最適ネットワーク機器選択術 3.イーサネット カード選びの方程式3-2. 一般的な100BASE-TX PCIカードの選択ポイント島田広道 |
デスクトップPCには100BASE-TXのPCIカードが最適であることはわかったが、問題は、その中からどういった製品を選ぶかだ。まず最初は、最も気になる価格に注目してみよう。100BASE-TX PCIイーサネット カードは確かに安くなったが、1000円以下〜1万円程度の価格の幅はある。これを大雑把に分類すると、1000円以下はだいたいノーブランド品で、〜4000円以下は比較的名の知られたネットワーク機器ベンダが主力として販売している製品だ。それより上は、世界的にも広いシェアを持つ大手ベンダの製品か、プラットフォームやソフトウェアのサポート範囲が広いなどの特色を持つ製品である。
この価格差はハードウェアの機能や性能を反映したものとは言い難い。むしろ、ベンダのブランド力(信頼感と言い替えてもよい)やサポートの充実度、付属ユーティリティの完成度などに左右される。メジャーなベンダの製品には、独自の高速化技術をコントローラに組み込んで差別化を図っているものもあるが、これを活かすには、サーバ側のイーサネット カードも含めて同じベンダの製品に統一する必要があるなど、強い制限があることも多い。
とはいっても、製品ごとにハードウェア面での違いはある。それが市販価格と連動していないことが多いだけだ。そうした差違のうち、まずは用途に関係しない一般的な選択のポイントをチェックしていこう。
小型PCで使うならカードのサイズに要注意
最近はブックシェルフ型PC(省スペース デスクトップPC)がクライアントPCとして導入される例が増えている。このタイプのPCは、設置面積が小さくて済むというメリットがある反面、ケースが小さいので拡張性が制限されるというデメリットもある。またPCIスロットの数が1〜2本しかなく、かつ装着できるPCIカードのサイズも小さいものに限定されることが多い。
こうしたブックシェルフ型PCにイーサネット カードを組み込む場合、特に注意しなければならないのはカードの長さだ。PCIの規格書では、ロング カードとショート カードという2種類のサイズが示されており、全長はそれぞれ312mmと約175mmである。PCIイーサネット カードなら、たいていこのショート カードのサイズに収まるが、それでもケースの形状やケース内部の実装方法によっては、ブックシェルフ側PCには収まらないことがある。こうしたPCが対象なら、右下の写真のように全長がカードエッジ コネクタの端までしかないほど小さいカードのほうを選ぶよう心がけたい。
PCIイーサネット カードのサイズ | |
どちらも100BASE-TX PCIカードである。左側のカードは右側のカードと比べると大きく見えるが、PCIカードとしては、決して大きいほうではない。PCの小型化により、イーサネット カードに限らず、今後はこのように小型のPCIカードが増えると思われる。 |
LEDインジケータ
LEDインジケータとは、イーサネット ケーブルを通る信号の状態(ステータス)などをLEDで表示する装置のことである。
LEDインジケータの例(赤枠内) |
PCIカードの場合、インジケータはブラケット部分に配置されているため、表示を確認するにはPCの背面を覗く必要がある。 |
LEDインジケータで表示できるステータスの種類は、製品によって異なる。ほとんどのカードが備えているのはリンクのインジケータ(左写真・赤枠内の「LINK」)で、これはハブとカードとの接続が正しく確立されていることを表す。また、パケットが送信/受信されると点滅するインジケータ(左写真・赤枠内の「ACT」)や、10BASE-Tと100BASE-TXを区別するためのインジケータ(左写真・赤枠内の「100M」)を装備している製品もある。
正常に通信できている場合、これらのLEDの必要性はあまり感じられないが、万一のトラブル時には貴重な情報源になる。もちろんステータスの種類は多いほど便利だ。しかし、最近ではソフトウェアでインジケータの機能を実現している製品が増えてきている。特にWindows 2000など新しいOSでは、標準で通信状態を調べるユーザー インターフェイスを持っている。こうしたソフトウェア インジケータが利用できる環境であれば、ハードウェアによるLEDインジケータの機能には、それほどこだわらなくてもよいだろう。
イーサネットのフロー制御機能は必要
ある2つのデバイス間で通信する際、送信元デバイスがあまりに速くデータを送信すると、受信先デバイスがデータを受け取りきれずに取りこぼしてしまうことがある。こうしたトラブルを防ぐため、受信先デバイスは、データの受信が間に合わなくなりそうだったら、送信側にいったんデータ送信を止めてくれ、と依頼する。これがフロー制御の原理だ。
