素化されたため、製造や調整が容易になり、データ記録速度が向上している。

ガラスストレージ技術「Project Silica」(提供:Microsoft) ガラスストレージ技術「Project Silica」(提供:Microsoft)

 Microsoftは主に4つの技術的進展を報告している。

  • 「複屈折ボクセル」書き込みの改良
    • ボクセル形成に必要なレーザーパルス数をわずか2パルスまでに削減、さらに「疑似単一パルス書き込み」を実現した
  • 「位相ボクセル」方式の導入
    • ガラスの偏光ではなく位相変化を利用する新方式で、ホウケイ酸ガラスでも単一パルス記録を可能にした
    • 位相ボクセルにおける高い符号間干渉(インターシンボル干渉)の課題も、機械学習モデルによって軽減した
  • 並列書き込み機能
    • 数学モデルとマルチビーム伝送システムの発明により、複数データボクセルを同時記録し、書き込み速度が大幅に向上した
  • シンボルエンコーディング最適化と耐久性テスト
    • 機械学習モデルを用いたシンボルエンコーディング(データを物理的な記録状態に変換する符号化方式)を最適化し、エラー率、エラー保護、エラー回復のトレードオフを改善した
    • ガラス内のデータ保存ボクセルの経年劣化を特定する非破壊光学手法を開発した
高速度データ書き込みを実現する研究用書き込み装置 マルチビームによる並列書き込み技術が搭載されている(提供:Microsoft) 高速度データ書き込みを実現する研究用書き込み装置 マルチビームによる並列書き込み技術が搭載されている(提供:Microsoft)
ガラス内に記録されたデータを読み取る研究用読み取り装置 従来3〜4台必要だったカメラを1台に削減した(提供:Microsoft) ガラス内に記録されたデータを読み取る研究用読み取り装置 従来3〜4台必要だったカメラを1台に削減した(提供:Microsoft)

 Project Silicaは、Warner Bros.の映画「スーパーマン」を石英ガラスに保存した他、「Global Music Vault」(世界中の重要な音楽データを数千年にわたって保存するための北極圏の地下貯蔵庫)と提携して音楽を氷の下で1万年保存するプロジェクトを実施。「Golden Record 2.0」(地球の音や画像を宇宙へ伝えるプロジェクト)では、人類の多様性を表す画像、音声、音楽、言語のデジタルアーカイブを作成している。

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