「Java FAQ(What's New)」の安藤幸央氏が、CoolなプログラミングのためのノウハウやTIPS、筆者の経験などを「Rundown」(駆け足の要点説明)でお届けします。(編集局)
6月10日から13日の4日間、米国サンフランシスコにて、Java開発者向けのカンファレンス、「JavaOne 2003」が開催されました。
9.11(グラウンドゼロ)以降、テロの心配や、SARSのまん延、それに加えて ITバブルの崩壊など、多くの不安要因を抱えつつも、無事に開催されました。
今回のJavaOneは、「ビジネス! ビジネス!」と大騒ぎしていたころとは違い、より技術志向で、原点回帰したものであったそうです。Java 開発者向けの内容の濃い、技術情報の充実したカンファレンスであったと伝え聞いています。
今回のJavaOne最大のニュースと半分冗談交じりに紹介されているのが、Java の新しいロゴの発表です。同時に発表があったjava.netやjava.comのトップページをご覧になると新しいロゴデザインが分かります。基本的には、いままでのコーヒーカップから湯気が立ち上っている絵柄です。新しいロゴは以前よりも線がはっきりとし、スッキリとした印象です。これは携帯電話などの小さな画面でもはっきりとしたロゴが表示できるよう考慮されているのかもしれませんね。技術面だけではなく、ロゴマークやネーミングなど、マーケティング戦略を巧妙に練っているところもJavaが好印象で広く受け入れられている要因でしょう。
java.netは、サン・マイクロシステムズ、オライリー、コラボネットが支援するJavaコミュニティサイトです。Java がゲームの世界でも浸透していくよう、後押ししていく様が見て取れます。
また、java.netではJames GoslingらのWeblog(日記形式のオピニオンや技術メモなど)も公開され、現在よりもさらにJavaコミュニティを広げていこうという勢いが感じられます。以前からJava関連のWeblogをまとめたJavaBlogsなどがありましたが、java.net上のWeblogの呼び物は、GoslingのWeblogが読めることでしょう。Goslingが最近どんなことに興味を持って、どう日々を過ごしているのかが手に取るように分かるのです。
またWikiを用いた情報共有の仕組みや、SouceForgeが行っていたようなオープンソース開発のためのリソース提供も開始しました。
Java情報のポータルサイトとしてjava.comが登場しました。java.sun.comが開発者向けのサイトである一方、java.comはユーザー向け、Java 利用者向けという印象の強いサイトです。Javaによって作られたゲームにもフォーカスされています。米国では、DELLとヒューレット・パッカードのパソコンにJavaが標準搭載されて出荷されることが伝えられました。利用者にとってはJavaへの敷居が圧倒的に下がる出来事でしょう。
今回のJavaOneでは、Javaのゲーム用途が盛んに強調されているようです。Javaとネットワークの親和性は周知の事実です。MMOG(Massive Multiplayer Online Game)に適した環境であるといえる一方、さまざまなノウハウや、大規模なオンラインゲームのサービスを行う際の手法などがこれから蓄えられていくことでしょう。
一方、ゲーム用途向けの3次元描画に関してはどうでしょうか? OpenGL Java bindingで高速な描画を進める一方、Javaには3次元描画用のAPIであるJava3Dが存在します。3次元描画ハードウェアを駆使した高速な描画を実現するOpenGL Java bindingとオブジェクト指向に基づいた高次元のAPIであるJava3D。双方のAPIのすみ分けと、役割分担、お互いの長所を生かした共存がこれから進むのではないかと思われます。
Project RAVEは、JSF(JavaServer Faces)を包括したビジュアル開発ツールです。今回のJavaOneで初めてお披露目されました。
JavaServer Pagesよりも一歩進んだ形で、少ないプログラミング量でWebアプリケーションの構築が可能になるそうです。今年秋ごろに初期試用版がリリース予定だそうです。また、サンのProject RAVEだけではなく、Borland、IBM、Oracleも、JSFに対応したツールをリリース予定だそうです。これによってよりWebアプリケーションのすそ野が広がることでしょう。
Project RAVEの主な狙いは、Microsoft .NETや、Visual Basic などを用いている開発層の移行だといわれています。
Project RelatorはJ2ME環境の携帯電話やPDAなどの情報端末の画面と、J2EE環境で動作するサーバサイドのWebアプリケーションとを連携する開発環境です。2004年中ごろに初期バージョンが一般にお目見えする予定だそうです。
はじめはPersonal Java環境を想定しており、J2EEと携帯電話ががっちりとタッグを組むのは、もう少し先になりそうです。
Java Research Licenseは、研究目的のためのライセンス形態です。学術的、技術的な研究を行っているJava開発者向けのライセンスが新たに発表されました。
ここまでに紹介したニュースのほかにも、PHPのようにプログラミングできるScripting Javaの話や、J2EE v1.4、Sun ONE Studio 5、Jini Starter Kit 2.0など、数多くのJava技術が着実に広がってきている印象があります。
J2SE 1.5の産声も聞こえ始め、Javaは確実に前進しているという確固たる実感が得られたのが今回のJavaOneでしょう。
来年2004年も同じくサンフランシスコで、6月28日から7月1日の4日間の開催が予定されているそうです。ドックイヤーとも呼ばれるこの移り変わりの早い業界で、1年間にどれだけJavaが育ち、広がっていくのか、いまはまだ、だれにも分からないのかもしれません。1年後がまた楽しみです。
次回は8月下旬の公開予定です。
安藤幸央(あんどう ゆきお)
1970年北海道生まれ。現在、株式会社エヌ・ケー・エクサ マルチメディアソリューションセンター所属。フォトリアリスティック3次元コンピュータグラフィックス、リアルタイムグラフィックスやネットワークを利用した各種開発業務に携わる。コンピュータ自動彩色システムや3次元イメージ検索システム大規模データ可視化システム、リアルタイムCG投影システム、建築業界、エンターテインメント向け3次元 CG ソフトの開発、インターネットベースのコンピュータグラフィックスシステムなどを手掛ける。また、Java、Web3D、OpenGL、3DCG の情報源となるWebページをまとめている。
ホームページ:
http://www.gimlay.org/~andoh/java/
所属団体:
OpenGL_Japan (Member)、SIGGRAPH TOKYO (Vice Chairman)
主な著書
「VRML 60分ガイド」(監訳、ソフトバンク)
「これがJava だ! インターネットの新たな主役」(共著、日本経済新聞社)
「The Java3D API仕様」(監修、アスキー)
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