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» 2009年10月13日 00時00分 公開

分かりやすい提案書はアウトラインが美しい誰にでも分かるSEのための文章術(3)(2/2 ページ)

[谷口功,@IT]
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顧客が分かりやすい順番に展開する

 提案書を作成する側が自然(論理的)だと考える展開と、読み手にとって自然な(分かりやすい)展開には違いがあります。このことを考慮して、展開を決めることが重要です。

 システム導入は、顧客が抱える問題を解決するための手段です。問題解決法の提案では、下記のような流れが「論理的である」と考えられています。

(1)目指すべきものを設定

(2)目標と比較した現状を示す

(3)両者の対比から見えてくる問題点を明らかにする

(4)問題点を解決するために克服すべき課題を提示

(5)そのための具体的な方策、方法を提案

 そこで、提案書を作るSEは、III のような展開をします。

 しかし、顧客はいきなり「目指すべきもの」を提示されても、実感としてとらえられないでしょう。そのため、現実感を伴わないで提案書を読み進めていくことになってしまいます。それでは、書き手の主張がきちんと伝わりません。

 それよりも、具体的で現実的なところから話を展開していきましょう。顧客が実感できる話から始めれば、内容をきちんと伝えることができるでしょう。

 顧客にとって分かりやすく、自然な流れは次のようなものではないでしょうか。

(1)顧客の業務の現状を示す

(2)現状の問題点を明らかにする

(3)問題を解消した後の目指すべき姿(システム導入の目的、システム化の成果・効果・目標)を導き出す

(4)目指すべき姿に到達するために克服すべき課題(システム導入における課題)を示す

(5)目指すべき姿を実現するための方策(実現の方針・方策・方法)を提案する

なので、IV のような展開に改善しましょう。

III (修正前)

1 システムの導入について

 1.1 システム導入の目的

 1.2 システム導入の効果・成果・目標

 1.3 システム導入の背景

 1.4 業務の現状

 1.5 現状での問題点

 1.6 システム導入における課題

 1.7 実現の方針・方策・方法

 1.8 対象となる業務の範囲・領域



IV (修正後)

1 システムの導入について

 1.1 業務の現状

 1.2 現状での問題点

 1.3 システム導入の目的

 1.4 システム導入の効果・成果・目標

 1.5 システム導入の背景

 1.6 システム導入における課題

 1.7 実現の方針・方策・方法

 1.8 対象となる業務の範囲・領域


読み手の役職や立場を考える

 提案書は、経営陣や上級の管理職も読む文書です。その点を考慮した提案書にすることが重要です。

 経営陣や上級の管理職は、ビジネス文書に対して、書き手が主張したいことの全体像や本質が分かるような概要、文書の結論が最初に記述されていることを求めます。こうした記述のない文書は、その時点で見捨てられる可能性があります。

 システム開発の提案書も同様です。最初に、全体の俯瞰(ふかん)図、主張したいことや結論の概要を記述しておく必要があります。

 そこで、 V のように、いきなり本論に入ることは避け、 VI のように、まず序論として提案の概要や結論を記述しておきます。

 また、最初に主張したいことや結論を提示することは、提案する側の考え、思いを気迫を持って読み手に伝えるためにも有効です。

V (修正前)

1 システムの導入について

 1.1 業務の現状

 1.2 現状での問題点

 1.3 システム導入の目的

 1.4 システム導入の効果・成果・目標

 1.5 システム導入の背景

 1.6 システム導入における課題

 1.7 実現の方針・方策・方法

 1.8 対象となる業務の範囲・領域



VI (修正後)

序 本提案の概要と結論

1 システムの導入について

 1.1 業務の現状

 1.2 現状での問題点

 1.3 システム導入の目的

 1.4 システム導入の効果・成果・目標

 1.5 システム導入の背景

 1.6 システム導入における課題

 1.7 実現の方針・方策・方法

 1.8 対象となる業務の範囲・領域


異なる角度に展開する

 一定の方向で展開してきたものを、違った角度に展開すると、読み手の思考の振幅を変化させ、読み手の心の動きに変化を生じさせることが可能です。このような工夫をこらすと、提案書の内容を読み手により共感してもらえるでしょう。

