それでは、ハードウェアリソースプールからリソースを割り当て、仮想マシンを作成し、起動してみることにします。最低限必要なことは、次の3つです。
まず、仮想マシンプールの作成ですが、これは器を作るようなものです。決めるのは基本的には名前だけですが、割り当てるハードウェアリソースを制限することもできます。
1. 「New Virtual Machine Pool」をクリックする
2. 仮想マシンプールの名前を決める
3. 仮想マシンプールが作成された
仮想マシンプールを作成したら、そこに仮想マシンを作ります。割り当てられているハードウェアリソース以上にリソースを割り当てることはできません。oVirtアプライアンスでは、少なくともメモリ256MBを割り当てないと仮想マシンを作成できません。
4. 左のペインで作成した仮想マシンプールを選択する
5. 「Virtual Machines」タブをクリックし、「Add Virtual Machine」をクリックする
6. 仮想マシンに割り当てるリソースを設定し、作成する
7. 作成した仮想マシンを選択し、「Actions」メニューから「start」を選択する
8. 仮想マシンが起動された
9. virt-managerのコンソールから、oVirtノード上に仮想マシンが動いていることを確認できる
以上、仮想マシンの作成方法を一通り説明しました。oVirtによって、仮想環境を意外と簡単に利用できることがお分かりいただけたのではないでしょうか。
今回は、スタンドアロンアプライアンスを使ってoVirtを試してみました。1台の物理マシンで気軽に試すことができる代わりに、最新版のアプライアンスイメージが用意されていないこと(注5)、仮想マシンを入れ子にしていることから分かるとおり、本番運用には向かないことがデメリットです。しかし、oVirtを使った運用方法の検証などの目的であれば、十分に使えるでしょう。
今回は検証していませんが、oVirtのバンドルインストールやサーバスイートプロダクションインストールは、本番用途としては使えるかもしれません。ただ現状では、インストール可能な環境はFedoraに限定されてしまうこと(注6)、インストールするにはサブシステムが非常に多いので、それぞれのサブシステムの動きや設定方法を理解しておく必要があること、ドキュメントが不十分なことなどに留意しておく必要があるでしょう。
今回の検証では、一度導入さえできれば、oVirtは割と使いやすいことが分かりました。oVirtを利用することで、KVMによる仮想マシンの運用自体は、ある程度楽になるのではないかと思います。
今後、仮想マシン間のネットワーク設定までもoVirtで楽にできるようになれば、かなり有用なツールになると思います。現時点では、KVMでのネットワーク設定は簡単なものとはいえないでしょう(注7)。今後、その使い勝手がどうなるのかは気になるところです。
どのタイミングでRHELに取り込まれるのか(本当にRHEL6に取り込まれるのか)も気になるところです。最近、Red Hat社のニュースリリースが活発になってきています。9月に行われたRed Hat Summit 2009では、クラウドコンピューティングに関する新たな取り組みとして、Hail Cloud Computingプロジェクトとδ-cloudプロジェクトが発表されています。また、つい先日、KVMの生みの親であるアヴィ・キヴィティ(Avi Kivity)氏を招いてのセミナーが行われましたが、そこでは、oVirtと、前回紹介したSolidICEのSPICEを統合して、Windows向けに「Red Hat Enterprise Virtualization Manager for Services」(仮)という名称で提供することが明らかにされました(ただし、ライセンス体系やリリースタイミングなどは未定だそうです)。
また、10月に入ってから、NTTコミュニケーションズのクラウド型ホスティングサービスでの協業も発表されました。大手ベンダがKVMを採用したトライアルサービスを初めて提供することから、ニュースにもなりました。一個人ユーザーとしてはビジネス寄りの話はあまり直接関係ありませんが、関連するビジネスが活発になれば、KVMやそれに関連するプロジェクトも盛り上がり、KVMの利用者も増えていくのでないかと思います。
今回の記事が、読者の皆さんがKVMおよびoVirtを試し、今後の役に立てるきっかけとなれば幸いです。
注5:2009年9月18日執筆時点で、最新バージョンは0.100-4。
注6:バージョン0.92では、DebianでもoVirtアプライアンスを使うことができるようです。アプライアンスの場合は、設定スクリプトだけがホストOSの環境に依存するので、ほかの環境で使いたい場合は、そのスクリプトをカスタマイズすればよいでしょう。
注7:慣れてしまえばさほど大変ではありませんが。
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