携帯電話の利用者が増えてくると、電波の帯域の使い方が効率でなく盗聴される可能性も高いアナログ方式の限界が出てきました。そこで登場したのが、第2世代携帯電話(2G=2nd Generation)の登場です。音声データをそのまま電波に乗せるアナログ携帯電話と違い、デジタル携帯電話では音声データをデジタルデータに変換して通信しており、帯域を有効に使え、盗聴される危険性もありません。第2世代以降の携帯電話はすべてデジタル携帯電話です。
第2世代の規格にはいくつかありますが、どれも「TDMA」(Time Division Multiple Access 時分割多元接続)という規格を基に作られています。TDMAはデジタル化された音声データを非常に小さく分割し電波に乗せ、受信時に細切れに分割されたデータをつないで戻す形式です。
一定の時間でデータを分割して送信し、受信時にデータをそれぞれ元に戻します。「時分割多元接続」という名前は、この仕組みをよく表しています
TDMAを利用した代表的な通信規格を取り上げると、日本を中心に利用された「PDC方式」、アメリカ、ヨーロッパ、アジアなどで広く使われている「GSM方式」、アメリカで利用された「D-AMPS方式」などがあります。
PDC(Personal Digital Cellular)は、1991年に規格が定められた日本国内で開発され、日本国内で利用されている通信方式です。1993年3月にNTTドコモがこのPDCを利用したサービスを開始しました。その後、auやソフトバンクモバイルといったキャリアもPDCを利用したサービスを開始、2006年でも約3000万人以上の利用者がいます。この規格を世界的に普及させようという動きもあったようですが、法律的・政治的な問題でできず、PDCは日本国内でしか利用されていません。
一方、GSM(Global System for Mobile Communications)は、北米、ヨーロッパ、アジア(日本・韓国除く)、アフリカ、オセアニア、ラテンアメリカなど210カ国以上で採用され、現在も利用され、名前どおりの「世界基準」の通信規格です。ヨーロッパ内で第2世代携帯電話の規格として採用され、1992年にドイツからサービスが開始されました。ヨーロッパ各国が利用していたため、GSMのシステム・端末は安く生産ができることに加え、メーカーや規格団体がいろいろな地域や場所にGSMの採用を働き掛けたこともあって、このシステムは幅広い地域で採用されることになりました。
日本は「PDC」、海外は「GSMが主流」……。 日本の携帯がなぜそのまま海外で使えないのか? なぜiPhoneが現在国内で利用できないのか? その原因はここにあります。いまでも現役の第2世代携帯電話は日本と海外では根本的に通信規格が違うのです。iPhoneがGSM規格で出したのも納得ですね。もし日本がGSMを採用していたら……、 歴史に「if」はないのですが、ついついそう考えてしまいますね。
一時、テレビや雑誌でやたら「3G! 第3世代携帯! を利用しよう」的な広告が流れました。もう第2世代の携帯がなくなりそうに思ってしまいますが、世界はもちろん、まだ日本でも多くのPDCを使ったサービスは利用されています。しかし、流れは第3世代へ向けてサービスは動いています。PDCサービスは、NTTドコモも2012年ごろにサービスを中止予定。ソフトバンクモバイルもPDCを利用したサービスの新規受付は2008年3月31日に停止予定となっています。そしてauでは、なんと2003年3月31日に停止(ツーカーは2008年3月31日予定)しています。
auはすべて第3世代携帯になっているのかということ、そうではなく「2.5世代携帯電話」といわれる「cdmaOne」という、PDCに比べて進化している方式を利用しているのです。cdmaOneは日本をはじめ、韓国、アメリカ、香港などで利用されています(cdmaOneに関する参照記事:ITmedia:塩田紳二のモバイル基礎講座 第2回:日本の2G携帯電話)。
方式名 | 利用国 |
---|---|
PDC方式 | 日本 |
D-AMPS方式 | アメリカ |
GSM方式 | アメリカ、ヨーロッパ、アジア、他多数 |
表2:第2世代携帯電話(2G) の代表的な規格 |
日本でもそこそこ、世界ではバリバリの第2世代の携帯電話について見てみました。iPhoneが使えない最大の理由はここにあったのですね。では、次に第3世代といわれる技術について見てみましょう。第3世代というより「FOMA」といった方がピンと来るかもしれませんね。
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