この連載では、サーバOSとして十数年発展してきた「Solaris」をオープンソース化した「OpenSolaris」を紹介し、ブログサーバ「Roller」と組み合わせて運用していくうえで有用なさまざまな知識を紹介していきます。(編集部)
第2回「Cool Stackで手軽に『SAMP』」から第4回「一瞬でのバックアップを実現するSolaris ZFS」までで、Solaris ContainerやZFSなどといったSolaris/OpenSolarisに備わっているエンタープライズ向けの機能や特徴を紹介し、その技術をブログサーバへ応用する方法について解説しました。
今回は、エンタープライズ向けクラスタリングソフトウェアを導入して、高可用性を備えたブログサイトを構築する方法を紹介します。
クラスタリングシステムとは、単一のシステムとして連携して動作する2つ以上のシステム、またはノードのことで、アプリケーションやシステムリソース、データをユーザーに提供する連続的な可用性を備えたシステムのことをいいます。
では、なぜシステムには高可用性が必要なのでしょうか。システムには、災害のほか、人的ミスによる障害、ハードウェアに起因する障害、ソフトウェアのバグや障害などを含む多くの原因によって、障害が発生する可能性があります。そのシステム障害によってサービスが停止すれば、サービスを提供する企業に多くの損失を招く可能性もあります。
例えば、クラスタリングを用いずにシングルサーバでシステムを運用する場合、以下のような障害が発生する可能性があります。
また、単一障害点により、システムを復旧できなくなる可能性もあります。具体的には
などです。この結果、すべてのシステムサービスが停止する恐れがあります。
クラスタリングの役割は、システム障害時間を短縮することです。つまり、システムに何らかの障害が発生したとしても、可能な限りダウンタイムを短縮することがクラスタリングを行う最も重要な目的となります。さらには、こうしたシステム障害を未然に防ぎ、障害を検知し、自動的に復旧するプロセスとして、クラスタリングを行う必要性があります。
このように考えると、クラスタリングは、エンタープライズ向けのサーバにおいてなくてはならない機能であることがお分かりになると思います。このエンタープライズ向けのクラスタリングを導入し、ブログサーバの可用性を高めていくというのが今回の主題です。
なお、ここで紹介する方法以外にも、クラスタリングを実現する方法は複数あります。その1つが、ミドルウェアに備わっているクラスタリングソフトウェアを利用する方法です。
今回紹介するクラスタリングソフトウェアとミドルウェアとの違いは、前者は、ハードウェアやSolarisカーネルとの親和性が高いということです。そのため、ミドルウェアのクラスタリングソフトウェアと併用されるケースもあります。
では、OpenSolaris上で動作するクラスタリングソフトウェアについて紹介していきます。
商用のクラスタリングソフトウェアには、ミドルウェアとして提供されているものから、オペレーティングシステムにおけるクラスタリングを実現するものまで、多くの種類があります。その中でも、OpenSolarisと親和性が高いクラスタリングソフトウェアが、「Open HA Cluster」です。
Open HA Clusterは、商用版「Solaris Cluster」の先行版として開発されているオープンソースのソフトウェアです。ここではその中から、Solaris Express Community Edtion上で動作する「Solaris Cluster Express」を紹介します。
Open HA Cluster、またはSolaris Clusterを利用すると、下記のような高可用性クラスタリングプラットフォームを提供することができます。
このOpen HA Clusterは、商用版Solaris Clusterの先行版をオープンソースとして提供しているプロジェクトによって開発されています。ちょうど、OpenSolarisとSolaris 10の関係をイメージしていただければ分かりやすいでしょう。
オープンソース版Solaris Clusterでは、商用版にはない機能をいち早く試すことができます。例えば、x64版で提供されている仮想化機能「xVM」(第3回参照)のHAエージェントは、商用版には入っていません。しかし、OpenSolarisコミュニティ「HA Clusters」にあるとおり、オープンソース版ではすでに試すことができる状態になっています。
なお、商用版Solaris Clusterのソースコードは徐々にオープンソース化が進んでいます。まず、高可用性を提供するHAエージェントからオープンソース化が始まり、中核となる「Solaris Cluster Core Package」も、2008年末にはCDDL(Common Development and Distribution License)の下でオープンソースとして提供される予定です。
さらに、ディザスタリカバリで求められる長距離のクラスタノードをサポートしている「Solaris Cluster GeoGraphic Edition」も、すでにオープンソースとして提供されています。
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