最適ネットワーク機器選択術 3.イーサネット カード選びの方程式3-7. イーサネット ケーブル直結方式は便利か?島田広道 |
次に、メディア ケーブルを用いず直接イーサネット ケーブルをPCカードに接続する、直結方式について解説する。「直結」と一口でいっても、その実装方法はいろいろとある。
イーサネット ケーブルを直結する方式
メディア ケーブルのデメリットを解消するために、イーサネット ケーブル(ツイスト ペア ケーブル)を直接PCカードのイーサネット インターフェイスに接続する方式もいくつか考案されている。その中でもよく知られているのが、スリーコムのXJACKという方式だ。これは以下の写真のように、ツイスト ペア ケーブルを装着するコネクタ部分をPCカード内部から引っ張り出して使用するというものだ。
XJACKを採用したPCカード | |
イーサネット ケーブルとの接続コネクタは、一回押し込むと飛び出る(左)。使用後は再度押し込むと完全にPCカードの中に収まってしまう(右)。 |
この方式は、スリーコム製PCカードのうち、Megahertz XJACKブランドの製品だけが採用している。イーサネット カードだけではなくモデム カードやイーサネット/モデムのマルチファンクション カードでも、XJACK方式の製品がラインアップされている。
XJACK方式の最大のメリットは、持ち運ぶ際にイーサネット コネクタが邪魔にならないことだ。イーサネット コネクタが完全にPCカード内部に収納できるため、PCカード単体ではもちろん、ノートPCにPCカードを装着したままでも、無用な出っ張りがないため持ち運びしやすい。XJACK方式のPCカードなら、ずっとノートPCに装着したままま運用することも可能だろう。メディア ケーブル方式では、いちいち移動時にメディア ケーブルを取り外すか、あるいは(メディア ケーブルとのコネクタを摩耗させないよう)PCカード自体を抜く必要があり、何かと面倒である。
しかしデメリットもある。上記写真から分かるように、ツイスト ペア ケーブルのモジュラ コネクタはカードに対して垂直に装着するため、使用中はどうしてもPCカードの上下方向に出っ張りが生じてしまう。したがって、PCカード スロットが上下に複数重なって配置されているノートPCでは、XJACK方式のPCカードにケーブルを接続したまま、ほかのPCカードを差すことはできない。さらに、ケーブルを装着するPCカードとは、XJACK方式のコネクタと衝突してしまい、まったく併用できない可能性もある。
さらに、XJACK方式を採用したPCカードはスリーコムのMegahertz XJACKブランドしかないため、選択肢が狭く、相対的に安価な製品がない、ということもデメリットに挙げられるだろう。たとえば、CardBus/100BASE-TX対応で実売1万円以下という条件では、2000年6月の時点でXJACK方式の製品は存在しない(メディア ケーブル方式なら、複数の選択肢が存在する)。
XJACK以外の直結方式としては、ザーコム製のRealPortおよびRealPort2というブランドで採用されている方式がある。以下の写真のように、このRealPort/RealPort2方式では、PCカードのType IIIの厚みを利用してRJ-45モジュラ ジャックを装備している。
ザーコムのRealPort2 CardBus Ethernet 10/100 |
赤いコネクタ部分は、PCカードのType IIIスロットにそのまま収まる。なおRealPort2シリーズは、同形状の2枚のカードを重ねて縦並びのType II×2スロットに装着するのが本来の使い方である。 |
この方式のメリットは、イーサネット ケーブルを接続していてもいなくても、そのコネクタがPCの中に収まるので邪魔にならないという点にある。デメリットはType III×1スロットか縦並びのType II×2スロットがないノートPCでは使えないこと、またRealPort/RealPort2以外のPCカードを同時に装着できないことだ(ただしザーコムではRealPort/RealPort2のモデム カードも販売しており、組み合わせて使うことができる)。また、選択肢が狭く価格が高めという点も、XJACK同様、デメリットに挙げられる。
直結方式を選ぶポイントは、どれくらいの頻度でイーサネット ケーブルをPCカードから取り外すかという点にある。ノートPCを毎日持ち歩く場合は、直結方式のほうが便利であるし、逆に据え置いてノートPCを使う場合は、選択肢の広いメディア
ケーブル方式のほうが有利だ。
マルチファンクション カードは便利か?
種類は少ないものの、イーサネット インターフェイスとモデムが一枚のPCカードになった、マルチファンクション カードというものが販売されている。薄型のノートPCでPCカード スロットが1つしかないような場合に便利なカードだ。マルチファンクションのPCカードには、イーサネット用とモデム用のメディア ケーブルのコネクタが装備されており、それぞれにメディア ケーブルを差して、イーサネットと電話回線に接続する。
マルチファンクション カードは、PCカードの規格でも認められており、仕様上はすべてのPCカード スロットで利用できる。しかし、マルチファンクション カードの片側の機能が認識されなかったり、正しくカードが初期化されずにハングアップしたり、といった障害例がインターネットなどで報告されており、気になる点ではある。
イーサネット インターフェイスとモデムをそれぞれ別々に購入する場合よりも安価なことが多いが、上述のような障害が発生する可能性があるので、PCカード ベンダのホームページなどを参照して、所有のノートPCで動作確認が行われているかどうかを、確認してから購入したい。
バッテリ駆動するなら消費電力も重要
PCカードをPCカード スロットに差していると、それだけで電力が消費される。そのため、バッテリ駆動でイーサネットを利用することが多い場合は、PCカードの消費電力にも注意を払ったほうがいい。もちろん、ノートPCを省スペース デスクトップの代わりとして使用している場合は、バッテリ駆動時間の問題はないので、まったく気にする必要はない。
関連リンク | |
同社のPCカード製品の紹介ページ | |
同社のRealPort2シリーズの製品紹介ページ |
INDEX | |||
[特集]最適ネットワーク機器選択術 | |||
1. | イントロダクション | ||
2. | イーサネットの基礎の基礎 | ||
2-1. | イーサネットの基本はCSMA/CD方式にある | ||
コラム:IEEE802の各種規格 | |||
2-2. | イーサネットのフレーム形式とコリジョン ドメイン | ||
2-3. | 現在の主流、100BASE-TXを知る | ||
コラム:10BASE/100BASE以外のLAN規格 | |||
3. | |||
3-1. | デスクトップPCには100BASE-TX PCIカードが最適 | ||
コラム:できれば避けたいISAイーサネット カード | |||
3-2. | 一般的な100BASE-TX PCIカードの選択ポイント | ||
3-3. | 100BASE-TX PCIカードの付加機能をチェックする | ||
コラム: イーサネット カードにおけるサーバ用とクライアント用の違い | |||
3-4. | ノートPC用にはPCカードから選ぶ | ||
3-5. | 100BASE-TX CardBusか、10BASE-T 16bit PCカードか? | ||
3-6. | PCカードならケーブルの接続方式がポイント | ||
3-7. | イーサネット ケーブル直結方式は便利か? | ||
コラム:USBによるイーサネット接続 | |||
3-8. | デバイス ドライバは重要な選択ポイント | ||
3-9. | もう1つのソフトウェア サポート − ユーティリティ | ||
コラム:Linuxのためのイーサネット カード選び | |||
4. | |||
4-1. | ハブ/スイッチの種類と機能 | ||
4-2. | ハブ/スイッチ選択の基礎知識 | ||
コラム:そのほかのネットワーク機器 | |||
4-3. | ハブ/スイッチ選択のポイント | ||
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