佐賀編:ストファイ、ポケモン、タイ映画――コラボで地方創生を加速する“誇り”の国:ITエンジニア U&Iターンの理想と現実(65)(2/2 ページ)
AIロボットがアスパラを摘み、オリジナルソフトが砂場の等高線や色をプロジェクションマッピングする――佐賀は今、絶賛変化中だ。
斬新なコラボが続々、「サガプライズ」
佐賀出身の古瀬氏は「佐賀県はここ5年ほどで、面白くなってきた。住人も徐々に変わりつつある」と、変化を感じ取っている。10年前はまだ風通しの悪さやあか抜けなさが残り、異端児は敬遠されていた。しかしここ5年ぐらいは、変わり者がいても「変わり者でいい」と変化に寛容になってきたというのだ。
近年の変化として顕著なのが、情報発信による地方創生プロジェクト「サガプライズ!」だ。
スクウェア・エニックスとの「Romancing佐賀」では佐賀の伝統工芸品や食材を活用したコラボ商品を販売し、熱気球のイベント「佐賀インターナショナルバルーンフェスタ」では「ポケットモンスター」のニャース熱気球を登場させてポケモンファンにアピール。ピカチュウの巨大人文字にも挑戦した。
佐賀は、海外からも注目されている。特にタイでの人気は急上昇中だ。
積極的にロケを誘致したかいがあり、2014年タイ映画興業収入ランキング5位の「タイムライン」、テレビドラマ「STAY Saga〜わたしが恋した佐賀〜」など、タイで人気の映画やドラマに佐賀が登場している。観光客が聖地巡りに続々と訪れ、佐賀の神社にはタイ語で書かれた絵馬がたくさん飾られている。
なお、九州佐賀国際空港は早くからLCC(格安航空会社)が就航しており、海外と行き来しやすい。東京から見ると佐賀は遠いが、海外を視野に入れている人には、案外便利な場所かもしれない。なお、県内の移動に車は欠かせない。
佐賀のグルメといえばイカ。菱木氏は「他で食べられないものといえば、イカ」と断言し、古瀬氏は「イカの世界が違う。佐賀に来てイカを食べないのは人生の損失」と力説。透き通るほどのイカの生造りは新鮮さと料理人の腕を必要とするため、佐賀でないと味わえないとのこと
佐賀は、何がきっかけで変化したのだろうか。佐賀県の首都圏企業誘致担当者は、「知事の影響が大きい」と指摘する。2015年から知事の職に就き現在二期目を務める山口祥義氏は、総務省出身で新しいことに積極的だそうだ。
なお、先述したサガプライズでは格闘ゲーム「ストリートファイターII」ともコラボしており、タイ出身のファイター「サガット」にちなんだ「佐賀ット商店」を開店した。オープニングイベントでは山口知事がリュウに扮(ふん)して登場した。
これから期待すること
ITエンジニアのUIターン先として、就職事情はどうだろうか。
佐賀市には前述のinahoやアールテクニカの他にも、日本マイクロソフトが佐賀大学などと共同運営する「マイクロソフトAI&イノベーションセンター佐賀」や、AIソリューションを手掛ける「LIGHTz」(ライツ)がある。
LIGHTzは、AIを技術継承に役立てる企業だ。「匠(たくみ)」と呼ばれる職人、「レジェンド」と呼ばれる伝説的なスポーツ選手が、どう視線を動かし、どう手足を動かしているのかをAIで分析し、次世代につなげようとしている。
しかし全体では、ソフトウェア開発などのエンジニア求人はまだ多くはない。ただし佐賀県が先進的な企業誘致に積極的なので、エンジニアが活躍できる場は今後増えていきそうだ。菱木氏によると、佐賀県に進出する企業への助成金は、近隣県に比べると手厚い。自治体によっては家賃補助を半分が県、残り半分を市が負担することもあるそうだ。
古瀬氏と菱木氏に、今後の展望を伺った。
古瀬氏は「シーンがないと人が集まらないし、育たない。今の佐賀にはシーンができつつあり、仕事の存在が見えるようになってきた。このまま進むことを期待している」と話す。
菱木氏は「地域として強くなるには教育が大事。地元の小学生にロボット見学をさせたところ、大変好評だったので今後も続けたい。テクノロジーが分かる人材を育てることは必要だし、地域へのお返しにもなると思う」と述べた。
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