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それは連帯責任ではありません――チームが助け合ってはならないときITエンジニアのチームリーダーシップ実践講座(最終回)(2/2 ページ)

業務で目的を達成するためには、活力あるチームを作り、運営していくことが重要だ。本連載では、ITエンジニアのリーダーシップスキルの向上に役立つツールや考え方を詳しく紹介する。今回は「チーム内での助け合いの是非」について説明する。メンバーの仕事がスムーズに進まなかったり、大きな損失を出してしまったりしたとき、チームはどのようにカバーすべきだろうか?

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「連帯責任」の意味をはき違えない

 ここで質問です。チームでやる作業は、チーム全員に連帯責任がありますか?

 答えは「いいえ」です。同じチームのメンバーが、他のメンバーの仕事に対していつでも連帯責任を負うとは限りません。チームメンバーのコンセンサス(承認)を得ずに始めた仕事は、連帯責任の範囲外です。

 連帯責任は、着手の時点で、チームのメンバーがそれをコミット(やり抜くと意思表示)し、自分たちの仕事として十分に認識できている場合に限って適用されるものです。着手時点でなくても、少なくとも何らかの不都合が発生する以前のコミットが必要です。

 他のメンバーのコミットなしに始めた仕事は、何か問題が生じても他のメンバーにサポートを強要できません。リーダーもしっかりとけじめを付けましょう。

 メンバーが個別に新しい契約や仕事を始めたいと申し出たら、状況によってはリーダーが奨励、許可することがあるでしょう。ただし、チーム全体のコンセンサスを取らずに始めた仕事は、どんな事態になろうとも他のメンバーに火の粉が降り掛からないようにするべきです。

 さまざまな問題に対して「チーム」を安易に利用しようとする人を、ときどき見かけます。自分の蒔いた種は自分で刈り取るべきですし、他のメンバーとシェアする意図があるのなら、ごく早い時期に明確に「握る」必要があります。

 メンバーは相互に利害関係があるという意識が低いと、自立と自律の妨げになります。また、一方的に得する人/損する人ができて、チームの将来が危うくなります。


事前の了解がない仕事はチームのものではない

 一方、「自分の蒔いた種は、自分で刈り取るべきだ」を誤解して、一人で責任を負うことに固執する人もいます。例えば、チームで開発しているのに、一人だけ品質が上がらず、結合テストの時点になっても一人でやることにこだわり続け、全体に悪影響を及ぼすような場合です。

 自分一人が犠牲になって仕上げればよいと考えるのかもしれませんが、仕事にはチーム内のみならず、顧客や他部門、その他多くの利害関係者がいます。一人で犠牲になったつもりが、みんなを犠牲にしていたことになりかねません。

 このようなときは大局的な判断が不可欠です。担当者を変えるなり、追加の人を投入するなり、リーダーが判断すべきなのです。あなたのチームにも、責任の意味を誤解している困った人はいないでしょうか? ゆめゆめ、リーダーであるあなた自身がそうではないことを期待します。「自分に限って、そんなことはない」という気持ちを抑え、冷静に振り返ってみましょう。

ポイント

連帯責任の基準を明らかにする

 2013年より連載を続けてきた「チームリーダーシップ実践講座」は、今回が最終回です。スポ魂漫画に出てくるような熱く情熱的なチームでなくても、静かなで穏やかなチームでも、チームワークの良い職場には何か不思議な力が宿っています。その力は、実はリーダーの仕掛けによるところが大きいのです。

 本連載が、リーダーの皆さんがメンバーと共により良いチームを作ることの一助となれましたら幸いです。よいチームライフを!

筆者プロフィール

上村有子

上村有子

エディフィストラーニング インストラクター。外資SIer、証券会社を経て2000年に野村総合研究所入社。現在、情報化戦略、コンプライアンス、ビジネスコミュニケーション領域のコース開発、講師。専門分野はBA(ビジネスアナリシス)、コミュニケーション。


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