X Window System の仕組みと設定実践でも役立つLPICドリル(4)(1/4 ページ)

本連載は、Linux 認定試験 LPICに対応しています。一般的なLinuxユーザーレベルのトピックは省略し、システム管理とサーバ管理の内容を取り上げています。また、LPIC対策だけでなく、関連するトピックについて系統的な理解を問う問題も出題しています。連載の特徴は、対象となるプログラムのバージョンを可能な限り明記していること、比較的新しくまとまった解説がまだ少ないトピック、重要だが理解しにくいトピックを優先して取り上げていることです。問題を解き、その解説を読むことにより実践でLinuxを活用できる力を身に付けます。

» 2008年07月31日 00時00分 公開
[大竹龍史ナレッジデザイン]

今回のディストリビューション: CentOS 4.4、Fedora 8

問題を解く鍵 【1】【2】

 このトピックに関連した設定や試験問題を解く際には、以下の項目がポイントになります。

【1】X Window Systemの特徴と構成要素を把握しておく

 X Window Systemは、クライアントとサーバがXプロトコルで通信するネットワーク型のウィンドウシステムで、次のような構成になっています。Xサーバ、ディスプレイマネージャ、ウィンドウマネージャなどの主要なコンポーネントの機能と、それらが参照する設定ファイルについて理解しておくことが必要です。

X Window System

 現在、主要なLinuxディストリビューションで使用されているのは、X.Org Foundation(以下、Xorg)で開発されているX Window Systemです。

 Xサーバ、ディスプレイマネージャxdm、ウィンドウマネージャtwm、基本的なXクライアント、Xライブラリ、フォントファイルなどから構成されています。XorgのコンポーネントだけでX Window Systemは動作します。

統合デスクトップ環境

 統合デスクトップ環境はディスプレイマネージャ、ウィンドウマネージャ、メニュー、パネル、アプリケーションなどを統一的なデザインと操作性で提供します。主要な統合デスクトップ環境にはGNOMEとKDEがあります。

クライアントアプリケーション

 X Window Systemを立ち上げたときに表示されるグラフィカルなアプリケーションがクライアントプログラです。

Xサーバ

 ビデオカード、モニタ、キーボード、マウスなどのハードウェアを制御します。キーボードやマウスの入力をクライアントに送信し、クライアントからのリクエストにより画面に表示を行います。

ディスプレイマネージャ

 グラフィカルなログイン画面を表示して、ユーザー認証を行います。Xサーバとデスクトップ環境を起動します。

図1 CentOS4.4のディスプレイマネージャgdmによるログイン画面 図1 CentOS 4.4のディスプレイマネージャgdmによるログイン画面
図2 CentOS4.4のディスプレイマネージャkdmによるログイン画面 図2 CentOS 4.4のディスプレイマネージャkdmによるログイン画面
図3 CentOS4.4のディスプレイマネージャxdmによるログイン画面 図3 CentOS 4.4のディスプレイマネージャxdmによるログイン画面

ウィンドウマネージャ

 ウィンドウのサイズ変更、移動、削除、ウィンドウメニューやマウス操作を管理します。ウィンドウマネージャにより、ウィンドウフレームのデザインや操作方法が決まります。

図4 ウィンドウマネージャが起動していない時のウィンドウ。フレームがないので、ウィンドウに対する操作ができない 図4 ウィンドウマネージャが起動していないときのウィンドウ。フレームがないので、ウィンドウに対する操作ができない(※クリックで拡大)
図5 ウィンドウマネージャtwmを使用した時のウィンドウフレーム 図5 ウィンドウマネージャtwmを使用したときのウィンドウフレーム(※クリックで拡大)
図6 ウィンドウマネージャmetacityを使用した時のウィンドウフレーム 図6 ウィンドウマネージャmetacityを使用したときのウィンドウフレーム(※クリックで拡大)
図7 ウィンドウマネージャkwinを使用した時のウィンドウフレーム(フレームのデザインはmetacityとよく似ている) 図7 ウィンドウマネージャkwinを使用したときのウィンドウフレーム(フレームのデザインはmetacityとよく似ている)(※クリックで拡大)

 ウィンドウマネージャは、twm、metacity、kwin(初期バージョンの名前はkwm)、 sawfish、fvwm、enlightenmentなど、いろいろあります。ユーザーは好みのウィンドウマネージャをインストールして使うことができます。

【2】X Window Systemの立ち上げシーケンスを把握しておく

 Xの立ち上げシーケンスはランレベル3の場合とランレベル5の場合とに大別されます。

(1)ランレベル3で立ち上げ、テキストベースでログインしてから、startxあるいはxinitコマンドでXサーバとクライアントアプリケーションを起動する。

(例1)
テキストログイン -> コマンドラインからstartxを実行 ->
		           xinit----> Xorg
                              |
                              --> 統合デスクトップ環境

 Xが起動し、xtermが表示されたらコマンドラインからウィンドウマネージャtwmを実行する。metacityやkwinなど、ほかのウィンドウマネージャを起動することもできます。

(例2)
テキストログイン -> コマンドラインからstartxを実行 ->
		           xinit----> Xorg
                              |
                              --> 統合デスクトップ環境

 代表的な統合デスクトップ環境にはGNOMEとKDEがあります。統合デスクトップ環境GNOMEはgnome-sessionが起動します。GNOMEではmetacityが標準のウィンドウマネージャとして使用されます。

 統合デスクトップ環境KDEはstartkdeが起動します。KDEではkwinが標準のウィンドウマネージャとして使用されます。

 設定によって、どのデスクトップ環境を使用するか、あるいは単にtwmのようなウィンドウマネージャを直接起動するかを選択できます。

[GNOME]

              xinit ---->  Xorg
                      |
                      -->  gnome-session -> metacity

[KDE]

              xinit ---->  Xorg
                      |
                      -->  startkde  -> kwin

[twm]

              xinit ---->  Xorg
                      |
                      -->  twm


(注)上記シーケンスは分かりやすくするために簡略化して主要部を書いたものです。実際のシーケンスはもう少し複雑であり、またディストリビューションによっても若干異なります。


(2)ランレベル5で立ち上げ、ディスプレイマネージャからログインする。ディスプレイマネージャがXサーバとクライアントアプリケーションを起動する。

/etc/inittab -> ランレベル5 -> ディスプレイマネージャ

 代表的なディスプレイマネージャにはgdm、kdm、xdmがあります。どれを使用するか設定によって選択できます。

 ディスプレイマネージャからログインした後、Xサーバと統合デスクトップ環境/Xクライアントが起動するシーケンスはランレベル3の場合と同じになります。

[ gdm -> GNOME ]

             gdm ---->  Xorg
|
--> gnome-session -> metacity

[ kdm -> KDE ]

              kdm ---->  Xorg
                    |
                    -->  startkde  -> kwin

[ xdm -> twm ]

              xdm ---->  Xorg
                    |
                    -->  twm


(注)上記シーケンスは分かりやすくするために簡略化して、主要部を書いたものです。実際のシーケンスはもう少し複雑であり、またディストリビューションによっても若干異なります。


 このシーケンスは一般的な例ですが、ほかに gdm -> KDE、kdm -> GNOME、xdm -> GNOME、xdm -> KDE といった設定も可能です。

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