特集
» 2002年03月07日 00時00分 公開

Windows XPで始める無線LANXPの標準サポートで無線LANはこう変わる(2/7 ページ)

[井上孝司,著]

 イーサネットと同様、無線LANについてもIEEEが標準化活動を行っており、「IEEE 802.11」というワーキング・グループが設置されている。最初にここで標準化された無線LAN規格が、1997年にリリースされた「IEEE 802.11」だ。このIEEE 802.11では、通信に用いる物理媒体として、以下のものを定義していた。

  • 赤外線
  • 2.4GHz帯無線(周波数ホッピングによるスペクトラム拡散通信方式 : FH-SS)
  • 2.4GHz帯無線(直接拡散によるスペクトラム拡散通信方式 : DS-SS)

【コラム】周波数ホッピング(FH-SS)と直接拡散(DS-SS)

 FH-SS(周波数ホッピング方式)とDS-SS(直接拡散方式)はいずれも、広い周波数帯域を利用して耐妨害性と秘匿性の高い通信を行う「スペクトラム拡散通信」に分類される技術である。

 このうち後者のDS-SS(直接拡散方式)とは、変調された通信内容に疑似雑音(PN:Pseudo Noise)符号を付加することで、信号を広い周波数帯域に「薄めて」送出する方式である。受信側では、送出側と同じ疑似雑音符号を使用することで、元の通信内容を取り出す仕組みになっている。

 一方、前者のFH-SS(周波数ホッピング方式)とは、乱数ジェネレータを使って周波数をランダムに跳飛させる方式で、送信側と受信側の双方が同じ乱数パターンを使用すれば、周波数の跳飛に追随して通信ができる。IEEE 802.11以外では、BlueToothがこのFH-SSを使用している。


 複数の物理媒体があって、どれを使ってもよいというのは混乱のもとである。実際、最初のIEEE 802.11規格では、通信速度が2Mbits/sと遅く、機器の価格の高さも相まって、広く普及するには至らなかった。

IEEE 802.11b無線LANアダプタ
写真は、メルコが販売するPCMCIAカードタイプの無線LANアダプタ「WLI-PCM-L11G」で、2002年2月の時点では1万4800円ほどの価格で販売されている。この製品は128bit WEP暗号化(後述)に対応していることもあってか比較的高価だが、他社製品では、現在では1万円を切る製品も珍しくない。
メルコの製品情報ページへ

 こうした状況にブレーク・スルーが生じたのは、直接拡散(DS-SS)方式の2.4GHz無線を使用する「IEEE 802.11b」が1999年に発表され、理論上の最大通信速度が11Mbits/sに引き上げられたのがきっかけといえるだろう。このIEEE 802.11bに対応したチップセットが米ルーセント・テクノロジーズ社と米インターシル社から低価格で提供されるようになったことから、機器の低価格化も進行し、性能向上と相まって、一挙に利用者を増やすことになった。

 さらに、5GHz帯を使用して、最大54Mbits/sの通信速度を発揮する「IEEE802.11a」も同じ1999年に標準化されたが、こちらの対応製品はなかなか出そろわなかった。これは、開発の難易度が高いという事情と、日本ではIEEE 802.11a規格が採用している周波数帯の一部が先に気象レーダーやETCシステム(Electronic Toll Collection System:自動支払いシステム)に使われていたことによるものだが、2001年10月にソニーが、2002年2月にアイ・オー・データ機器が対応製品を発表するなど、徐々に対応製品も増えつつある(ただし、前述した周波数帯域の空き問題の関係から、日本ではIEEE 802.11a製品は屋内でしか利用できないことになっている)。

IEEE 802.11a対応無線LAN製品(Intel PRO/Wireless 5000)
アクセスポイント(左)とCardBus対応のクライアント・カード(右)。2002年3月の原稿執筆時点で、このセットの価格は約10万円。
インテルの製品情報ページへ

 このIEEE802.11aは、周波数帯と変調方式の違いから、すでに普及しているIEEE 802.11bとは互換性がない。その一方で、2.4GHz帯を使用しつつ速度をIEEE802.11a並みに引き上げることを目的とした「IEEE802.11g」についても、IEEEで標準化作業が進められている。

 IEEE802.11aとIEEE802.11gのどちらが今後の高速無線LANの主流になるかは不明だが、すでにIEEE 802.11bが広く普及していることから、何らかの形で相互運用性を確保する策が取られると考えるのが自然だろう。例えば周波数帯が異なるIEEE 802.11aでも、デュアルバンドのトランシーバを装備することで、IEEE802.11a/b両対応にすることが可能だ。