イーサネットのフロー制御には、全二重通信時にはIEEE 802.3xという規格で決まっている方式が、半二重通信時にはバック プレッシャーという方式がそれぞれ利用される。イーサネット カードもこれらに対応していることが望ましい。
PCIのリビジョンは要確認
PCIを採用した製品には、対応するPCIリビジョンが存在する。現在市販されている製品の対応リビジョンは、2.0と2.1、そして最新の2.2の3種類である。2.1は2.0に対して、主にデータ転送の手順が改良されており、遅いPCIデバイスがバスを占有してほかのデバイスに迷惑をかけないような仕組みが設けられている。また2.2は2.1に比べ、省電力機能が強化されている。
リビジョンが上がるごとに追加された新機能は、PCとイーサネット カードの両方が対応していないと利用できない。逆に新機能を無視できるのなら、両者のリビジョンが異なっていても、イーサネット カードとしての機能は支障なく利用できる場合がほとんどだ。とはいえ一般的には、PCIカードには利用可能なPCのPCIリビジョンが指定されており、それに反すると動作が保証されない。PCIイーサネット カードを購入するときには、パッケージの仕様表を見たり、カード ベンダに問い合わせたりして、必要とされるPCのPCIリビジョンを確認しておきたい。同様にしてPCのPCIリビジョンも、マニュアルにある仕様表やベンダへの問い合わせにより、確認できるはずだ。
PCIについては、もう1つ製品によって異なる仕様がある。PCIカードのコネクタを見ると、以下のように切り欠きの数が異なる製品がある。これは、そのカードが対応する信号の電圧レベル(振幅)を示している。
PCIカードのコネクタ形状と信号の電圧レベルとの関係 | |
左側は5V振幅の信号だけに対応しているPCIカード。コネクタ部分の切り込みは、ブラケットから離れたほうに一箇所だけだ。一方、右側は3.3V/5Vの両方の振幅の信号に対応しているPCIカード。コネクタ部分の切り込みは2箇所ある |
左写真のカードだと、3.3V振幅のPCIバスを備えるPCでは利用できない。しかし現時点では5V振幅に対応したPCがほとんどで、3.3V振幅のPCは滅多に見かけない。5V専用と3.3V/5V両用のどちらのカードを選んでも問題ないだろう。
INDEX | |||
[特集]最適ネットワーク機器選択術 | |||
1. | イントロダクション | ||
2. | イーサネットの基礎の基礎 | ||
2-1. | イーサネットの基本はCSMA/CD方式にある | ||
コラム:IEEE802の各種規格 | |||
2-2. | イーサネットのフレーム形式とコリジョン ドメイン | ||
2-3. | 現在の主流、100BASE-TXを知る | ||
コラム:10BASE/100BASE以外のLAN規格 | |||
3. | |||
3-1. | デスクトップPCには100BASE-TX PCIカードが最適 | ||
コラム:できれば避けたいISAイーサネット カード | |||
3-2. | 一般的な100BASE-TX PCIカードの選択ポイント | ||
3-3. | 100BASE-TX PCIカードの付加機能をチェックする | ||
コラム: イーサネット カードにおけるサーバ用とクライアント用の違い | |||
3-4. | ノートPC用にはPCカードから選ぶ | ||
3-5. | 100BASE-TX CardBusか、10BASE-T 16bit PCカードか? | ||
3-6. | PCカードならケーブルの接続方式がポイント | ||
3-7. | イーサネット ケーブル直結方式は便利か? | ||
コラム:USBによるイーサネット接続 | |||
3-8. | デバイス ドライバは重要な選択ポイント | ||
3-9. | もう1つのソフトウェア サポート − ユーティリティ | ||
コラム:Linuxのためのイーサネット カード選び | |||
4. | |||
4-1. | ハブ/スイッチの種類と機能 | ||
4-2. | ハブ/スイッチ選択の基礎知識 | ||
コラム:そのほかのネットワーク機器 | |||
4-3. | ハブ/スイッチ選択のポイント | ||
「PC Insiderの特集」 |
- Intelと互換プロセッサとの戦いの歴史を振り返る (2017/6/28)
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