最適ネットワーク機器選択術 3.イーサネット カード選びの方程式3-9. もう1つのソフトウェア サポート − ユーティリティ島田広道 |
デバイス ドライバの次は、ユーティリティに注目してみよう。イーサネット カードの製品パッケージに入っているフロッピーディスクやCD-ROMには、デバイス ドライバとともに「ユーティリティ」などと呼ばれるソフトウェアが収録されていることがある。このユーティリティはOS上で動作する単体のプログラムで、デバイス ドライバではカバーしきれないベンダ独自の機能をサポートしたりするのに用いられる。
ユーティリティの目的や機能は、イーサネット カードの種類やベンダに依存しており、ベンダの特色が表れやすい。以下は、インテル製イーサネット カード用のユーティリティの例である。
イーサネット カードのユーティリティの例: Intel PROSet | |||||||||||||||||||||
これは、インテル製の100BASE-TX対応PCIカード「PRO/100+ マネージメント・アダプタ」をWindows 2000マシンにインストールした際に、デバイス ドライバと一緒に組み込まれたユーティリティである。 | |||||||||||||||||||||
|
PROSetには、このイーサネット カードに必要とされるユーティリティの多くが統合されているが、これがすべてではない。たとえば、ブートROMの機能をコントロールするユーティリティは、別のプログラムとして提供されている。こうしたプログラムの形態も、製品によって異なる。
動作テスト機能は必要
多くのイーサネット カードが提供しているユーティリティの機能といえば、上記画面の、つまり動作テストが第一に挙げられる。というのも、ネットワーク関連のトラブルが生じると、その原因がイーサネット カードかハブ、ケーブル、あるいはソフトウェアのうちどこにあるのか、簡単には原因を特定できない場合が多いからである。この動作テスト プログラムさえあれば、少なくともイーサネット カードが故障しているかどうかは容易に確認できる。したがって、最低限この動作テスト プログラムだけでも、ユーティリティとして用意されているのが望ましい(あくまでも筆者の経験による個人的な感想だが、拡張カード製品のなかでは、イーサネット カードは比較的故障しやすいほうだと感じている)。
前述のPROSetでは、Windows OS上から動作テストを直接実行できるし(*1)、またテスト中はネットワーク接続が切れるが、テストが終了すればOSを再起動しなくても復帰できる。一見すると当然のことのように思えるが、実際には、このようにシームレスに動作テストができるイーサネット カードは少ない。よくあるのは、動作テスト プログラムがMS-DOS上でしか実行できない、というパターンだ。このようなDOSプログラムはネットワーク コントローラ チップに直接アクセスするので、Windows OSの仮想DOSモードでは実行できないことが多い。その場合、Windows 9xなら再起動してDOSモードで起動したり、Windows NT/2000ではMS-DOSを別途用意したりしなければならない(*2)。どちらのWindowsでも、この場合はOSの再起動が必要であり、使い勝手がよいとはいえない。ユーティリティが提供されないよりはましだが、とても現在の環境に合わせた設計とはいえないだろう。
*1 Windows OSをインストールする前にも動作テストを行えるよう、DOS版の動作テスト プログラムも別に用意されている。 |
*2 製品によっては、ユーティリティにDOSが含まれており、比較的容易にブート用フロッピーを作成できるものもある。 |
独自機能や付加価値を活かすユーティリティ
動作テスト以外のユーティリティは、ベンダ独自の機能や付加価値として追加された機能をコントロールするものが多い。
最近のイーサネット カードでよく見かけるのは、ブートROMを搭載した製品である。このブートROMはPCの起動時にシステムBIOSから呼び出され、ネットワーク経由でブートするのに用いられる。ディスク レスの端末には必須の機能といえる。これと関係するWake on LAN(詳細は用語解説のページを参照)の実装も最近流行している。このような付加機能を有効/無効にするのは、ユーティリティの役目だ。また前述のPROSetでサポートされていた負荷分散機能やVLANについても、ユーティリティで設定される。
そのほかのユーティリティの機能としては、OSの持つユーザー インターフェイスの拡張が挙げられる。前述のPROSetの例では、とが該当する。Windows
2000ではこれらの情報をまったく表示できないわけではないが、このようにイーサネット カードに関係する情報をまとめて表示するユーザー インターフェイスは標準では用意されていない。またはWindows
2000ならデバイス マネージャで同様に設定できるが、Windows NTは標準でこのような設定メニューを持たない。
製品選びの決定的な要素になるか?
