実装工程開始後に現場から押し寄せる怒涛の追加要求。仕様凍結後も止まらない要望の嵐にプロジェクトが崩壊したとき、14億円もの賠償責任はどちらが負うべきなのか。「IT訴訟動画解説」第5弾は、IT業界で伝説として語り継がれる「旭川医大の惨劇」をピックアップし、ベンダーとユーザー企業それぞれの義務の境界線を専門家が解き明かす。
アイティメディアが運営するYouTubeチャンネル「TechLIVE」では、テキストだけでは読み解きにくいIT訴訟の核心を、動画で分かりやすくお届けしています。
複雑なIT訴訟の争点を動画で分かりやすく解説するIT訴訟動画解説シリーズ。第5弾で取り上げるのは、札幌高等裁判所(2017年8月31日判決)で争われた、通称「旭川医大の惨劇」です。
舞台は医療法人の電子カルテ更改プロジェクト。大学側の窓口が現場の医師たちの要望をまとめ切れず、ベンダーであるNTT東日本に対して、医師から直接電話や直談判による追加要件依頼が五月雨式に発生しました。その数は1000項目近くに及び、ベンダーが仕様凍結を宣言した後もさらに171項目の追加が寄せられるという異常事態に。結果、プロジェクトは破綻し、14億円という巨額の損害賠償を巡る泥沼の法廷闘争へと発展しました。
解説の細川義洋氏(ITプロセスコンサルタント)は、一審と控訴審で判決が「真逆」になった点に注目し、システム開発における「ユーザーの協力義務」の必要性を説きます。
一審ではベンダーのリード不足が指摘されたものの、高裁では「ユーザーには一度確定した仕様を不当に蒸し返さない義務がある」と逆転の判断が下されました。細川氏は、プロジェクト破綻を未然に防ぐためにベンダーが取るべき行動を整理します。
システム開発とはどのようなものか、円滑な進行のためにユーザー企業にはどのような協力が必要で、具体的にどれほどの作業負担がかかるのかを、契約やキックオフ前に明確に伝えておくこと。
単に「できません」と言うだけでなく、会議などで繰り返し「これでは完成しない」と期限やリスクを明確に伝え続けること。
現場(エンドユーザー)が直接開発者に要望を出すのではなく、適切な窓口を設定して情報の集約を図ることを契約や提案段階で合意しておくこと。
組織特有の繁忙期を避け、エンドユーザーが要件定義にしっかり向き合える現実的なスケジュールを提案すること。
細川氏は発注者側に対しても、トラブルを避けるためのポイントを挙げています。
最終的にシステムを使うのは自分たちであることを自覚し、丸投げせずに主体的にプロジェクトに関与すること。
正式発注前に内部で「何が実現できればうれしいのか」というイメージを固め、開発中はプロトタイプなどを活用して早期にフィードバックを行うこと。
ベンダー側の説明が不明瞭な場合は、納得がいくまで確認し、全体の枠組みを相互に理解した上で進めること。
番組冒頭の恒例企画「フルーツ寸劇」では、お医者さまからの細か過ぎるこだわり(フォントサイズや2ミリのズレなど)に翻弄(ほんろう)され、徐々に衰弱していくベンダーの様子がコミカルに描かれています。
「個別に部屋を持ち、隣の先生が何を言っているのか分からない」という医師特有の環境もプロジェクトを難航させた一因となった本事例。ベンダーはもちろんのこと、発注者側も持つべき「自覚」の大切さを、動画を通じて考えます。
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