創業計画書の2ページ目は、計画を数値に落とし込むための表です。これまで説明してきた開業準備資金や運転資金をそれぞれの区分ごとに記載したもので、現時点で考えている資金の調達先を記入します。
開業準備資金を左上の「店舗、工場、機械、備品、車両など」の欄に、運転資金は左下の「商品仕入、経費支払資金など」の欄に記入します。右側には「これらの資金をどうやって調達するのか」を、区分ごとに記載します。「日本生活金融公庫 国民生活事業からの借入」という欄に書き込むのが、日本生活金融公庫への借り入れ申し込み額です。
数値計画の2つ目は、事業の見通しを数値(金額)で表わしたものです。「1カ月当たり幾らの売り上げを稼げるのか」「仕入は幾らか」「その他の経費は幾ら掛かるのか」、そして「利益は幾らか」を、「創業当初」「事業が軌道に乗った後」の2段階に分けて記入します。
この表に金額を入れるためには、第1回「資金計画の立て方」で使った表をベースに、下のような表を作って、月ごとに計画を立案するとよいでしょう。
この表は、何度も試行錯誤して書き直しながら完成形に近づけるものです。従って、PCの表計算ソフトを使うか、手書きで作るのであれば、後から修正できるように、鉛筆で記入してください。
書き方を順に説明していきましょう。
最初は思いつくまま、売り上げの金額を埋めていきましょう。
無理を承知で最初は計画してみてください。開業以降、売り上げを幾ら獲得していくのかを月ごとに記入します。上の表では3カ月分しか欄を作っていませんが、1年分を計画しておきたい場合は、12カ月分を作成して記入してください。
売り上げ原価とは、売り上げた商品・サービスの仕入値のことです。900円で仕入れた商品を1000円で売った場合、粗利益は100円(=1000円-900円)で、下記算式により「粗利率は10%である」と言います。
この「粗利益」をいかに稼ぐかが、商売の基本です。
例えば、1カ月当たり100万円の粗利益を目標にしたとき、粗利率が10%の商品Aと、粗利率25%の商品Bをそれぞれ売った場合、売り上げはどれぐらいの差が出てくるでしょうか。
A 売り上げ高=100万円÷粗利率10%=1000万円
B 売り上げ高=100万円÷粗利率25%= 400万円
Aは1000万円の売り上げを稼がないといけないのに対し、Bのように利幅の高い商品であれば、売り上げ高400万円で粗利益100万円が達成できます。このことを頭に入れた上で、自分が売ろうとしている商品・サービスの粗利率が何%なのかを考えて、売り上げ高、売り上げ原価、粗利益を記入してください。
引き続き、経費の欄に書き込んでいきましょう。経費を各項目に分けて、それぞれの月に想定される経費の額を記入します。その際に注意しないといけないのは、下記の3点です。
経費だけを見て算出するのではなく、計画表に埋めた売り上げ計画を見ながら記入してください。「売り上げ計画を達成するために必要な経費の金額が幾らなのか」を頭に浮かべながら記入することが大切です。
最後に自分の立てた数値計画をじっくりと眺めてもう一度検証してください。そして、この数値計画に異常が無いかどうかを判断しましょう。
例えば、3カ月目の売り上げが100万円で、4カ月目の売り上げが200万円と記入した場合、「1カ月で売り上げを2倍にすることが本当にできるのか」「もし2倍にするのなら、お客さまを何人増やさないといけないのか」「お客さまに対応している時間を何倍増やさないといけないのか」「何を売らないといけないのか」。そうしたことをきちんと細かく考えて、それが1カ月約30日間のうちに実行可能なのかを検証してみましょう。
次回は、開業直後に提出が必要な書類について解説します。
開業から1年目までの 個人事業・フリーランスの始め方と手続き・税金
望月重樹著
日本実業出版社 1600円(税別)
開業準備、帳簿の付け方、青色申告、資金繰り、1年目の経営分析……たった1人で開業する人が、1年目を乗り切って2年目以降の経営に弾みを付けるために、何をすべきか、どの順番でやるべきかを網羅した1冊。
望月重樹
税理士法人羅針盤代表社員。2002年税理士試験合格。税理士でありながら社会保険労務士、ファイナンシャルプランナー(AFP)、MAS監査プランナーの資格を持ち、個人事業主の経営・労務管理や起業家のスタートアップをトータルでサポートしている。著書に「わかりやすい減価償却の実務処理と節税ポイント」「わかりやすい役員給与の実務処理と節税ポイント」(ともに日本実業出版社)がある。
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