この連載では、サーバOSとして十数年発展してきた「Solaris」をオープンソース化した「OpenSolaris」を紹介し、ブログサーバ「Roller」と組み合わせて運用していくうえで有用なさまざまな知識を紹介していきます。(編集部)
第5回の「可用性を高めるOpen HA Cluster」では、エンタープライズサーバにとってクラスタリングが不可欠な機能の1つであることを説明し、さらに、OpenSolaris上でそれを実現するソフトウェア「Open HA Cluster」および「Solaris Cluster」を紹介しました。今回はこれを踏まえ、OpenSolaris上でSolaris Clusterを動作させるまでの手順を説明しましょう。
まず、もっともシンプルな2ノード構成のSolaris Clusterを想定し、それに必要な設定を紹介します。
図1のような環境を想定して、インストール手順をみていきましょう。2ノードで共有ストレージの環境とします。
なお、商用版Solaris Clusterを導入する場合、ハードウェアやストレージなど、サポート対象となっている構成を取る必要があります。詳しくは、http://jp.sun.com/products/software/solaris/cluster/specs.htmlを参照してください。
一方Solaris Cluster Expressは、PCなどでも、シングルノードでのクラスタリング構成を自由に試すことが可能です。もし手元にクラスタリング環境がなければ、Solaris Cluster ExpressでHA(High Availability)エージェントの動作などを試してみてください。
シングルノードクラスタのメリットですが、実際に2ノードクラスタリング環境を構築しなくとも、アプリケーションエージェントの開発を行うことができる点に尽きます。
また、クラスタリング環境と聞くと敷居が高い印象があるかもしれませんが、シングルノードのクラスタリングであれば手軽に試すことができます。そうして、実際に提供されているエージェントの動作を確認することによって、シングルから2ノードクラスタリングの構成につなげていくことも可能です。つまり、HAエージェントの開発に専念できるということです。
逆にデメリットとしては、実際のクラスタリングを行っているわけではないので、クラスタ本来の動きをみることができません。本来の動作を知るためには、やはり別途サーバを用意し、2ノードクラスタリング環境を作る必要があるでしょう。
クラスタノード設定に必要なソフトウェアは表1のとおりです。基本的には、第2回と同様のものを用います。
ソフトウェア | |
---|---|
OS | Solaris Express Developer Edition 1/08 |
ブログアプリケーション | Apache Roller 4.0、Tomcat、 MySQL (CoolStack 1.2を利用:第2回参照) |
クラスタリングソフトウェア | Solaris Cluster Express 2/08 (http://opensolaris.org/os/community/ha-clusters/ohac/Documentation/SCXdocs/SCX/) |
IPアドレス (IPMPを用いる場合) |
クラスタノードIPアドレス×2 検査用IPアドレス×2 論理IPアドレス×1 |
提供するHAサービス (HAエージェント) |
HA StoragePlus(HA ZFS) HA Tomcat HA MySQL |
表1 クラスタリングに必要なソフトウェア |
ただし、OSは新たにSolaris Express Developer Edition 1/08がリリースされたため、こちらを利用します。それに伴い、Solaris Cluster Expressも新たなバージョンの2/08を使用しています。
これまでにも何度か登場している「HAエージェント」ですが、これは、アプリケーションをHAサービスとして提供する上でなくてはならない存在です。HAエージェントがなかったら、サービスを提供する際に、そのエージェントのアプリケーション起動方法をうまく定義することができません。
例えば、HAサービスの対象となるアプリケーションがTomcatであれば、エージェントとして「$CATALINA_HOME/bin/starup.shから起動します」といった記述を定義してあげないと、HAサービスを提供するのは困難です。つまり、HAエージェントの役割とは、アプリケーションサービスの定義(環境変数の定義、バイナリの置き場所など)やほかのリソースタイプとの依存関係、論理IPの定義(第5回参照)などを行い、安全にサービスを提供することにあります。
では、まずクラスタリング環境を構築する手順をざっと紹介しましょう。
という流れです。手順ごとに、シングルノードクラスタと2ノードクラスタに分け、共通点と異なる部分をまとめてみました。
シングルノードクラスタのインストールでは、2ノードクラスタを構築する手順のうち「IPMP」(冗長化されたIPマルチパス)、「STMS」(Sun StorageTek Traffic Manager Software:冗長化されたストレージパス)、それにsplit brain(スプリットブレイン)やamnesia(アムネジア)といった問題を回避するための「定足数デバイス」以外の設定を行います(第5回参照)。
ただし、たとえシングルノードであっても、IPMP、STMSはいずれもSolarisがデフォルトで備えている機能ですから、試してみることは可能です。シングルノードクラスタにおいては、それらの設定はオプション設定として考えてください。
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