最適ネットワーク機器選択術

3.イーサネット カード選びの方程式

3-5. 100BASE-TX CardBusか、10BASE-T 16bit PCカードか?

島田広道
2000/07/07

 デスクトップPCでは、100BASE-TXのPCIカードが非常に安価になったことから、100BASE-TXのPCIカードを選ぶことに大きな問題はなかった。ところが、ノートPCの場合は単純に100BASE-TXを選ぶという結論にはならない。というのは、10BASE-Tと100BASE-TXのPCカードの価格差が大きいからだ。たとえば、あるネットワーク機器ベンダの場合、10BASE-TのPCカードが3000円台なのに対し、100BASE-TXのCardBusカードとなると7000円台と2倍以上の価格になる。無視できる価格差ではないだろう。

 市場に流通しているPCカード製品は、基本的に16bit PCカードならCardBusカードとしては動作しないし、逆にCardBusカードは16bit PCカードとしては動作しない。16bit PCカードとCardBusの両方の仕様を実装し、16bit PCカード スロットとCardBusスロットを自動判別して動作する両用のPCカードもわずかながら製品化されている。しかし種類が非常に少ないうえ、価格が高いというデメリットがある。ネットワーク インターフェイスの場合は、このように両方をサポートしたPCカードのメリットがほとんどないので、ここでは考慮しないことにする。つまり、ノートPCが装備しているPCカード スロットの仕様に合わせて、16bit PCカードかCardBusカードのどちらかを選ばなければならないということになる。

 こうした状況を踏まえながら、CardBusカードが使えるノートPCの場合と、16bit PCカードしか利用できないノートPCの場合に分けて、イーサネット カード選びについて考えよう。

CardBus対応のノートPCの場合

 CardBus対応のノートPCでは、16bit PCカードとCardBus対応のPCカードの両方が利用可能だ。16bit PCカードには、10BASE-Tと100BASE-TXの両方が市販されている。しかし、前述のように100BASE-TXの場合、16bit PCカードでは100Mbits/sの性能を活かすことができない。つまり、100BASE-TX対応の16bit PCカードとは、単に100BASE-TXのハブに接続できるというものでしかなく、性能面では10BASE-Tのカードとほとんど変わらない。そのうえ100BASE-TXの16bit PCカードとCardBus PCカードは、価格もそれほど変わらない。以上から、CardBus対応のノートPCで100BASE-TX対応の16bit PCカードを選ぶ理由はまったくない。

イーサネット PCカード規格 標準価格
10BASE-T 16bit PCカード 3000円〜5000円
100BASE-TX 16bit PCカード 5000円〜6000円
100BASE-TX CardBus 5000円〜8000円
PCカードのイーサネット カードの価格差

 つまり、CardBus対応のノートPCでは、10BASE-Tの16bit PCカード、もしくは100BASE-TXのCardBus PCカードのどちらかを選ぶということになる。前述のように、10BASE-Tの16bit PCカードと100BASE-TXのCardBus PCカードの価格差は2倍以上あるため、100BASE-TXのCardBus PCカードを手放しでは勧めにくい面がある。しかし、デスクトップPCの場合と同様、100BASE-TXの性能が必要になった場合にカードを差し替えることを考えると、100BASE-TXのCardBus PCカードにしておいたほうが結局は安く済むことになる。

 もちろん、PCカード スロットの場合、カードの抜き差しは比較的容易なので、デスクトップPCに比べてカードの交換にかかる手間は少ない。それでも、デバイス ドライバの変更や、それに伴うネットワークの設定などを考えると、デスクトップPCと同様、100BASE-TXにしておいたほうがTCOの削減につながりそうだ。

 ただし、ノートPCの場合は、どの程度ネットワークに依存しているかも考慮する必要がある。たとえば、普段は営業活動などにノートPCを持ち歩き、会社に帰ってから報告書などをサーバに転送する、といった使い方の場合は、100BASE-TXの性能は必要ない。このような場合は、安価な10BASE-Tの16bit PCカードにしておいても、実用上は困ることはないだろう。

 CardBus対応のノートPCの場合の結論は、デスクトップPCと同様、据え置きでノートPCを使っているなら100BASE-TXのCardBusカード、社内LANにあまり依存していないモバイル用のノートPCならば10BASE-Tの16bit PCカードでも可、といったところだろう。

16bit PCカード スロットしかないノートPCの場合

 CardBusに対応していない場合、選択肢は10BASE-Tか100BASE-TXの16bit PCカードの2種類になる。前述のように、16bit PCカードでは、100BASE-TXの性能を活かすことはできない。そのうえ、価格は10BASE-Tのものに比べて2倍近い。100BASE-TX専用ハブが存在し、10BASE-T専用品が使えないといった環境以外では、100BASE-TXの16bit PCカードにはあまり意味がない。

 つまり、16bit PCカード スロットしかないノートPCでは、10BASE-Tの16bit PCカード以外の選択肢はないということだ。ただし、気をつけなければならないのは、すでに10BASE-Tの製品は、各ネットワーク ベンダともに、ほとんど新製品を開発しておらず、数年前のものを継続販売しているに過ぎない点だ。そのため、新しいOSに対応するデバイス ドライバの提供が遅れたり、最悪の場合、ドライバが開発されずサポート外になったりすることもまれにある。もっとも、16bit PCカードしかないノートPCでは、本体自体が新しいOSのサポート外になりかねないが。

 
     
 INDEX
  [特集]最適ネットワーク機器選択術
  1. イントロダクション
  2. イーサネットの基礎の基礎
    2-1. イーサネットの基本はCSMA/CD方式にある
      コラム:IEEE802の各種規格
    2-2. イーサネットのフレーム形式とコリジョン ドメイン
    2-3. 現在の主流、100BASE-TXを知る
      コラム:10BASE/100BASE以外のLAN規格
  3.
    3-1. デスクトップPCには100BASE-TX PCIカードが最適
      コラム:できれば避けたいISAイーサネット カード
    3-2. 一般的な100BASE-TX PCIカードの選択ポイント
    3-3. 100BASE-TX PCIカードの付加機能をチェックする
      コラム: イーサネット カードにおけるサーバ用とクライアント用の違い
    3-4. ノートPC用にはPCカードから選ぶ
  3-5. 100BASE-TX CardBusか、10BASE-T 16bit PCカードか?
    3-6. PCカードならケーブルの接続方式がポイント
    3-7. イーサネット ケーブル直結方式は便利か?
      コラム:USBによるイーサネット接続
    3-8. デバイス ドライバは重要な選択ポイント
    3-9. もう1つのソフトウェア サポート − ユーティリティ
      コラム:Linuxのためのイーサネット カード選び
  4.
    4-1. ハブ/スイッチの種類と機能
    4-2. ハブ/スイッチ選択の基礎知識
      コラム:そのほかのネットワーク機器
    4-3. ハブ/スイッチ選択のポイント

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