複数のメールアドレスを使い分けていると「このメアドはスマホだと読めない」といった具合にメールの使い勝手が悪くなりがち。そこで一切合切をGmailに集約できれば、もっとメール環境をシンプルで使いやすいものに変えられる。まずは受信メールの集約方法について詳しく説明する。
前回は、スマートフォンやタブレットなどモバイル全盛時代の今、なぜGmailがメール環境の複雑化を解消するのに役立つのか、その理由を1つずつ説明した。その中でも重要な利点として、「複数のメールサービスの『ハブ』になれる(メールを集約しやすい)」ことが挙げられる。
いまどき、用途に応じて複数のメールアドレスを使い分けるのは決して珍しくない。しかしながら、その結果として「このメールアドレス宛のメールはPCなら読めるけどスマホでは読めない」「メールアドレスによってメーラーが異なっていて使い方がバラバラ」といったように、メール環境は複雑になりがちだ。
もし、各メールアドレス宛のメールをGmailに集約し、Gmailだけでメールの受信・閲覧・作成・送信などが完結できれば、もっとシンプルになるはずだ。今後はその具体的な方法を解説していくが、今回は受信メールをGmailに集約する方法について説明する(送信や過去のメールについては次回以降で説明していく)。
あるメールアドレスに届くメールを、別のGmailのアドレスに集約するには2つの方法が考えられる。
1つ目は、メールサーバーの「自動転送」という機能を利用する方法だ。これは、あるメールボックスに届いたメールを自動的に別のメールアドレスへ転送する機能で、多くのメールサーバーが備えている。自動転送機能を利用するには、対象のメールが届いているメールサーバー(転送元メールサーバー)で、どのメールアドレスに届くメールをどのメールアドレスへ転送するか、設定する作業が必要だ。設定が完了すると、転送先(Gmail)のメールボックスには通常のgmail.com宛のメールと同様に、転送されてきたメールが受信トレイに新着として届くようになる。
2つ目は、Gmailの「Mail Fetcher」と呼ばれる機能を利用する方法だ。これはGmailのシステム自身が能動的に他のメールサーバーからメールを読み出して集めてくる機能で、メール読み出しの標準プロトコルの1つ、POP3を利用する。Mail Fetcherが有効化されると、Gmailのサーバーは転送元メールサーバーに対してPOP3のメールクライアントのように振る舞い、対象のメールアドレスに届いたメールを読み出してGmailのメールボックスに保存する。前述の自動転送と同様、いったん設定すればあとは自動的にメールがGmailのメールボックスに集まる仕組みだ。
では、どちらの方法を利用すればよいのだろうか? まず重要なのは、2つの方法の間で、転送時のタイムラグが大きく異なることだ。転送時のタイムラグとは、メールが転送元に届いてから転送先で閲覧できるようになるまでの遅延時間のことで、これが長いと新着メールが素早くチェックできない。これは自動転送の方が優れていて、メールサーバーにもよるが原則として即時転送される。Mail Fetcherでは最大で1時間以上遅延することもある。
しかし自動転送には、転送元のメールサーバーあるいはメールボックスサービスが自動転送機能を提供していない場合は全く利用できない、という欠点がある。その点、Mail Fetcherが必要とするPOP3サーバー機能はほとんどのメールサーバー/メールボックスサービスが提供している。
自動転送 | Mail Fetcher | |
---|---|---|
転送時のタイムラグ(転送元に届いてから、転送先で閲覧できるようになるまでの時間) | メールサーバー次第だが、原則として即時転送 | 数分〜数十分 |
受信トレイに残っている過去のメールの転送 | 転送できない(新着メールのみ転送可能) | 転送できる |
転送(集約)できるメールアカウント数 | 特に制限無し | 5アカウントまで |
転送するメールを転送元メールボックスに残せるか? | メールサーバー次第だが、原則として残せる | 残せる |
転送元メールサーバーに必要な機能 | メールの自動転送機能 | インターネットからアクセス可能なPOP3サーバー |
転送のための設定が必要なサーバー | 主に転送元メールサーバー | 主に転送先Gmailサーバー |
自動転送とMail Fetcherの比較 |
上表を見ると、Mail Fetcherでは受信トレイに残っている過去のメールも集約できるという点がメリットとして感じられるかもしれない(自動転送は新着メールしか転送できない)。 しかし、過去のメールをGmailに移行する方法は他にもあるので、必ずしも自動転送に不利とはいえない(過去のメールの移行方法については次回以降の解説で説明したい)。
