―― NECが求めている人材とは、どのようなものでしょうか。
河野 NECは幅広い事業を手掛けているので、何か具体的に「この分野」というよりも、さまざまな専門性を持った学生に来てもらいたいと思っています。特に技術系の場合は、それぞれにバックグラウンドがあると思いますが、電気系や機械系でなくても、皆さんの専門性を生かせる場があると思います。
タイプとしては、技術系の知識はもちろんですが、「理系的な発想」を持った方を求めています。研究や論文執筆などを通じて「理系的な発想」を身に付けた学生を求めているのです。
多くの場合、学生時代に学んだことがそのまますべて社会で通用するかというと、そうとは限りません。したがって、新卒採用でポイントとなるのは、応募者のポテンシャルや伸びしろであると考えています。特にわたしたちの事業の性質上、「世の中にこういうサービスを出したいんだけど」などのご要望を受け、「それはこういう技術を使えば提供できます」と提案したり、こちらから新しいサービスを提案したりする仕事が中心となります。そういう場面では、専門性ももちろん重要ですが、それ以上に「理系的な発想」が必要になるのです。
伊藤 ポテンシャルに加えて、幅広い興味や柔軟性、適応力が求められると思います。実際のところ、大学での研究とはまったく違う分野の仕事に就くこともあり得ます。ですので、新しい分野への適応能力や、吸収する力が求められます。
河野 ポテンシャルには2つの要素があると思っています。1つは好奇心。すなわち、いろいろなものに興味を持てるか。もう1つは、学ぶ姿勢。興味を持ったものに対して、調べたり、考えたり、友達と議論したりなど、実際に動けること。仕事で求められるのは特に後者なのです。お客さまに提案するにあたって、調べたり、考えたり、関係のありそうな部門に飛び込んで議論してみる、といったことが必要になるのです。
―― 事業や顧客層の幅広さに合わせて、求める人材は柔軟に幅広く学べる素養がある人、1つに凝り固まらない人、というイメージでよろしいでしょうか。
河野 一方で、深い専門性も求められます。「幅広い」興味を持ちつつ、「深く」突き詰めて考えられる、ということも大事になってきます。わたしたちのお客さまは、厳しい市場環境の中で、世界を相手にして競い合っています。こうしたお客さまと仕事をするためには、「そこまで考えてくれたのか」と相手をうならせるくらい、深く考えていなければならないのです。
―― 学生のうちに、どのような経験はしておいた方がいい、というアドバイスはありますか。
河野 何か1つのことに集中する、ということだと思います。
伊藤 大学で学んだことをそのまま生かせるかどうかは別として、何かを突き詰めることは重要です。
河野 技術系の場合、どういう資格を取るべきか、という質問をしてくる学生さんがいます。それも1つの指標だと思いますが、会社に入ってからでも学べるものも多いです。それに、資格が重要なわけではありません。なぜその資格なのか、取るためにどうしたのか、そこが重要です。資格に限らず、面接では、何をしてきたかもさることながら、なぜそれをやってきたのか、どのようにやってきたのかを聞くようにしています。
―― 「What」だけではなく、「Why」や「How」を聞くということですね。
河野 そのとおりです。繰り返しますが、「何を」はそこまで重要ではないのです。ある領域を究めてしまうほどに「突き抜けた人」なら、それだけで活躍できると思いますが、そこまでではないという人が大勢でしょう。
以前、面接した大学院生で、面白い人がいました。ある分野について、究めているといってもいいほどの人だったのですが、仕事は違う分野を志望していました。「ここまで究めておいて、なぜこの分野に進まないのですか」と尋ねたところ、「わたしは『学び方』について自信を持っています。だから、仕事では『学び方』を生かして、いままでやったことがない分野に挑戦してみたいんです」と答えてくれました。こういう、専門性を持ちながら、同時に柔軟性も持ち合わせている人を望んでいます。
―― 最後に採用人数についてお聞きしたいと思います。今年初め、2010年度新卒の採用人数を大幅に減らす、という報道がありました。2011年度新卒も同様の傾向でしょうか。
河野 2011年度の採用数はまだ決まっていませんが、NECにとって技術は事業の根幹ですので、技術系の部門に関しては、一定数確保したいと考えています。不況であっても、ビジネスの根幹を担う研究・開発職と、最前線を担う営業はきちんと確保し、育成していきたいと思います。
IT業界の人材は、1週間教育して一人前になれるようなものではありません。ある程度のスパンをもって育成する必要があります。特に新卒は基幹要員であり、未来のNECの中核を担ってもらうことを期待しています。厳しい環境にあっても、技術系学生はしっかり採用していきたいですね。
事業を幅広く手掛けているということは、さまざまな可能性がある半面、「この企業はこの分野のビジネスをしているから、自分のこの分野の研究成果をアピールしよう」などといったやり方だけでは通用しないということでもある。自分が何をやってきたのかを、そのまま出しても必ずしも通用しないのだ。「専門性」を持ちながら、同時に「柔軟性」を持った学生をNECは求めている。それをきちんと面接官に伝えられるかがポイントになりそうだ。
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北村慶一(きたむらけいいち)
慶應義塾大学大学院理工学研究科基礎理工学専攻修士1年。
高校時代に文転して経済学部へと入学したが、数学に興味を抱き、院試を期に「理転」して数学を研究する。学部時代、学生新聞「慶應塾生新聞」で情報システム局長を務め、取材やWeb編成を通じて、ネット媒体を通じた情報発信に興味を持つ。現在は研究の傍ら、ネットメディアの在り方と自身のメディアへの貢献の仕方を模索中。
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