そのほか、無線LAN製品の購入時に気になるポイントについて考えてみよう。
■異なるメーカー間での互換性は?
たとえメーカーが違っていても、同じIEEE 802.11b対応製品同士なら、実際には問題なく通信できることが多い。筆者の手元には、異なるメーカーのアクセス・ポイントと無線LANアダプタがそれぞれ3製品ずつあるが、暗号化を行わない状態では、いずれも相互に問題なく通信できている。
「Wi-Fi」(ワイ・ファイと読む)の認定を受けた製品なら、異なるメーカーの製品同士でも相互運用性が確認されている。Wi-Fi対応製品は意外と少ないが、確実を期するなら、こうした製品を選択するのも1つの方法だ。しかし、安心感を求めるのであれば、アクセス・ポイントと無線LANアダプタを同じメーカーの製品でそろえる方が間違いがないだろう。同じメーカーの製品でそろえておけば、もし通信不能というトラブルに見舞われた場合でも、サポートが受けやすくなるからだ。無線LANの機能を内蔵したノートPCの場合も、同じメーカーから発売されているアクセス・ポイントを組み合わせるのが無難だろう。
■デスクトップPCを接続するには?
基本的に移動することを前提としないデスクトップPCでは、無線LANの必要性は小さいかもしれない。こうした事情のためか、たとえ使ってみたいと思っても、デスクトップPC用の無線LANアダプタ製品は極めて少ない。メーカーによっては、USB接続のアダプタを販売しているところもあるが、選択肢はあまり多くない。広く一般にお勧めできる方法かどうかは分からないが、PCIスロットにPCカード接続用のアダプタを取り付けて、そこにPCカード・タイプの無線LANアダプタを接続するという方法もある。この方法には、ノートPCと機材(PCカード)を共通化できるというメリットがある。
■暗号化機能について
IEEE 802.11bでは「WEP(Wired Equivalent Privacy)」という暗号化機能が用意されているが、暗号化のキーの長さの違いから、64bit WEPと128bit WEPの2種類がある。この2種類は同時に運用できないので、128bit WEP暗号化を行いたいと考えている場合は、すべての製品を128bit WEP対応製品でそろえる必要がある。ただし、128bit WEP対応の製品は比較的高価で、PCカード型の無線LANアダプタを例に取ると、実売で1万円を切る製品は少ない。この暗号化の話題については、別途回を改めて詳しく取り上げることにしたい。
■一体型製品の損得
最近は、無線LANのアクセス・ポイントとブロードバンド・ルータの機能を一体化した製品が増えており、一部ではさらに、ADSLモデムまでもを内蔵した製品が登場している。複数の機能をまとめて手に入れられて手軽であることは確かだが、必ずしもいいことばかりとはいえない。
インターネットへのアクセス回線は今後さらに高速化される可能性があるので、個人的には、必要な部分を容易に交換できるように、各機能を独立した機材にしておく方が好ましいと考えている。しかし無線LAN機能については、アクセス・ポイントと無線LANアダプタの一斉交換を行わない限り、別の規格に全面移行するということはできない。また、無線LANを経由して、もっぱらインターネットにアクセスしているという場合で、より高速な無線LANを必要とするほどの高速インターネット接続を導入するなら、ルータのスループットも問題になるので、無線LANだけ高速化しても効果がない可能性がある。この場合は結果的に、ルータと無線LANを一斉にリプレースする可能性が高いのではないだろうか。それなら、両者が一体の製品になっていても支障はない。このような用途で使用するブロードバンド・ルータや無線LANの新規導入を考えるなら、両者を一体化した製品が手軽だろう。
有線LANの場合、「つながるかどうか」ということを気にする必要はほとんどない。ハブやLANアダプタが正常に機能している限りは、ケーブルを接続するだけですぐに使える。
しかし、無線通信を使用する無線LANでは、実際に通信できるようにするまでに、いろいろな設定が必要になる。
Windows XP対応のデバイス・ドライバが提供されていて、それを利用するとWindows XPからすべての設定が行える製品なら、SSID(無線通信を行うノードを識別するためのID、詳細は後述)の選択を行うだけで、無線LANの利用が可能になる。