まとめると、まず自動転送が利用できないか確認し、ダメならMail Fetcherを利用するという段取りがよいと思う。以下ではそれぞれの方法について詳しく説明する。
前述の通り、自動転送機能を利用してメールを集約するには、転送元メールサーバーで自動転送の設定をする必要がある。しかし、その手順はメールサーバーあるいはメールボックスサービスによって大きく異なる。そこで主要なISPや通信キャリアが提供しているメールボックスサービスで、自動転送を設定する方法を解説したページを下表にまとめてみた。
ISP/通信キャリア | メール自動転送の設定方法の解説ページ |
---|---|
au(KDDI) | http://csqa.kddi.com/posts/view/qid/k1112050108 |
BIGLOBE | http://email.biglobe.ne.jp/fwd/ |
eo光 | https://mail-support.eonet.jp/webmail/help/pc_usage/pc_filter/pc05_easyfoward.html |
JCOM(ZAQ) | https://support.zaq.ne.jp/cs/mail/ml_mail_fwset_01.html |
@nifty | http://www.nifty.com/mail/forward/?memp |
OCN | http://tech.support.ntt.com/ocn/mail/support/ocnmail/stepup/forward_b.html |
So-net | http://www.so-net.ne.jp/flter/ |
Yahoo Japan | http://www.yahoo-help.jp/app/answers/detail/p/565/a_id/47744/ |
イーモバイル | http://faq.emobile.jp/faq/view/102857 |
ぷらら | http://www.plala.or.jp/option/forward/ |
主要なISP/通信キャリアが提供するメール自動転送機能の設定方法の解説ページ(2014年1月時点) ISP/通信キャリアによっては、設定方法の解説ページではなく、サービス概要や利用申し込みのページにジャンプする。なお、NTTドコモ(〜@docomo.ne.jp)とソフトバンクモバイル(〜@i.softbank.jp)については、自動転送機能は提供されていないようだ。 |
いずれも基本的には、転送先メールアドレス(本稿では〜@gmail.com)と、転送元メールボックスにメールを残すか否かを指定するのが一般的である。特定の条件に合致したメールのみ転送する、といった機能を持つサービスも存在するか、本稿では不要なので説明しない。必要なら上表の各解説ページを参照していただきたい。
本稿では、転送元がGmailの場合を例として取り上げて説明しよう。
Gmailで自動転送を設定するには、送信先(転送先)から承認を取り付ける必要がある。これは、誤って別のメールアドレスに転送したり、他人のメールボックスへ勝手にメールを転送したり、といったことを防ぐために設けられている。
まず転送元GmailアカウントにログインしてGmailの画面を開く。右上にある歯車アイコンをクリックして表示されるメニューから[設定]をクリックするとGmailの各種設定をするための画面が表示される。ここで[メール転送と POP/IMAP]タブを選び、「転送」欄の[転送先アドレスを追加]ボタンをクリックし、転送先メールアドレスを入力したら、[次へ]ボタンと[続行]ボタンを続けてクリックする。
これで承認を依頼するメールが転送先へ送信されたはずだ。
次は転送先メールアカウントで作業をする。転送先メールボックスの受信トレイを開き、次のようなサブジェクトの新着メールを探す。
「(#<番号>)Gmail の転送の確認 - <転送元メールアドレス> からメールを受信」
見つけたら本文に「<転送元メールアドレス> からこのアドレスにメールを自動転送する場合は、下のリンクをクリックしてリクエストを承認してください。」という段落のすぐ下にあるURLをクリックして開く。
次のようなWebページが開いたら、承認作業は完了だ。
もし前述のURLのWebページを正しく開けない場合は、同じくメール本文に記されている「確認コード:」に続く数列をコピーし、転送元GmailアカウントのGmail画面に戻ってから、[設定]−[メール転送と POP/IMAP]タブ−「転送」欄にある確認コード入力欄にペーストして[確認]ボタンを押す。
[B]
