第7回「社内論文の提出期限は3週間後。どうしよう!」の最後のところに、良いパーツ(手法や道具)が見つからなくても、それに固執しないで作業を進めていくと成果は手に入ると書いてありました。でも、将来にわたって決して手に入らないパーツもあるのではないですか。そんなときは、あきらめるしかないのでしょうか。
A6.
女性と違い、男性が子どもを産むことができないように、いくら頑張っても手に入らないパーツは、たくさんあるような気がします。
私たちは、歳を取るにつれ体力を失います。ケガや病気で身動きできない状態になるかもしれません。このように、もともと持っていたパーツを失うことは、大変ショックだと思います。とはいえ、そのパーツを持っているがゆえに見えなかった壁もあるといいます。パーツをなくして初めて、もっと良い方法が見えてくるといいます。
体が不自由な方も、正確に仕事をしているという事実があります。現在をスタート地点と考えて、これからたくさん工夫をして得たことをパーツ(武器や道具)に変えながら、前進してほしいと思います。
第8回「私だってもう少し『技術者』でいたかった」には、過去の悪い習慣を見つけたら、それを断ち切ると良い仕事が手に入るとあります。これには納得できるのですが、私の会社にはコンプライアンス違反がまん延していて、良くない取引習慣が継続しています。自分の力ではどうやっても改善できない状態です。この泥沼からどうやって脱出すればいいのでしょうか。
A7.
難しいケースだと思います。コンプライアンス違反が起こっている事実も問題ですが、ご自身が問題だと思っていることを大きな声で会社にいえない事実にも、目を向けてほしいと感じました。あなたと上司(会社や組織)の状況を分析して、そこであなたがどういう行動を起こせば脱出できるかを考えてみてください。そこから打開策を作り出してほしいと思います。
素朴な疑問です。プログラミングのようなテクニカル系のスキルや、コーチングのようなヒューマン系の知識は、第10回「欲しいものを手に入れるには『場所』が重要」に書かれているように「手に入りやすい場所」で探すとすると、どこで手に入れるのが一番簡単なのでしょうか。
A8.
欲しいスキルや知識をもし手に入れたら、いったい何に、誰に、どこで使うのか。これを明確にすると、どこで手に入れたらよいかが分かります。
あなたのお客さまに対してや、社内のメンバー育成に使いたいなら、上司と交渉したり会社のリソースを探して活用したりして手に入れると、多くの人の利益になります。
自分の経験を情報として発信したり、誰かの相談に上手に乗って悩みを解決したりしたいと思うなら、ボランティアやコミュニティのメンバーとしてブログを立ち上げる、相談会を実施してたくさんの人とコミュニケーションするなどして手に入れると、多くの人と気持ちを共有でき、感動につながります。
ある特定の人のために役に立ちたい。そう思っているなら、ご自身の気持ちを誰にも邪魔されないことが大切だと思うので、自分でコントロールできる独学や自己投資で手に入れてみてはいかがでしょうか。
樋口研究室のビューチェンジには、「3つの○○」とか、「××するための3つの方法」など、「3」という数字がよく出ています。これには何か意味があるのでしょうか。
A9.
はい、意味があります。ビューチェンジは、もの(事実や事象)に対する見方や考え方を変化させるツールです。樋口研究室は、事実や事象を立方体の箱に入れて眺めるようにしています。立方体は「3つの方向に伸びるベクトル(軸)」で作られています。それを上から眺めたり、横から眺めたり、逆さまにして眺めたりすることで、これまでとは違った方法を探し出します。ですから3という数字が基本になるのです。
いかがですか。ビューチェンジは、仕事や生活のどんな場面でも使える発想転換の方法です。うまく使えば、上手にメンタルヘルスを維持しながら前進するためのツールになります。皆さんにもこの機会に、ぜひビューチェンジの使い方を身に付けてほしいと思います。
この連載は、今回でいったん終了します。新たな連載では、樋口研究室に所属するメンバーが、皆さんのメンタルヘルスをうまく維持していく方法をお伝えします。
樋口研究室で鍛えられたメンバーの具体的なビューチェンジの方法は、皆さんのお役に立てるのではないかと感じています。引き続きよろしくお願いいたします。
樋口節夫
日本アイ・ビー・エムに22年間勤務し、その後独立。アーキテクトとしてメインフレームからオープンシステムまで幅広いシステム構築に携わった経験から、コンピュータシステムの良しあしはそれを使う人間の良しあしによって決まることを発見。人間のパフォーマンスアップツールとしてITコーチング手法を開発し、人材開発およびテクニカルコンサルタントとして活躍中。『ITコーチング入門―SE・ITエンジニアのための問題解決とスキルアップ』(技術評論社刊)をはじめ、技術系や人材系の著書多数。主宰する樋口研究室では、ITエンジニアが危機から身を守るための練習会(ワークショップ)も実施している。
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