前述したように、イーサネット カードのユーティリティとしては、最低限、動作テスト機能はほしいところだ。ベンダ名も知れない安価な製品には、これすらも同梱されていないことがあるので注意したい。そのほかユーティリティの使い勝手も選択の重要ポイントだ。イーサネット カードによっては、表示が英語のままで日本語化されていなかったり、前述のようにWindowsからは利用できなかったり、といったユーティリティの作り込みに差がある。
ユーティリティを使う機会というのは決して多くはない。最初のセットアップ時かトラブルが生じたときぐらいだろう。そのため、多少使い勝手が悪くても、ユーティリティの機能が十分ならよいという考え方もあるが、ユーティリティの使い勝手はソフトウェア サポートがどれくらい充実しているか、という指針でもあるのだ。イーサネット カードを購入する前には、ベンダのホームページを参照して、製品の仕様や価格だけではなくこのようなソフトウェアの情報も確認しておきたい。
関連リンク | |
PRO/100+ マネージメント・アダプタの製品紹介ページ |
INDEX | |||
[特集]最適ネットワーク機器選択術 | |||
1. | イントロダクション | ||
2. | イーサネットの基礎の基礎 | ||
2-1. | イーサネットの基本はCSMA/CD方式にある | ||
コラム:IEEE802の各種規格 | |||
2-2. | イーサネットのフレーム形式とコリジョン ドメイン | ||
2-3. | 現在の主流、100BASE-TXを知る | ||
コラム:10BASE/100BASE以外のLAN規格 | |||
3. | |||
3-1. | デスクトップPCには100BASE-TX PCIカードが最適 | ||
コラム:できれば避けたいISAイーサネット カード | |||
3-2. | 一般的な100BASE-TX PCIカードの選択ポイント | ||
3-3. | 100BASE-TX PCIカードの付加機能をチェックする | ||
コラム: イーサネット カードにおけるサーバ用とクライアント用の違い | |||
3-4. | ノートPC用にはPCカードから選ぶ | ||
3-5. | 100BASE-TX CardBusか、10BASE-T 16bit PCカードか? | ||
3-6. | PCカードならケーブルの接続方式がポイント | ||
3-7. | イーサネット ケーブル直結方式は便利か? | ||
コラム:USBによるイーサネット接続 | |||
3-8. | デバイス ドライバは重要な選択ポイント | ||
3-9. | もう1つのソフトウェア サポート − ユーティリティ | ||
コラム:Linuxのためのイーサネット カード選び | |||
4. | |||
4-1. | ハブ/スイッチの種類と機能 | ||
4-2. | ハブ/スイッチ選択の基礎知識 | ||
コラム:そのほかのネットワーク機器 | |||
4-3. | ハブ/スイッチ選択のポイント | ||
「PC Insiderの特集」 |
- Intelと互換プロセッサとの戦いの歴史を振り返る (2017/6/28)
Intelのx86が誕生して約40年たつという。x86プロセッサは、互換プロセッサとの戦いでもあった。その歴史を簡単に振り返ってみよう - 第204回 人工知能がFPGAに恋する理由 (2017/5/25)
最近、人工知能(AI)のアクセラレータとしてFPGAを活用する動きがある。なぜCPUやGPUに加えて、FPGAが人工知能に活用されるのだろうか。その理由は? - IoT実用化への号砲は鳴った (2017/4/27)
スタートの号砲が鳴ったようだ。多くのベンダーからIoTを使った実証実験の発表が相次いでいる。あと半年もすれば、実用化へのゴールも見えてくるのだろうか? - スパコンの新しい潮流は人工知能にあり? (2017/3/29)
スパコン関連の発表が続いている。多くが「人工知能」をターゲットにしているようだ。人工知能向けのスパコンとはどのようなものなのか、最近の発表から見ていこう
|
|