最適ネットワーク機器選択術 3.イーサネット カード選びの方程式3-5. 100BASE-TX CardBusか、10BASE-T 16bit PCカードか?島田広道 |
デスクトップPCでは、100BASE-TXのPCIカードが非常に安価になったことから、100BASE-TXのPCIカードを選ぶことに大きな問題はなかった。ところが、ノートPCの場合は単純に100BASE-TXを選ぶという結論にはならない。というのは、10BASE-Tと100BASE-TXのPCカードの価格差が大きいからだ。たとえば、あるネットワーク機器ベンダの場合、10BASE-TのPCカードが3000円台なのに対し、100BASE-TXのCardBusカードとなると7000円台と2倍以上の価格になる。無視できる価格差ではないだろう。
市場に流通しているPCカード製品は、基本的に16bit PCカードならCardBusカードとしては動作しないし、逆にCardBusカードは16bit PCカードとしては動作しない。16bit PCカードとCardBusの両方の仕様を実装し、16bit PCカード スロットとCardBusスロットを自動判別して動作する両用のPCカードもわずかながら製品化されている。しかし種類が非常に少ないうえ、価格が高いというデメリットがある。ネットワーク インターフェイスの場合は、このように両方をサポートしたPCカードのメリットがほとんどないので、ここでは考慮しないことにする。つまり、ノートPCが装備しているPCカード スロットの仕様に合わせて、16bit PCカードかCardBusカードのどちらかを選ばなければならないということになる。
こうした状況を踏まえながら、CardBusカードが使えるノートPCの場合と、16bit PCカードしか利用できないノートPCの場合に分けて、イーサネット カード選びについて考えよう。
CardBus対応のノートPCの場合
CardBus対応のノートPCでは、16bit PCカードとCardBus対応のPCカードの両方が利用可能だ。16bit PCカードには、10BASE-Tと100BASE-TXの両方が市販されている。しかし、前述のように100BASE-TXの場合、16bit PCカードでは100Mbits/sの性能を活かすことができない。つまり、100BASE-TX対応の16bit PCカードとは、単に100BASE-TXのハブに接続できるというものでしかなく、性能面では10BASE-Tのカードとほとんど変わらない。そのうえ100BASE-TXの16bit PCカードとCardBus PCカードは、価格もそれほど変わらない。以上から、CardBus対応のノートPCで100BASE-TX対応の16bit PCカードを選ぶ理由はまったくない。
イーサネット | PCカード規格 | 標準価格 |
10BASE-T | 16bit PCカード | 3000円〜5000円 |
100BASE-TX | 16bit PCカード | 5000円〜6000円 |
100BASE-TX | CardBus | 5000円〜8000円 |
PCカードのイーサネット カードの価格差 |
つまり、CardBus対応のノートPCでは、10BASE-Tの16bit PCカード、もしくは100BASE-TXのCardBus PCカードのどちらかを選ぶということになる。前述のように、10BASE-Tの16bit PCカードと100BASE-TXのCardBus PCカードの価格差は2倍以上あるため、100BASE-TXのCardBus PCカードを手放しでは勧めにくい面がある。しかし、デスクトップPCの場合と同様、100BASE-TXの性能が必要になった場合にカードを差し替えることを考えると、100BASE-TXのCardBus PCカードにしておいたほうが結局は安く済むことになる。
もちろん、PCカード スロットの場合、カードの抜き差しは比較的容易なので、デスクトップPCに比べてカードの交換にかかる手間は少ない。それでも、デバイス ドライバの変更や、それに伴うネットワークの設定などを考えると、デスクトップPCと同様、100BASE-TXにしておいたほうがTCOの削減につながりそうだ。
ただし、ノートPCの場合は、どの程度ネットワークに依存しているかも考慮する必要がある。たとえば、普段は営業活動などにノートPCを持ち歩き、会社に帰ってから報告書などをサーバに転送する、といった使い方の場合は、100BASE-TXの性能は必要ない。このような場合は、安価な10BASE-Tの16bit PCカードにしておいても、実用上は困ることはないだろう。
CardBus対応のノートPCの場合の結論は、デスクトップPCと同様、据え置きでノートPCを使っているなら100BASE-TXのCardBusカード、社内LANにあまり依存していないモバイル用のノートPCならば10BASE-Tの16bit PCカードでも可、といったところだろう。
16bit PCカード スロットしかないノートPCの場合
CardBusに対応していない場合、選択肢は10BASE-Tか100BASE-TXの16bit PCカードの2種類になる。前述のように、16bit PCカードでは、100BASE-TXの性能を活かすことはできない。そのうえ、価格は10BASE-Tのものに比べて2倍近い。100BASE-TX専用ハブが存在し、10BASE-T専用品が使えないといった環境以外では、100BASE-TXの16bit PCカードにはあまり意味がない。
つまり、16bit PCカード スロットしかないノートPCでは、10BASE-Tの16bit PCカード以外の選択肢はないということだ。ただし、気をつけなければならないのは、すでに10BASE-Tの製品は、各ネットワーク ベンダともに、ほとんど新製品を開発しておらず、数年前のものを継続販売しているに過ぎない点だ。そのため、新しいOSに対応するデバイス ドライバの提供が遅れたり、最悪の場合、ドライバが開発されずサポート外になったりすることもまれにある。もっとも、16bit PCカードしかないノートPCでは、本体自体が新しいOSのサポート外になりかねないが。
INDEX | |||
[特集]最適ネットワーク機器選択術 | |||
1. | イントロダクション | ||
2. | イーサネットの基礎の基礎 | ||
2-1. | イーサネットの基本はCSMA/CD方式にある | ||
コラム:IEEE802の各種規格 | |||
2-2. | イーサネットのフレーム形式とコリジョン ドメイン | ||
2-3. | 現在の主流、100BASE-TXを知る | ||
コラム:10BASE/100BASE以外のLAN規格 | |||
3. | |||
3-1. | デスクトップPCには100BASE-TX PCIカードが最適 | ||
コラム:できれば避けたいISAイーサネット カード | |||
3-2. | 一般的な100BASE-TX PCIカードの選択ポイント | ||
3-3. | 100BASE-TX PCIカードの付加機能をチェックする | ||
コラム: イーサネット カードにおけるサーバ用とクライアント用の違い | |||
3-4. | ノートPC用にはPCカードから選ぶ | ||
3-5. | 100BASE-TX CardBusか、10BASE-T 16bit PCカードか? | ||
3-6. | PCカードならケーブルの接続方式がポイント | ||
3-7. | イーサネット ケーブル直結方式は便利か? | ||
コラム:USBによるイーサネット接続 | |||
3-8. | デバイス ドライバは重要な選択ポイント | ||
3-9. | もう1つのソフトウェア サポート − ユーティリティ | ||
コラム:Linuxのためのイーサネット カード選び | |||
4. | |||
4-1. | ハブ/スイッチの種類と機能 | ||
4-2. | ハブ/スイッチ選択の基礎知識 | ||
コラム:そのほかのネットワーク機器 | |||
4-3. | ハブ/スイッチ選択のポイント | ||
「PC Insiderの特集」 |
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