最適ネットワーク機器選択術 3.イーサネット カード選びの方程式3-3. 100BASE-TX PCIカードの付加機能をチェックする島田広道 |
どのような製品ジャンルにも、付加価値で差別化を図る製品は存在する。ここでは、100BASE-TX PCIカードによくある付加機能が果たして選択のポイントとしてどれくらい重要なのか、チェックしてみよう。
Wake on LANは便利か?
少々、価格が高めのイーサネット カードのパッケージには、「Wake on LAN対応」といった表記があるものが増えている。このWake on LAN(WOL)というのは、ネットワーク経由でPCの電源を投入可能にする機能だ。これにより、夜間にサーバのリモート管理ソフトウェアを使って、ネットワーク経由でクライアントPCの電源を投入し、クライアントPCのウイルス対策ソフトウェアの更新や、アプリケーションのインストールやメンテナンスを行うなどが可能になる。クライアントPCの台数が多い企業では、メンテナンス コストを下げるために導入する例が増えている。
Wake on LAN用ケーブル/コネクタ |
これは、Wake on LAN用ケーブルでイーサネット カードとマザーボードを接続したところ。これにより、PCの電源が切れていても、イーサネット コントローラがネットワークからの起動命令に応えられるよう、コントローラに電力が供給される。 |
つまり、ネットワークを使ったリモート管理を導入していなければ、この機能にはほどんと使い道がない。逆に、このようにリモート管理を行っている企業では、必須の機能になる。もし、こうしたクライアントPCの集中管理を行う計画があるのなら、Wake on LAN機能対応にしておいたほうがよい。そういった計画がないようなら、まったく気にする必要がない機能なので、Wake on LAN機能を装備しない若干安価なカードを購入しても問題はない。ただしこの機能を利用するには、イーサネット カードだけではなく、PCもWake on LANに対応している必要があることは覚えておきたい。
ブートROMは使えるのか?
イーサネット カードによっては、なにか半導体チップを装着できそうな空きソケットが実装されていることがある(以下の写真左)
ブートROM用空きソケット(左)と、実装済みのブートROM(右) | |
写真左のイーサネット カードは、ベンダよりブートROMが提供されているなら、それを装着することでネットワーク ブートが利用できるようになる。一方、写真右のイーサネット カードは、標準でネットワーク ブート機能をサポートしている。 |
これは、ディスクレス クライアントがネットワーク経由でOSを起動するためのブートROMを装着するための空きソケットである。やや高価な製品では、上の写真左のように、最初からブートROMが装備されていることもある。これにより、ディスク ドライブがないPCでも、ネットワーク経由でサーバ マシンからOSを読み込んでブートすることができる。この機能は、古くはノベルのNetWareサーバによる環境で、ディスクレスのPCをクライアントとして運用するために利用された。またWake on LANと組み合わせれば、リモート管理にも便利に使えるはずだ。
しかし、ネットワーク ブート機能の実現には、課題が少なくない。まず、ブートROM用ソケットのあるイーサネット カードの場合、ブートROMはカード依存なのでカード ベンダが提供すべきものだ。しかし日本国内のカード ベンダのほとんどはブートROMを提供していないし、またブートROMソケットの動作も保証しないことが多い。このようなカードではネットワーク ブート機能は利用できないことになる。
イーサネット カードがブートROMを標準装備していても、サーバOSがクライアントのネットワーク ブート機能をサポートしなければ意味がない。またネットワーク ブートにも複数の規格が存在するので、クライアントのイーサネット カードとサーバOSとの間で、同一規格に対応している必要がある。しかもサーバOSによって、対応するネットワーク ブートの規格は異なる。つまりネットワーク ブート機能を実現するには、サーバ/クライアント両方のOSとクライアント側のイーサネット カードそれぞれによる緊密な連携が必要になる。
もちろんネットワーク ブート機能を使わないならば、ブートROMの有無に注意を払う必要がない。むしろ無用なトラブルを防ぐために、ブートROMのない製品を選んだほうがいいかもしれない。ネットワーク ブート機能をどうしても利用したい場合は、カードのベンダだけではなくサーバOS/クライアントOSのベンダにも問い合わせて、本当に実現できるのか事前によく確認しなければならないだろう。
INDEX | |||
[特集]最適ネットワーク機器選択術 | |||
1. | イントロダクション | ||
2. | イーサネットの基礎の基礎 | ||
2-1. | イーサネットの基本はCSMA/CD方式にある | ||
コラム:IEEE802の各種規格 | |||
2-2. | イーサネットのフレーム形式とコリジョン ドメイン | ||
2-3. | 現在の主流、100BASE-TXを知る | ||
コラム:10BASE/100BASE以外のLAN規格 | |||
3. | |||
3-1. | デスクトップPCには100BASE-TX PCIカードが最適 | ||
コラム:できれば避けたいISAイーサネット カード | |||
3-2. | 一般的な100BASE-TX PCIカードの選択ポイント | ||
3-3. | 100BASE-TX PCIカードの付加機能をチェックする | ||
コラム: イーサネット カードにおけるサーバ用とクライアント用の違い | |||
3-4. | ノートPC用にはPCカードから選ぶ | ||
3-5. | 100BASE-TX CardBusか、10BASE-T 16bit PCカードか? | ||
3-6. | PCカードならケーブルの接続方式がポイント | ||
3-7. | イーサネット ケーブル直結方式は便利か? | ||
コラム:USBによるイーサネット接続 | |||
3-8. | デバイス ドライバは重要な選択ポイント | ||
3-9. | もう1つのソフトウェア サポート − ユーティリティ | ||
コラム:Linuxのためのイーサネット カード選び | |||
4. | |||
4-1. | ハブ/スイッチの種類と機能 | ||
4-2. | ハブ/スイッチ選択の基礎知識 | ||
コラム:そのほかのネットワーク機器 | |||
4-3. | ハブ/スイッチ選択のポイント | ||
「PC Insiderの特集」 |
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