 例えば、導入するシステムについて記述してきた後で、その内容の正当性を裏付けるような事例やデータを提示します。すると「そういう事例があれば信頼できるな」とか「確かに提案内容はうなずけるものだ」など読み手の思考や心の動きに変化を与えます。

 そこで、顧客に先行して導入した企業の事例を、システムの概要、可能であれば開発コスト、システム導入による効果などを具体的に最後に記述することにします。自社で開発した、顧客と同じ業界・業種の会社の同じようなシステムの事例や、異なる業界や業種でも、今回のシステムと似たシステムの事例を紹介します。また、自社で開発したものでなくても、情報が入手可能なシステムの事例紹介も考慮します。

 こうした事例は、「システム導入の背景」の項目などで提示することも考えられます。しかし、そうすると一種の“脅迫的な”紹介だと顧客に受け取られかねません。そこで、まず導入するシステムについて顧客の納得を得た後、提案書の終わりで紹介するのが効果的でしょう。

提案書のアウトラインが完成

 今回は、顧客に伝わる提案書のアウトラインを作るためのポイントを説明しました。これらのポイントはすべて、「顧客のことを考えて、顧客の方を見て提案書を作成する」という考え方に沿ったものです。

  1. 読み手の求めるものを考える
  2. 顧客が分かりやすい順番に展開する
  3. 読み手の役職や立場を考える
  4. 異なる角度に展開する

 これらのポイントに配慮して、提案書のアウトラインを構成しましょう。

提案書のアウトライン(完成)

序 本提案の概要と結論

1 システムの導入について

 1.1 業務の現状

 1.2 現状での問題点

 1.3 システム導入の目的

 1.4 システム導入の効果・成果

 1.5 システム導入の背景

 1.6 システム導入における課題

 1.7 実現の方針・方策・方法

 1.8 対象となる業務の範囲・領域

2 導入システムの概要

 2.1 システムの構成

 2.2 システム導入後の業務フロー

 2.3 システムの品質条件、性能条件

 2.4 システムの範囲

3 開発プロジェクトの進め方

 3.1 開発プロジェクトの進め方

 3.2 納入する成果物

 3.3 開発体制

 3.4 開発スケジュール

4 見積もり

 4.1 コスト見積もり

5 先行企業の導入事例

 5.1 A社のシステムと導入効果

 5.2 B社のシステムと導入効果

 5.3 C社のシステムと導入効果


 「顧客のことを考え、顧客の方を見る」という姿勢で作成しないと、顧客に読んでもらい、内容を理解してもらい、提案に納得し、共感してもらえるような提案書になりません。この点を忘れないようにしてください。

著者紹介

谷口 功 (たにぐち いさお)

フリーランスのライター、翻訳家。企業にて、ファクシミリ通信網を使ったデータ通信システム、人工知能、日本語処理関連のソフトウェア開発、マニュアルの執筆などに関わる。退職後、コンピュータ、情報処理、通信関連の書籍の執筆、翻訳、各種マニュアルや各種教材の執筆に携わる。また、通信、コンピュータ関連のメールマガジンの記事、各種雑誌においてインターネット、パソコン関連の記事やコラムなども執筆。コンピュータや通信に関連する漫画の原作を執筆することもある。 主な著作は、『SEのための 図解の技術、文章の技術』(技術評論社)、『ソフト契約と見積りの基本がよ〜くわかる本』『よくわかる最新 通信の基本と仕組み』(秀和システム)、『図解 通信プロトコルのことがわかる本』『入門ビジュアルテクノロジー 通信プロトコルのしくみ』(日本実業出版社)、『図解 ネットワークセキュリティ』『マスタリングTCP/IP IPsec編』[共著](オーム社)など。



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