この連載では、100人くらいのユーザーのいる小規模ネットワークに起こるさまざまなトラブルを、ネットワークツールを用いて解決していきます。主人公は、社内の管理者兼プログラマーの律子さん。前回のトラブル・シューティングの模様は第1回「LANから外に出られない」、第2回「どうして課長だけプリントできない」、第3回「ネットワークに同じIPアドレスが2つある?」、第4回「メールが受信できない!?」、第5回「ファイルがアップロードできない?」、第6回「わたしだけネットワークにつながらない」をご参照ください。
「律子さん、ちょっといいですか」
相変わらず日々のネットワーク管理とコーディングに追われている律子さんですが、律子さんのところに困った顔をした後輩の英人君がやって来ました。このごろ遅くまで作業しているみたいなので、彼に与えられた課題のプログラムが書けないので悩んでいるのかと思いましたが、今日はネットワークのトラブルのようです。
律子さんも納期が差し迫っているのですが、管理者なので話くらいは聞いてやることにしました。
英人君 「なんか、つながらないサイトがあるんですよ」
律子 「ん? どういうことよ」
英人君 「Windows Updateにつながんないんですよ」
律子 「込んでるからじゃないの」
英人君 「でも、福嗣先輩のマシンからは簡単にアップデートできるんですよ」
律子 「ほかのサイトにはアクセスできるの?」
英人君 「それはいまのところ問題ないっす」
律子 「じゃ、いいじゃない。私だって忙しいのよ」
英人君 「さすがにアップデートできないのは問題じゃないのかと思うんですよ」
英人君がいうには最近自分のマシンがアップデートされていないようなので、気になって手動でアップデートサイトにアクセスしてみたのだけど、Webページが表示されないというのです(セキュリティが最近問題となっていることもあり、律子さんの管理するネットワークのクライアントは自動的にOSのサイトへアップデートを確認に行くように設定されています)。
律子さんはどうせ相手のサーバの問題で時間が解決してくれると思っていたのですが、後輩の前でちょっとくらい仕事のできるお姉さんぶりを見せ付けてやろうかしらと「しょうがないわねえ、何とかしましょう」といい放ち、英人君のマシンにのこのこと行って、確認してみることにします。
ブラウザからアップデートサイトにアクセスしてみますが、英人君のいうように本当につながりません。いったん自分の席に戻って、アップデートサイトに接続できるのを確かめてから再チャレンジしてみましたが、やっぱり接続できません。
あ、ほんとだ、つながんない。どうして? 慌てて律子さんはコマンドプロンプトを立ち上げて、Pingを打ってみることにします。
英人君のPCからwindowsupdateに向けてPingを打ってみるが……
C:\Documents and Settings\eight>ping windowsupdate.microsoft.com Pinging windowsupdate.com [0.0.0.0] with 32 bytes of data: Destination specified is invalid. Destination specified is invalid. Destination specified is invalid. Destination specified is invalid. Ping statistics for 0.0.0.0: Packets: Sent = 4, Received = 0, Lost = 4 (100% loss),
あれっ? Pingもつながってない。
ほかのサイトにアクセスしてみましたが、サイトを見ることもできますし、Pingでもアクセスできます。
「何かがおかしいわ。隣のマシンでも私のマシンでも正常にアクセスできるのに、どうしてここからこのサイトだけアクセスできないのだろう」と、律子さんはまたまたパニックになってしまいました。
もちろん次に打つ手は思い浮かびませんが、隣の英人君に動揺を気付かれると後輩たちにバカにされてしまいます。律子さんはなるべく心のドキドキを見透かされないように、考えているふりをしたり、資料を読んでいるふりをしてみます。
ほかのマシンでは大丈夫だから多分このマシンのどこかに問題があるに違いない。そこまでは考えられたのですが、それ以上は何も浮かんできません。
心を落ち着かせるためにいったん自分の席に戻ってPCに向かうと「ホスト名の解決ができてますか?」とスクリーンセイバーに文字が流れています。
あ、そうか、ホスト名が変換できないからアクセスできないのかもしれない。nslookupを使って、ホスト名をIPアドレスに変換できているか確かめればいいのか。
早速、律子さんは英人君のPCに行き、nslookupを使ってみることにします。
nslookupでホスト名がIPアドレスに変換できているか確かめる
C:\Documents and Settings\eight>nslookup windowsupdate.microsoft.com DNS request timed out. timeout was 2 seconds. Server: ns.example.co.jp Address: 61.207.9.4 Non-authoritative answer: Name: windowsupdate.microsoft.nsatc.net Addresses: 207.46.134.92, 207.46.249.56 Aliases: windowsupdate.microsoft.com
ちゃんと変換できました。そうか、IPアドレスを使ってアクセスすればいいのか。
http://207.46.134.92/
律子さんはブラウザにIPアドレスを入力してアクセスしてみると、アクセスできました。なんだ、IPアドレスを使えばいいじゃない。
律子 「これからは接続できないときはnslookupを使ってIPアドレスに変換してからアクセスしてちょうだい」
英人君 「なんだよ、それ、めんどくさいじゃないですか?」
律子 「つながらないのはアップデートサイトだけなんでしょ。いいじゃない」
英人君 「まあ、つながらないよりはマシですかね……」
何とか英人君を納得させると律子さんは自分の席に戻りました。
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