最適ネットワーク機器選択術 2.イーサネットの基礎の基礎2-3. 現在の主流、100BASE-TXを知る河部 拓 |
伝送速度100Mbits/sの100BASE-TX
これまで10BASE-Tを例にイーサネットについて解説してきた。しかし、実際のところ最近のPCに標準搭載されるイーサネット カードは、ほとんどが100BASE-TXになっている。100BASE-TXは、伝送速度が10BASE-Tの10倍の100Mbits/sに引き上げられた、「Fast Ethernet」ともいわれるもので、1995年にIEEE802.3uとして標準化されている。
100BASE-TXは、現在、最も数多くの製品が出荷されているイーサネット製品である。CSMA/CDを採用して点など、10BASE-Tと基本的な仕組みは変わっていない。というよりも、むしろ極力違いがないように標準化が進められたと言ったほうがよい。10BASE-Tと異なる点はといえば、10BASE-Tからのアップグレードを簡単にするためのオート ネゴシエーション機能が加えられたことと、伝送速度が10倍になったことで、コリジョン ドメインが10BASE-Tの1/10である250mと短くなったこと、ケーブルにカテゴリ5のUTPを使用することが必須となったことなどだ。
このように10BASE-Tとの差が少ないように標準化された100BASE-TXだが、10BASE-Tと100BASE-TXは、データ転送速度が異なるため、直接接続できるわけではない点に注意していただきたい。10BASE-Tと100BASE-TXを接続するためには、後述のスイッチなどを利用する必要がある。
100BASEの規格には、伝送メディアの違いなどにより、100BASE-FXや100BASE-T2、100BASE-T4といった規格も存在するが、100BASE-TXほど普及していないので、ここでは説明を割愛する。
全二重通信
これまでの説明では、受信中はデータが送信されてくるのを待つ、あるいは送信中はほかの機器からの信号は受信しないということになっていたが、接続先がスイッチ(後述)などの場合、実際には送受信を同時に行うといったことが可能だ。これを全二重通信といい、100BASE-TXの場合、帯域は送信、受信それぞれについて100Mbits/sずつ、合計200Mbits/sということになる。一方、従来の送信・受信を交互に行う方法を半二重通信という。10BASE-Tでも原理的には全二重通信が可能であるが、普及したのは100BASE-TX対応製品の登場以後である。
100BASEで追加されたオート ネゴシエーション機能
オート ネゴシエーション機能とは、接続される相手によって、自分の通信速度を切り替える機能である。つまり、相手が10BASE-Tであれば10Mbits/sに、100BASE-TXであれば100Mbits/sに、といった具合いに通信速度を切り替える機能だ。この機能は、インターフェイス カードまたはハブでサポートされ、LAN内での10BASE-T/100BASE-TXの混在環境を可能にする。たとえば、10BASE-Tのハブに、100BASE-TXのインターフェイス カードを接続した場合、カードはこれを自動的に認識し、10BASE-Tで接続するようになる。逆に、ハブがオート ネゴシエーション機能付きのものであれば、クライアントのインターフェイス カードに合わせて10BASE-Tと100BASE-TXが切り替わるので、部分的に10BASE-Tから100BASE-TXへ移行していくことが可能だ。この機能を使うことで、いっせいに機器を入れ替える必要がなくなるというメリットがある。ただし、過去の製品の中には、自動検出に失敗するものもあった。そのため、手動でも10BASE-Tと100BASE-TXの切り替えが行えるハブも登場した。
以上、10BASE-Tをベースにイーサネットの基本的な仕組みについて解説してきた。10BASE/100BASE以外のイーサネットの規格については、コラム「10BASE/100BASE以外のLAN規格」を参照していただきたい。次項からは、具体的にネットワーク機器を選ぶためのポイントについて説明していく。
INDEX | |||
[特集]最適ネットワーク機器選択術 | |||
1. | イントロダクション | ||
2. | イーサネットの基礎の基礎 | ||
2-1. | イーサネットの基本はCSMA/CD方式にある | ||
コラム:IEEE802の各種規格 | |||
2-2. | イーサネットのフレーム形式とコリジョン ドメイン | ||
2-3. | 現在の主流、100BASE-TXを知る | ||
コラム:10BASE/100BASE以外のLAN規格 | |||
3. | |||
3-1. | デスクトップPCには100BASE-TX PCIカードが最適 | ||
コラム:できれば避けたいISAイーサネット カード | |||
3-2. | 一般的な100BASE-TX PCIカードの選択ポイント | ||
3-3. | 100BASE-TX PCIカードの付加機能をチェックする | ||
コラム: イーサネット カードにおけるサーバ用とクライアント用の違い | |||
3-4. | ノートPC用にはPCカードから選ぶ | ||
3-5. | 100BASE-TX CardBusか、10BASE-T 16bit PCカードか? | ||
3-6. | PCカードならケーブルの接続方式がポイント | ||
3-7. | イーサネット ケーブル直結方式は便利か? | ||
コラム:USBによるイーサネット接続 | |||
3-8. | デバイス ドライバは重要な選択ポイント | ||
3-9. | もう1つのソフトウェア サポート − ユーティリティ | ||
コラム:Linuxのためのイーサネット カード選び | |||
4. | |||
4-1. | ハブ/スイッチの種類と機能 | ||
4-2. | ハブ/スイッチ選択の基礎知識 | ||
コラム:そのほかのネットワーク機器 | |||
4-3. | ハブ/スイッチ選択のポイント | ||
「PC Insiderの特集」 |
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