AIの業務利用が新人エンジニアにも広がり、開発現場では「育成」と「レビュー」の両面で新たな負担が生まれています。複数の調査からは、AIを使いこなす上で欠かせない人間側のスキルが浮かび上がりました。
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AIの活用は、開発業務に劇的な効率化をもたらしました。しかし、その一方で新人育成やコードレビューの現場では、これまでにない新たな課題が噴出しています。4つの調査データが詳らかにした現在の開発現場のリアルと、今後エンジニアに求められるスキルの本質に迫ります。
ジョブサポートは2026年4月22日、「新人エンジニアの生成AI利用実態と指導負担」に関する調査結果を発表しました。新卒・若手エンジニアの指導経験者1004人を対象としたこの調査では、指導する新人・若手が業務で生成AIを「積極的に活用している」(40.0%)、「必要に応じて利用している」(50.0%)と回答し、生成AIの日常業務への浸透ぶりが明らかになりました。
一方で、AIが生成したコードを巡る深刻な課題も浮き彫りになっています。
新人エンジニアが生成AIを使って作成したコードについて、「出力されたコードの仕組みや根拠を本人が理解していない」(61.4%)と指導経験者の過半数が回答。さらに、「要件を読み解けず、曖昧な指示を出している」(47.5%)、「エラーの原因を自力で特定・修正できない」(36.6%)と、“基礎能力の不足”を指摘する声が続いています。
AI生成コードにバグやエラーがあった際の新人エンジニアの対応として最も多かったのは、「エラー文を自分で読まず、やみくもにAIに再質問を繰り返す」(46.5%)でした。「『AIの出力なので分からない』と回答の根拠をAIに丸投げする」(45.8%)というケースも目立ちます。
ジョブサポートは、生成AIの利用によって自ら論理的に考え検証する行動が省略され、エラー解決力が育ちにくい環境が生まれていると分析しています。
こうした状況は、現場のOJT(On the Job Training)の負担に直結しています。指導やコードレビューにかかる時間が「大幅に増加した」(26.1%)、「やや増加した」(51.8%)と、約8割の現場が指導負担の増加を実感しています。
負担が軽減されない理由としては、「エラー解決を粘り強く行う『当事者意識・自走力』がないから」(52.3%)が最多。「正誤を判断する『体系的な基礎知識』がないから」(48.9%)、「適切な指示を出す『言語化能力・読解力』が不足しているから」(30.5%)も上位に挙がっています。
AIによって新人の作業速度は上がっても、出力内容の確認、理解度の確認、基礎からの教え直しが必要になれば、指導側の負担はむしろ増加しているのが現状です。
AI生成コードによるレビュー負荷の増大は、新人育成の現場に限った話ではありません。コードをチェックするレビュワーにも重い負担を強いています。
キッカケクリエイションがコードレビュー担当エンジニア322人を対象にした調査では、AI生成コードをレビューした経験があるエンジニアの約9割が、負担増を実感していました。直近1カ月でレビューや修正に週3時間以上を費やした担当者も67.5%に上ります。
レビュー時に問題だと感じた点の上位は、「提出者本人がコードの内容を説明できなかった」(49.5%)、「動作するが、なぜ動くのか理解しにくいコードだった」(33.6%)、「エッジケースで正常に動作しないコードだった」(31.8%)という結果でした。
実際に、直近6カ月以内にAI生成コードが原因のバグや障害の修正対応に関わった経験は約8割を占めています。
その結果、「AIの活用によってコードを書く速度は上がったが、動くソフトウェアを届ける速度はあまり変わらない」と感じるエンジニアは74.8%に達しました。AIの活用が開発全体のスピード向上と直結していない現状が明らかになっています。AI生成コードが増え続けることで、コードベース全体の品質維持に危機感を持つ人も76.4%に上ります。
AIの導入によって従来の定型業務が効率化されているのもまた事実です。TWOSTONE&SonsがAIツールを開発業務で使用しているエンジニア108人を対象にした調査では、AI導入後に業務時間が減ったタスクとして、「テスト実行・結果確認」(38.9%)、「テストコードの作成」「定型的なコーディング」(ともに38.0%)が上位に挙がりました。
その半面、AI導入後に新たに発生した、または増加した業務が「ある」と回答した人は、72.2%に達しています。
具体的には「プロンプトの設計・最適化」(52.6%)が最多、続いて、「AI生成コードの統合・リファクタリング」(41.0%)、「AI出力のレビュー・品質担保」(38.5%)、「AI生成コードの品質を担保するためのテスト設計・テスト戦略」(37.2%)といった、コードの品質向上に関する業務です。
これらの新業務に伴う変化として、最多となったのが「求められるスキルの幅が広がった」(53.8%)でした。「業務量が増えた」(46.2%)、「意思決定や判断を求められる場面が増えた」(41.0%)がそれに続いています。
TWOSTONE&Sonsは、エンジニアに求められる能力の軸が、従来の「コードを書く人」から「AI出力を評価・統合し、品質を担保する人」へと移行しつつあると指摘しています。
では、これからの若手エンジニアはどのような技術を身に付けるべきなのでしょうか。そのヒントとなる調査を特定非営利活動法人エルピーアイジャパン(以下LPI-Japan)が発表しています。
年収700万円以上のSRE(Site Reliability Engineering)やインフラアーキテクト110人を対象にした調査によると、若手時代に学んだ技術が現在のキャリアに役立っていると答えた割合が87.0%を占めています。
役立っている理由として最も多かったのは「新しい技術を学ぶ際の土台になっているから」(57.5%)で、「設計やアーキテクチャ検討で生かせているから」「技術的な判断・意思決定の根拠になっているから」(ともに46.0%)、「障害対応やトラブルシューティングの基盤になっているから」(44.8%)が続いています。
同調査では、今の若手エンジニアにLinux/OS基盤技術の学習を勧めるかという質問に対し、「強く勧める」「やや勧める」を合わせると77.3%が推奨すると回答しました。
推奨する理由は「トラブルシューティング能力の土台になるから」(54.1%)が最多で、「クラウドやコンテナの基盤はLinuxだから」が44.7%、「他の技術を学ぶ際の理解が早くなるから」(42.4%)、「AIに代替されにくいスキルだから」(37.6%)と続きます。
一方で、クラウドの普及などにより若手がOSや基盤技術に触れる機会が「減っている」と実感する回答者も77.2%に上ります。
キャリアを築く若手へのアドバイスとしては、「トレンド技術だけでなく基礎も大切にすべき」(49.1%)、「表層的な操作だけでなく仕組みを理解すべき」(37.3%)、「実務経験を積みながら学ぶべき」(32.7%)、「Linux/OS基盤を早いうちに学んでおくべき」(27.3%)といった、仕組みの深い理解を求める声が上位を占めました。
4つの調査から見えてきたのは、AI活用が進むほど、出力されたコードの正誤を判断し、コントロールするための「基礎知識」と「解決力」の重要性が高まるという事実です。
単にAIに指示を出すだけでは、本当の生産性向上や個人の成長にはつながりません。
基礎的な仕組みを深く理解し、トラブルに直面した際にも自力で考え抜く――。そんな「AIに代替されない本質的な自走力」を育てることこそが、これからのエンジニア育成と企業の成長において、最も重要なテーマといえるでしょう。
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