Windowsタブレットはストレージ容量が少ない場合が多く、ユーザー領域は不足しがちである。もしOSを初期化して工場出荷時の状態に戻すための「回復パーティション」がストレージ内にあるなら、この内容をUSBメモリなどにコピーしてから解放することで、ユーザー領域を拡大できる。
対象デバイス:Lenovo Miix 2 8(Windows 8.1タブレット)
タブレットPCでの利用に向いたWindows 8/8.1の登場により、小型のタブレットPC(いわゆるWindowsタブレット)の製品が数多く販売されるようになった。8〜10インチ程度のタッチ対応ディスプレイを備え、重量も数百グラム程度と持ち運びやすく、x86アーキテクチャのCPUを使っているものも多いので、従来のノートPCに代わって活用できるシーンが増えている。だがこれらの小型デバイスは総じてストレージ容量が少なく、32GBとか64GBしか装備していないものも多い。
例えば以下は、レノボ・ジャパンが販売している「Miix 2 8」というタブレットPC(32GBモデル)のエクスプローラーの画面例である。購入直後でもC:の空き領域は9GB程度しかなく、Windows Updateを適用後、よく使うアプリケーションをインストールしたり、ユーザーデータなどを保存した結果、あと4.4GB弱しか空いていない。
空き領域がこれだけしかないと、保存するデータを慎重に選択したり、オンラインストレージを活用するなどの(面倒な)工夫が必要になる。
だが、このシステムでディスクの管理ツールを実行してストレージ内を確認してみると、C:ドライブの後ろ側に、さらに6.17GBの「回復パーティション」という領域が存在している。ここには、システムに障害が発生した場合などに、工場出荷時の状態に戻すためのデータが保存されている。だがシステムを通常利用する場合には全く関係ないデータ領域であり、障害発生時にシステムを初期化する場合にしか使うことはない。
ならばこの領域を解放してC:ドライブの一部に組み込めば、ユーザー領域を6GBほど増やすことができる。わずかな領域であるが、この程度のストレージしか持っていないシステムにとっては貴重だ。とはいえ、単に回復パーティションを削除してしまうだけだと障害発生時にシステムを工場出荷時の状態に戻せなくなるので、まずは回復パーティションの内容を「回復ドライブ」にバックアップする作業を行う。Windows 8.1にはそのための機能が標準で用意されているので、この作業は機種に依存せず簡単に行える。本TIPSではこの方法を紹介する。
なお、この回復ドライブを使ってシステムを復元する方法は、ベンダーあるいは機種ごとに異なっている。そこで本TIPSでは、復元の方法については、レノボ・ジャパンが販売している「Miix 2 8」を対象として簡単に紹介しておくにとどめる。他機種のユーザーはその点を了承して参考にしていただきたい。
システムを初期化して元の状態に戻すことをWindows 8.1では「回復」と呼び、幾つかの方法があるが、完全に初期化して工場出荷時の状態に戻すことを「Windowsの再インストール」という(「Windows 8におけるPCのリフレッシュとリセット」参照)。このとき利用されるのが回復パーティションに保存されているシステム初期化用のデータである。
この回復パーティション内のデータを外部のUSBメモリなどにバックアップすることを「回復ドライブを作成する」という(TIPS「システムの修復用にWindows 8の回復ドライブを作成する」参照)。「回復ドライブ」さえ作っておけば、これを使ってシステムをブートすることにより、いつでも工場出荷時の状態に戻せるようになる。
回復ドライブを作成するには、まずシステムに容量8GB以上のUSBメモリを接続する(内容は全て消去されるので、回復ドライブ専用に1つ用意すること)。Miix 2 8で外部ストレージを接続するにはマイクロUSBコネクタしかないので、マイクロUSBとUSBメモリ(のコネクタ)を接続できるようにする中継ケーブルを用意してUSBメモリを接続する。なお、こうすると電源が供給できないので、作業中に電源不足でシャットダウンしないよう、十分に充電してから作業を開始する。
Windows 8.1を起動後、[コントロール パネル]の[システムとセキュリティ]を開き、[ファイル履歴]を実行する。
画面左下に「回復」というリンクがあるので、それを実行して回復ツールを起動する。
一番上にある[回復ドライブの作成]を実行して、作業を始める。最初から検索チャームで「回復」キーワードを検索し、[回復ドライブの作成]を実行してもよい。
