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正しいライバルを持つべき理由ITエンジニアのチームリーダーシップ実践講座(15)(3/3 ページ)

あなたのライバルは誰ですか――同期? 同じ部署のメンバー? それも自分自身?

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会社が評価するのは「個人」の前に「チーム」の業績

 チームメンバーは協力し合って、チームの力を増強すべきです。チームの力は仕事の結果に表れます。質・量ともに優れた結果を残していけば、黙っていても良い仕事が回ってきます。優れたチームが放っておかれるわけはありません。

 個人の業績はよほど飛び抜けたものでもない限り、なかなかトップの目には留まりません。一方チームの業績は、まとまった数字として定期的に報告されるので目立ちます。査定においても、評価の順序は「事業部」→「部」→「課」→「係」→「個人」の順であるはずです。

 個人がいくら秀でていても、組織の壁を超えて大抜てきされるケースは非常にまれです。しかしチーム単位であれば、ラッキーな仕事や質の良い仕事に巡り合うチャンスが増えます。その仕事で成功すれば、またチームの評価が上がります。いったん好循環ができれば、後はそのサイクルの維持に努めればよいのです。

 メンバー全員が団体戦を戦っているという認識になれば、団結や活性がおのずと生まれ、必要に迫られて意思疎通も良くなるに違いありません。

社外のライバルを意識して競争力を付けるには?

 普段はこんなテーマを考える機会はなかなかないかもしれません。IT業界は歴史が浅く特殊な業界なので、その中にどっぷり漬かっていると、井の中の蛙(かわず)状態であることが分からないものです。エンジニアは、自分の技術を高く評価するあまり専門分野にどんどん特化して、世間一般の常識に疎くなりがちです。裸の王様状態で他から失笑を買っているのにそれすら気付かない、という事態になりかねません。

 「ライバルは社外に見つけろ」と書きましたが、では具体的にどうやって探せばよいのでしょうか? 知っている範囲で企業の名前を検索するところから始めますか? 知っている範囲とは、同じ業界が多いのではありませんか?

 業界内で似たようなビジネスモデルを展開する競合に狙いを付けても、二番煎じの策しか出ないでしょう。国内で足を引っ張り合ったら、その間に外国企業にパイをとられ、日本のIT業界自体が衰退してしまうかもしれません。

経営の基礎知識は必須アイテム

 企業の競争を考えるに当たっては、「戦略」や「マーケティング」「財務」の知識が必須です。大学の経営学レベルの知識を得よとまでは言いませんが、それぞれの分野で欠かせないキーワードや代表的なフレームワーク、その意味するところを一通り知ることは、社会人として必要最低限の常識です。

 経営の基礎知識は仕事に直結しているので、知れば知るほど役立ちます。視野が広がり、思考のバランス感覚が変わります。セミナーなどに参加したり、半日くらいで読めるような入門書をさらっと読んだりして、まずは興味を持つことをお勧めします。


IT以外の知識が仕事の強みとなる

ポイント

IT以外の知識にも関心を向ける

成熟したリーダーへ

 なぜ筆者は長々とITと関係が薄い話をするのか、といぶかしむ方がおられるかもしれません。それは、リーダーに業界の外に目を向けてほしいからです。皆さんこそが、5年後、10年後にIT業界の中心人物になるのです。人ごとではなく、当事者として意識を持ちませんか?

 チームのメンバーも、リーダーが折に触れて、業界のことや数字のこと、将来の展望などを話にはさむと、興味や関心を示すようになります。知らない分野の話を聞かせてくれるリーダーに、メンバーは「すごいなあ」と尊敬の念を抱くかもしれません。

 サブリーダーやメンバーに次のように問い掛けてみてください。「自分たちにもマーケティングや財務の基礎知識は必要だよね。何でだと思う?」

 サブリーダーやメンバーから、「ユーザーの業務知識に詳しくなると、システムの設計や運用に役立つから」と答えが返ってきたら、リーダーの出番です。「それも正しい。でも、それが一番じゃないだろう?」

 自分たちの業界や所属する会社を理解するために知識が必要なのだと気付いてもらい、目の前のシステム案件だけではなく、「自分の会社」そのものにも興味を持つべきだと、メンバーに伝えましょう。

 次回は「チームワークに必要な考え方」を解説します。

筆者プロフィール

上村有子

上村有子

エディフィストラーニング インストラクター。外資SIer、証券会社を経て2000年に野村総合研究所入社。現在、情報化戦略、コンプライアンス、ビジネスコミュニケーション領域のコース開発、講師。専門分野はBA(ビジネスアナリシス)、コミュニケーション。


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