承認作業を終えたら、再び転送元Gmailアカウントの設定画面に戻って設定を続ける。転送先メールアドレスが正しく承認されていれば、[設定]−[メール転送と POP/IMAP]タブの「転送」欄には、以下の画面のような設定項目が追加されているはずだ。まずは[受信メールを……]ラジオボタンを選択してから、その右側のプルダウンリストボックスより転送先メールアドレスを選ぶ。その次のプルダウンリストボックスでは、この転送元でメールをどのように扱うかを選択する。もし転送元に残さずに転送するなら[Gmail のメールを削除する]を選ぶ。
選択肢 | 転送元にメールを残すか? | 転送元でメールを残す場所 | 未読/既読? |
---|---|---|---|
Gmail のメールを受信トレイに残す | 残す | 受信トレイ | 未読 |
Gmail のメールを既読にする | 残す | 受信トレイ | 既読 |
Gmail のメールをアーカイブする | 残す | [すべてのメール]フォルダー(受信トレイには残さない) | 未読 |
Gmail のメールを削除する | 残さない(削除しつつ転送する) | − | − |
設定し終えたら[変更を保存]ボタンをクリックする。これで設定は完了だ。
転送元のGmail画面には、メールが別のアドレスへ転送されていることを通知するメッセージが画面上部に表示される(何者かがこっそり転送を設定してメールを盗聴する、といった行為を防ぐのが目的だ)。ちょっと邪魔だが、ログインして数分後には消える(手動では消せない)。
自動転送を止めるには、設定画面の[メール転送と POP/IMAP]タブ−[転送]欄で、[転送を無効にする]ラジオボタンを選べばよい。
次にGmailの「Mail Fetcher」を使って、転送元メールボックスからPOP3でメールを読み出してGmailに集約する方法について説明しよう。転送元メールサーバーでPOP3サーバーが利用可能な状態なら、これは転送先Gmail上の作業だけで済む。
まず転送先GmailアカウントのGmail画面を開き、右上の歯車アイコンをクリックして[設定]をクリックし、設定画面が現れたら[アカウント]タブをクリックする。次に「POP3 を使用して他のアカウントのメッセージを確認」欄の[自分の POP3 メール アカウントを追加]リンクをクリックする。「別のメール アカウントを追加」ウィザードが現れるので転送元のメールアドレスやメールサーバーなどの情報を記入していく。
以上でMail Fetcherの設定は完了だ。設定画面の[アカウント]タブに戻ってしばらく待っていると、「POP3 を使用して他のアカウントのメッセージを確認」欄に、何件のメールを何分前に読み出して、あと何通のメールが転送元メールボックスに残っているか、という情報が表示される(読み出し前は「確認中」と表示される)。
「履歴を表示」リンクをクリックすると、POP3の読み出しの履歴が直近の数回分だけ表示される。正常であれば「<読み出したメール数> 通のメールを取得しました。メールは残り <残ったメール数> 通です。」といった履歴が表示されるはずだ。
試した限りでは、Mail Fetcherによる読み出しは最新メッセージから行われる。そのため、たとえ転送元メールボックスの受信トレイに何千通ものメッセージが残っていても、新しいメッセージの方から転送先メールアドレスに届くようになる(前述のようにタイムラグはあるが)。
Mail FetcherによるPOP3読み出しの間隔はユーザーからコントロールできない。実際に試したところ、受信トレイに過去のメールが数千通も残っていた状態では3〜4分という短い間隔で読み出されていた。一方、約1日を経て過去の全メールの読み出しが完了すると、その間隔はだんだん長くなっていき、1日ほど経つと約1時間になってしまった。新着メールを素早くチェックしなければならない用途には向いていないことが分かる。
Mail FetcherによるPOP3読み出しを止めるには、設定画面の[アカウント]タブ−「POP3 を使用して他のアカウントのメッセージを確認」欄で、該当メールアドレスの右端にある[削除]リンクをクリックする。
POP3の読み出しを設定したら、メーラーなどからPOP3で転送元メールボックスを閲覧するのは避けること。メーラー側でメールボックスからメールを削除しつつ読み出すように設定してある場合、Mail FetcherによるPOP3読み出しを妨げてしまい、転送漏れが生じるためだ。
今回は、自動転送やMail Fetcherの機能を利用して、受信メールをGmailに集約する方法を説明した。この2つの方法を組み合わせれば、ほとんどのメール環境に対応できるだろう。複数のメールアドレスであっても、本稿で説明した方法で1つずつ設定していけばよい(Mail Fetcherの場合は最大5アカウントまでという制限に注意する必要があるが)。
さて次回は、受信メールを集約したGmailを前提に、そこから元のメールアドレスを差出人としてメールを送信する方法について解説する予定だ。
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