回復ドライブの作成ウィザードの最初の画面に「回復パーティションを PC から回復ドライブにコピーします。」というチェックボックスがあるので、これをオンにして次の画面へ進める。既に回復ドライブを作成しているとこのチェックボックスは選択できない。つまり、回復ドライブの作成は(基本的には)1回しかできない。回復ドライブのバックアップが必要なら、作成されたUSBメモリ(上のファイル群)をコピーすればよい(隠し属性の付いたファイルも全てコピーすること)。
ウィザードの次の画面では回復ドライブを作成するUSBメモリを選択する。通常はD:になっているだろう。ドライブ名を確認後、次へ進む。
次の最終確認画面で[作成]ボタンをクリックすると、回復ドライブの作成作業(USBメモリのフォーマットとファイルのコピー)が始まる。
USBメモリの速度にもよるが、十分程度で作成作業は完了するだろう。作業が終了すると次のような画面が表示される。
上記の画面で[回復パーティションを削除します]をクリックすると、「回復パーティションの削除」という確認画面が表示されるので、[削除]をクリックする。するとパーティションの削除とC:ドライブの拡張が行われ、次のような結果の確認画面が表示される。
この例では、6.17GBの回復パーティションが削除され、その分C:ドライブの空き領域が増えている。
ディスクの管理画面で見ると次のようになっている。
以上でディスクの空き容量を拡大するための作業は完了だ。
システムを工場出荷時の初期状態に戻したい場合、すなわちWindows 8.1でいうところの[Windowsの再インストール]を行いたい場合、以後は作成した回復ドライブのUSBメモリをタブレットPCに接続してから初期化を実行する。回復ディスクを接続せずに再インストールしようとしてもインストール元が見つからず、エラーとなって再インストールできない。
作成した回復ドライブをシャットダウンしたMiix 2 8に接続後、電源ボタンと音量アップボタン(電源ボタンに近い方のボタン)を同時に押し、「lenovo」のロゴが表示されるまで長押しする。するとブート方法を選択するメニューが表示されるので、「System Recovery」をタップするか、「Boot Menu」からUSBメモリデバイスを選択する。
タイミングが合わずメニュー画面を出しづらい場合は、Windows 8.1の設定チャームで[PC 設定の変更]を実行する。そして[保守と管理]の[回復]画面から[PCの起動をカスタマイズする]を実行する。
この方法を選んだ場合は、その次に表示される「オプションの選択」画面で「デバイスの使用」を選び、ブートさせるデバイスとして「EFI USB Device」を選択する。
この後の作業や画面は通常の初期化シーケンスと同じなので省略するが、簡単に手順をまとめておくと次のようになる。
以上でシステムの初期化は完了である。だが、このMiix 2 8の初期化作業では、最初にあった回復パーティション(本TIPSで削除した、ディスク末尾のパーティション)の内容は元には戻らない。7GBの回復パーティションは作成されるが、中身は空のままである。回復パーティションの内容も元に戻したければ、USBメモリ上に作成した回復ドライブの内容を回復パーティションに全てコピーし(隠し属性ファイルなどもコピーする)、さらにreagentcコマンドを使って回復イメージをシステムに登録し直す必要がある。
この作業の詳細は省くが、次のようにすればよい。
まず管理者権限のあるコマンドプロンプトを開き、diskpartコマンドを実行して、回復パーティションに仮のドライブ文字を割り当てる。その後回復ドライブのUSBメモリの内容を全部コピーし、reagentcで回復イメージをシステムに登録する。コマンドは次の通りである。
diskpart ……コマンドプロンプトなどから、diskpartコマンドを起動
list disk ……目的のディスク確認。0のはず
sel disk 0 ……ディスク0を選択
list par ……パーティションを確認。回復パーティションは5のはず(サイズで確認すること)
sel par 5 ……パーティション5を選択
assign letter=R ……ドライブ文字 R: を割り当てる
exit ……diskpartコマンドを終了
xcopy /s/e/h/c d:\ r:\ ……USBメモリはD:とする
reagentc /info ……現在の状態の確認
reagentc /setosimage /path r:\sources /index 1 ……WindowsRE用イメージを割り当てる
reagentc /info ……結果を確認する
いったん回復パーティションを復元できたら、また回復ドライブを作成したり、外部の回復ドライブ(USBメモリ)なしで、Windowsの再インストールもできるようになる。
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