「何も楽しいことがないし、長所も思いつかない」といっていた理系女子学生Aさん。しかし、話を聞いていると、下宿生活で朝晩自炊し、長年絵も描き続けているなど、なかなか充実した生活を送っていることが分かりました。さらに、食材はまとめ買いして経費を削減し、残りもので翌日の朝食を作る工夫を長年続けていました。
こうした日常の工夫は、ささいなことですが頭とセンスを使うと、Aさんは気付きました。社会に出れば、経費を削減し、効率良く成果を出すことが求められます。彼女は、「知恵を使い、手際良く人の役に立つ行動ができること」が、自分の長所であると気付いたとのことです。
「学部時代、続けられたのは麻雀だけしか思いつかない」という男子大学院生B君。しかし、その麻雀友達との関係を思い浮かべると、「自分は人の話をよく聞く方かもしれない」と気付きました。
「一緒に麻雀をしている後輩から、よく実験の相談を受ける。そのことを苦痛に感じたことが、そういえばない。どうしたらもっと後輩にとって分かりやすく伝えられるか、助言や指導の仕方を工夫している自分がいる……」。
B君は、「自分は、人に頼ってもらえるところがあるし、さりげなく人を援助することができる。人と協力して成果を出せる人間である」ということに気付きました。
自分では当たり前と思っていたこと、暮らしの中の楽しみや工夫の中に、実はあなたの仕事につながる長所が隠れているものです。
よく「そんなものでいいのですか」と聞かれますが、それでいいのです。あとは、希望する企業に求められている能力と照らし合わせて、それに合うように伝え方を考えるだけです。
本来、長所になることは苦労なくできているので、自分では気付かないものです。「単純でつまらない」と否定的に思っていたあなたの生活や趣味も、肯定的に捉えると、実は大切な“宝石”が潜んでいます。
松浦 慶子
臨床心理士・日本カウンセリング学会認定カウンセラー。
国際基督教大学心理学科卒業、筑波大学大学院教育研究科カウンセリング専攻修了 。大学、専門学校での学生相談や講師、精神科睡眠障害外来での医療相談、EAP機関・ピースマインドにて社員や家族のカウンセリングなど、幅広く相談活動を行っている。
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