それに対し、OSが無線LANの設定機能を標準装備していないWindows 9x/MeやWindows 2000では、デバイス・ドライバを組み込むだけで機器は正常に機能しているように見えるのだが、実際には、専用ユーティリティを用いて必要な設定を行わなければ、まったく接続ができない。Windows XPに完全対応したデバイス・ドライバが提供されていない無線LANアダプタを使用する場合は、Windows XPでも同じことになる。
その場合、無線LAN機器のベンダが提供している設定ユーティリティをインストールしたうえで、接続先ネットワークの選択や、チャンネル、通信モード、暗号化といった項目の設定を行う必要がある。そうすることで、初めて無線LANが利用可能になる。
こうしたベンダ独自のユーティリティの中には、自社製品同士の利用を前提にしているものもある。そうした製品で、異なるベンダの無線LAN製品を混在利用しようとすると、他社製品によって運用されている無線LANを検出できず、SSIDがリストに表示されない場合がある。
ベンダが提供するユーティリティを使用するにしろ、Windows XPの設定機能を利用するにしろ、無線LANを機能させるために設定が必要な項目は同じである。以下、無線LAN接続で必要な設定項目について解説する。これらの項目を、アクセス・ポイントと無線LANアダプタを装備したPCの双方で正しく設定すると、初めて両者は交信可能になり、有線のイーサネットでケーブルを接続したときと同じ状態になる(ただし実際には、自動的に選択/設定されるものもあるので、以下のすべてを手作業で設定しなければならないというわけではない)。
■チャンネル
IEEE 802.11bの規格では、2.400G〜2.497GHzの範囲に、約5MHz幅のチャンネルを14個設定しており、その中から任意のチャンネルを選択して利用するようになっている。当然、アクセスポイントと無線LANアダプタで同じチャンネルを設定しなければ通信できない。
■SSID
IEEE 802.11bの仕様では、アクセス・ポイントと個々のPCに対して「SSID(Service Set ID)」という文字列を設定し、同じSSIDを持った機器同士でしか通信できないようになっている。そのため、無線LANを用いて通信を可能にするには、接続先ネットワークのSSIDを設定する機能が必要になる。
SSIDを設定するには2種類のアプローチがある。1つは、ユーザーが自分でSSIDを手作業で入力する方法で、この場合、正しいSSIDを知らないと接続ができない。もう1つの方法は、Windows XP、あるいはベンダが提供する設定ユーティリティが無線LANを検索し、表示されるSSIDの一覧から接続相手を選択する方法である。先に画面例を示したメルコの「クライアントマネージャ」やWindows XPの無線LAN設定機能では、いずれの方法も使用できる。
SSIDは、IEEE 802.11b無線LANの動作モードによって名称が異なる。正確には、インフラストラクチャー・モードの場合は「ESS-ID(Extended Service Set ID)」、アドホック・モードの場合は「BSS-ID(Base Service Set ID)」と呼ばれる。両者を総称して「SSID」という言葉が使われている。
なお、クライアント側で「ANY」というSSIDを指定すると、どのようなSSIDを持つネットワークにでも接続できるという仕様になっているが、セキュリティに対する配慮から、「ANY」に設定されたクライアントからは接続を拒否できる製品もある。
■暗号化のキー
WEPの仕様では、キーの長さが64bitの場合は5bytes、128bit の場合は13bytesのASCII文字列を指定し、それを暗号化の際のキー生成用に使用する。この暗号化に使われるキーも、アクセス・ポイントと、そこに接続されるすべてのPCで同じ文字列を設定する必要がある。そのため、WEP暗号化を行う場合は、暗号化用の文字列を指定する機能が必要になる。
■通信モード
IEEE 802.11b対応製品はIEEE802.11に対して上位互換性を持っている。そのため、IEEE802.11用の低速な通信モードも選択できることが多いが、特別な理由がない限り、わざわざ遅い速度を選択する必要はないだろう。通常、通信モードは自動設定されるので、ユーザーが人為的に設定する必要はない。なおWindows XPには、無線LANが現在どのモード(速度)で通信しているかを確認する手段が用意されている。これについては、次回に述べる。また、ベンダ各社が提供するユーティリティでも、同様の機能が用意されていることが多い。
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