クラウド構築で注目が集まるCloudStackとは?CloudStackによるプライベートクラウド構築術(1)(2/2 ページ)

» 2011年08月11日 00時00分 公開
[荒井 康宏, 飯塚 雅之一般社団法人クラウド利用促進機構(CUPA)/クリエーションライン株式会社]
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CloudStackはなぜ注目されるか

 CloudStackは、先に挙げたオープンソースのIaaSクラウドソフトウェアの1つで、Amazon EC2のような機能を備えたクラウド基盤を、社内などのプライベートクラウドとして、もしくは、データセンター事業者などで提供するパブリッククラウドとして構築することができます。

 CloudStackは、完成度が高く利用実績も多いほか、操作性の高い優れたGUIを備えているのが特徴です。このため、直近でクラウドサービスの提供や社内プライベートクラウド環境を整備したい人には特に適しています。

 また ロードバランサやファイアウォール等の機能も標準で搭載しており、規模拡張性を備えた内部アーキテクチャを有しています。

 最近では、アジアでの採用事例も目立ってきています。以下では、CloudStackの代表事例をいくつか抽出して紹介します。

Tata Communications

 Tata Communicationsのクラウドサービス(InstaCompute)は、南アジア(インド、シンガポール、マレーシア)で3000万ユーザーからのニーズをベースに、ホスティングサービスの競争力強化と、高いパフォーマンスを持つ完全冗長化システムの必要性から、 CloudStackとCloudPortalを採用しクラウド基盤を構築しました。

 ハイパーバイザにはCitrix XenServerを使用し、開発もスピーディで、コンセプトからわずか8カ月で稼働しました。

 CloudStackの採用により高いパフォーマンスをが実現し、スケーラブルで低コストなクラウドサービスが提供できたとのことです。また、Tata Communicationsでは、3つの国をまたぐ、4つの通貨を使用可能な、7つのデータセンターを持つパブリッククラウドを、CloudStackだけで管理しているとのことです。

KT(Korea Telecom)

 KTではモバイルデバイスの急増により、柔軟でスケーラブルなITインフラの整備が急務になり、クラウド基盤の管理のために Cloud.comと提携し、CloudStackを導入したとのことです。加えてCitrix、enStratus、Nexenta、Arista Networksなどの製品を採用しています。

 CloudStackの採用により、スケーラビリティに優れた低価格なプライベートクラウドとパブリッククラウドの早期構築が可能になり、1000以上のサーバ、テラバイト級のストレージを、セルフサービスポータルから管理するためのシステムを稼働、セキュアなマルチテナント用のプラットフォームを提供しているとのことです。

 KTでは、パブリッククラウド・サービスとプライベートクラウド・サービスともにCloudStackを採用しています。

北海道大学

 北海道大学では北海道大学情報基盤センターで運用される全国の大学、研究機関の活動を支援する「北海道大学アカデミッククラウド」に、CloudStackを採用すると発表しています。

 「北海道大学アカデミッククラウド」は、日本最大規模のアカデミッククラウドになる予定で、スーパーコンピューティングシステムとブレードサーバ、ストレージプラットフォームなどを組み合わせたシステム構築を行い、全国の大学研究者が学術活動用に、コンピューティングリソースや技術リソースを提供できるようになります。

IDCフロンティア

 日本最大級のデータセンター事業者であるIDCフロンティアでは、セルフポータル型のクラウドサービスを提供するため、国内で最初に CloudStackの採用を発表しています。

 CloudStackを用いたクラウドサービスである「NOAHプラットフォームサービス」は近日提供開始予定で、利用者自身で仮想マシンなどの構築・管理ができるだけでなく、API公開によるクラウドサービス全体の統合管理や、パブリックとプライベートクラウドのシームレスな連携を実現し、異なるサービス間を意識しないITインフラの包括運営が可能とのことです。

 今後、順次提供予定のNOAHの主な特長は次のとおりです。

図2 NOAHのセルフサービスポータル画面(クリックで拡大) 図2 NOAHのセルフサービスポータル画面(クリックで拡大)
  1. クレジットカード決済の利用でサインアップに5分、仮想マシンを5分で作成
  2. ポータル画面から仮想マシンの作成や物理サーバ追加などITリソースの管理が可能
  3. APIの公開により、クラウド管理サービスや他のインフラサービスとの連携を実現
  4. 東日本、西日本の国内複数拠点から提供地域の選択が可能
  5. 仮想マシンは従量・月額固定料金から選択、ネットワークは転送量に応じた課金
  6. 電話、Webによるテクニカルサポートの提供

 次回からは、こうした実績を持つCloudStack のアーキテクチャやインストール方法について、解説していきます。

著者紹介

一般社団法人クラウド利用促進機構(CUPA) 理事
 荒井 康宏

クリエーションライン株式会社 シニアエンジニア
 飯塚 雅之



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