“Stop the World”を防ぐコンカレントGCとは?現場から学ぶWebアプリ開発のトラブルハック(2)(2/2 ページ)

» 2007年04月24日 00時00分 公開
[金子崇之NTTデータ先端技術]
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コンカレントGCのチューニング

 本稿で対象とするJava VMはJava SE 5.0 Update11とする。バージョンにより挙動が異なる場合もあるので、実際に使用するときには動作を確認しつつ使用してもらいたい。

GC方式を指定する

 コンカレントGCを使用するには、Java VMの起動時に表1のオプションを指定する。

表1 コンカレントGCの有効化
オプション 意味
-XX:+UseConcMarkSweepGC コンカレントGCの有効化

 さらに、表2のパラメータを状況に応じて追加する。

表2 コンカレントGCの並列化
オプション 意味
-XX:+CMSParallelRemarkEnabled メジャーGCのRemarkフェイズをマルチスレッドで実行
-XX:+UseParNewGC マイナーGCをマルチスレッドで実行

 この表2のパラメータは、動作させるマシンのCPUが2個以上かつ物理メモリが2Gbytes以上の場合には、自動設定される。

Heapの全体サイズを指定する

 コンカレントGCでも、スループットGCと同じくHeapの全体サイズを指定する。ヒープの全体サイズは、以下を考慮に入れて設定する。

  • OSの空きメモリ量
    Heapの全体サイズは、ハードウェアの搭載物理メモリ量から、OSやそのほかのソフトウェアが必要とするメモリ量を引いた値以下にする。これは、Heapのサイズを大きくし過ぎると、スワップが発生し大幅に性能が劣化するためだ

  • アプリケーションが必要とするメモリ量
    ユーザーごとにHttpSessionに積み込むオブジェクトのサイズや、キャッシュされたオブジェクトのサイズなど、必要となるオブジェクトのサイズを積算し、それ以上の値にする

 実際には、アプリケーションが必要とするメモリ量を積算することは難しい。OSの空きメモリ量を基に概算で設定し、負荷試験を行いながらメモリがオーバーしていないことを確認していくケースが多い。

 Heapの全体サイズは、スループットGCと同じ表3のオプションで設定する。

表3 Heapの全体サイズ指定
オプション 意味 デフォルト値
-Xms Heapの最小値を指定。-Xms1024mのように、Mbyte単位での指定も可能 2Mbytes
-Xmx Heapの最大値を指定。-Xmx1024mのように、Mbyte単位での指定も可能 64Mbytes

 最小値=最大値とすることで、動的なHeapの拡大・縮小に伴う性能劣化を防ぐことが可能だ。試してみてほしい。

New世代領域のチューニング

 コンカレントGCにおいてマイナーGCを有効活用するため、表4のオプションを変更する。

表4 マイナーGCを使用する
オプション 意味 デフォルト値
-Xmn(-XX:NewSize)、
-XX:NewRatio
New世代領域に割り当てるサイズを指定。NewRatioはOld世代領域との比率で指定し、NewSizeはサイズで指定 -XX:NewRatio=12
-XX:SurvivorRatio Eden領域とSurvivor領域のサイズを比率で指定 コンカレントGCを使用すると、1024
-XX:MaxTenuringThreshold New世代領域において、オブジェクトがこの値で指定する回数のマイナーGCを超えて生き残ると、Old世代領域に移動 コンカレントGCを使用すると、0
-XX:TargetSurvivorRatio Survivor領域がいっぱいと判断される使用率 50%

 具体的にどのような数値に変更すればよいかは、アプリケーションの作りや環境によって異なる。そこで、以下では簡単なベンチマークを実施して、コンカレントGCの有効性について確認してみよう。

対決! GCパフォーマンス測定!!

 以下の3つのパターンで性能を比較してみよう。

  • スループットGC
  • コンカレントGC(New世代領域のチューニングなし)
  • コンカレントGC(New世代領域のチューニングあり)

 なお、ベンチマークにはIPAのOSS活用整備基盤事業で開発したJBentoStoreを使用した。

ベンチマーク環境

 ベンチマークは表5に示す環境上で行った。

表5 ベンチマーク環境
CPU Intel Pentium 4 3.2Gbytes
メモリ 2Gbytes
OS Red Hat ES4 U3
Java VM Java SE 5.0 Update11
APサーバ Tomcat 5.5.23
評価対象ソフトウェア JBentoStore 1.0

 指定したJVMパラメータは、以下のとおり。

  • スループットGC
    -server -Xmx1024m -Xmx1024m -Xmn=256m
  • コンカレントGC(New世代領域のチューニングなし)
    -server -Xms1024m -Xmx1024m -XX:+UseConcMarkSweepGC -XX:+CMSParallelRemarkEnabled -XX:+UseParNewGC
  • コンカレントGC(New世代領域のチューニングあり)
    -server -Xms1024m -Xmx1024m -Xmn256m -XX:+UseConcMarkSweepGC -XX:+CMSParallelRemarkEnabled -XX:+UseParNewGC -XX:SurvivorRatio=8 -XX:MaxTenuringThreshold=32 -XX:TargetSurvivorRatio=90

測定結果はいかに!?

 スループットと平均応答時間のグラフを図4図5に示す。

図4 スループット 図4 スループット
図5 平均応答時間 図5 平均応答時間

 New世代領域チューニングなしのコンカレントGCでは、150クライアントまではそのほかのGCと同じ性能だが、200クライアント時に13%程度スループットが劣化した。一方、チューニングを行ったコンカレントGCはスループットGCに対して、性能劣化が殆どない。

 このように、マイナーGCを使用するようにチューニングされたコンカレントGCは、理想的な性能を満たしている。

コンカレントGCは現場で使えるレベルに成熟

 本記事では、マイナーGCをうまく活用するコンカレントGCの仕組みや設定について解説し、またベンチマーク結果も示した。コンカレントGCは比較的新しく出てきたGC方式であり、その使用に不安を感じる人もいるかもしれない。しかし、本記事で紹介したチューニングを行えば、十分に使いこなせるはずだ。

 筆者は、コンカレントGCがすでに現場で使えるレベルに成熟していると考えている。Full GCに悩んでいる方は、コンカレントGCの導入を検討してみてはいかがだろうか。

プロフィール

金子 崇之(かねこ たかゆき)

金子 崇之(かねこ たかゆき)

NTTデータ先端技術株式会社 オープンソース事業部所属。
入社よりJavaを用いたWebシステムの開発支援にかかわる。最近では、主にオープンソースのアプリケーションサーバに関する検証や技術支援、トラブルシューティングに明け暮れている



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