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» 2010年05月14日 00時00分 公開

「人月・受託の限界を超えよ」SIerでSaaSを立ち上げる特集:岐路に立つIT技術者たち(5)(2/2 ページ)

[倉貫義人,SonicGarden]
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受託開発からSaaSへ――やってみて分かった両者の「違い」

 SI企業で行うシステムの受託開発と、SaaSで提供するシステムの開発は、「ビジネスが違う」だけではありませんでした。経験して初めて分かった「違い」がたくさんあります。

 例えば、「機能」についての考え方。多くの受託開発の場合は機能や要求の一覧があり、それらの完成を待ってから運用します。なぜなら、納品と検収というタイミングがあるからです。

 一方、SaaSでは機能全体の完成度をそれほど重視していません。SaaSは請け負って開発をしているわけではないので、機能をたくさん作ったところで確実にユーザーが購入してくれるとは限りません。また、市場に投入するタイミングや、競合の動向も関係してきます。たくさんの機能を想像だけで作り込むよりも、「基本機能だけ作って、あとは利用者のニーズに応じて改善していく」という方が向いています。

 そのためには、「利用者の声を拾い上げる仕組み」が必要です。また、いかに素早く改善していくかという「保守性」が鍵になります。これらの感覚は、SI企業の中でシステム開発をしていたころとは大きく異なります。

 品質についても同様です。多くのSI企業では、製造業であるが故に過剰品質にならざるを得ない状況が多いと思います。これは、利用者のニーズに応じて改善していくSaaSの考え方とは大きく異なります。

 正直なところ、SaaS開発におけるプロジェクトマネジメントという観点でいえば、SI企業でのノウハウはそのままでは生かせないことの方が多いかもしれません。「顧客がお金を払うのは、製品に対してではなくサービスに対して」だという点を理解しないままでは、ポイントを外したマネジメントになってしまいます。 逆に、どこに重点を置くのかを理解できれば、それまでのノウハウを生かすことができるのではないかと思います。 これは、技術に精通したエンジニアにとっても同様です。

  • 両者のビジネスの違いを理解しているかどうか
  • 自分たちのビジネスは何かを理解しているか

 マネージャでもエンジニアでも、上記の2点を意識する必要があります。

エンジニアとして望む道は何か?

 わたしは、職種としてはエンジニアからプロジェクトマネージャを経て、業種としてはSI企業の受託開発から社内システム開発を経て、いまは社内ベンチャーでSaaS事業の責任者をしています。

 プログラマだったわたしがこういう道を歩んできたのは、その根底に、

  • エンジニアとしてのモノ作りを上手にやりたい
  • 使ってくれる人に、どうすれば作ったモノを届けられるか、追求し続けたい
  • 自分で考えた新しいモノを作って、世の中に出していきたい

という思いがあったからです。

 「事業を立ち上げる」方向に進むのは、エンジニアとしての1つの道だと思います。アイデア1つでゼロからソフトウェアを作り出せるのはエンジニアの強みだからです。

 もちろん、職人と呼ばれるようなエンジニアを目指す道もあると思います。特定の技術のスペシャリストとして生きていく道です。その場合は逆に、「事業を立ち上げる」という道は向いていない可能性があります。 例えば、大規模なシステムの運用をしたいと考えるエンジニアであれば、新たに事業を立ち上げるというのは現実的ではありません。新しいWebサービスで大規模なシステム運用が必要とされるまでには相当な時間がかかりますし、専門分野以外の努力も必要になるでしょう。それなら、自ら新事業を作り上げるよりも、すでにビジネスとして成功している会社に行った方が、キャリアデザインをを実現できるのではないでしょうか。

 自分はどんなエンジニアを目指すのか。すでにある問題を解決する職人か、問題を新しく探し出してビジネスにする事業家か――。自分自身のビジョンを明確にして、今後の道を選ぶ必要があります。この記事が、読者の皆さんのキャリアを考えるうえで参考になれば幸いです。



著者紹介

倉貫義人(くらぬきよしひと)

TIS/社内ベンチャーSonicGardenカンパニー長。京都府生まれ。1999年、TIS(旧 東洋情報システム)に入社。2003年、基盤技術センターへ異動後、社内SNS「SKIP」の開発を行う。2008年11月に、社内ベンチャー「SonicGarden」を立ち上げる。日本XPユーザグループなどのアジャイルに関するコミュニティ活動も行う。

ブログ:Social Change!

Twitter:http://twitter.com/kuranuki


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