【コラム】免許不要のISMバンド

 アマチュア無線などに見られるように、通常、無線通信を行うには免許の取得が必要である。しかし、無線LANを使用するために、いちいち利用者が免許を取得するのは現実的ではない。

 IEEE 802.11bが使用している2.4GHz帯は、いわゆる「ISM(Industrial, Scientific, and Medical)バンド」と呼ばれる周波数帯の1つに分類され、空中線出力を10mW以下に限定すれば、無線免許を取得せずに利用できる。

 そのため、無線LAN以外にもさまざまな製品が同じ2.4GHz帯を使用しており、例えば、BlueToothや各種医療機器などに、同じ2.4GHz帯の利用例がある。また、電子レンジから漏えいする電磁波の周波数帯も同じ領域に属しているため、こうした機器とIEEE 802.11b無線LANを近接して使用すると、干渉によって通信に悪影響が生じることがある。これについては、追って実際に検証してみたいと考えている。


製品選びにおける注意点

 現在、店頭に並んでいる無線LAN製品の大半はIEEE 802.11b対応製品である。IEEE 802.11bの動作モードには、アンテナとなる「アクセス・ポイント」を介して通信する「インフラストラクチャ・モード」と、個々のPC同士が直接交信する「アドホック・モード」がある。しかし無線LANがインターネット接続のインフラとして使われることが多い現状から、イーサネットとのブリッジとなるアクセス・ポイントと無線LANアダプタをセットで販売している製品が多く、インフラストラクチャ・モードで使用するユーザーが多いようだ。

インフラストラクチャ・モード
ネットワークに接続した無線LAN用のアクセス・ポイントを経由して、各コンピュータがLANやインターネットに接続する方式がこのインフラストラクチャ・モードである。一般に現状で無線LANといえば、この形態で使用されるケースが圧倒的に多い。

アドホック・モード
無線LANクライアント同士が直接通信するのがこのアドホック・モードである。上のインフラストラクチャ・モードと比較すると、アクセス・ポイントが不要というメリットがある。

 また、無線LANは移動が簡単なノートPCでの利用が主になることから、無線LANアダプタの主流はPCカードであるが、そのほかにコンパクト・フラッシュ TypeIIタイプの製品もいくつかある。2002年初頭の時点では、アクセス・ポイントとPCカード・インターフェイスの無線LANアダプタ1枚をセットにして、2万〜4万円程度という製品がボリューム・ゾーンのようだ。

 いうまでもないことだが、これから購入する場合はWindows XP対応のデバイス・ドライバが提供されている製品を選びたい。2002年2月の時点では、Windows XPの発売からそれほど間がないこともあり(Windows XP日本語版の発売は2001年11月)、製品によって対応状況にばらつきがある。大きく分けると、以下のパターンになるようだ。

  1. Windows XPにまったく対応していない製品
  2. Windows 2000用のデバイス・ドライバとユーティリティを使用すれば、Windows XPでも利用可能となっている製品
  3. WindowsXP用のデバイス・ドライバが提供されるが、それを組み込んでも有線LANのアダプタとして認識されてしまい、別途、ベンダの専用ユーティリティによる設定が必要な製品(つまり、実質的には2.のケースと同じことになる)
  4. Windows XP用のデバイス・ドライバが提供され、それを組み込むことで、無線LANアダプタとして正しく認識され、Windows XPから必要な設定がすべて行える製品

 以下、本稿でご紹介するWindows XPの無線LAN設定機能を利用するには、上記のうち4番目に該当する製品を使用する必要がある。そのため、これから無線LANアダプタを購入する場合は、対応状況を入念に確認しておく必要がある。

 また、製品出荷後にデバイス・ドライバが更新されている可能性も考えられるので、導入を開始する前に、ベンダのWebサイトをチェックしてみるのもよいかもしれない。

 今回、筆者が記事作成のために使用したアダプタはメルコの「WLI-PCM-L11G」だが、このほかに富士通の「FWL11CARD」でも、Windows XP対応ドライバのリリースと、Windows XPによる設定が可能なことが確認されている。また、IBMのノートPCであるThinkPad s30が内蔵している無線LANアダプタも、Windows XP標準装備のデバイス・ドライバによる動作とWindows XPからの設定が可能だ。

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