SDDCは「第3の道」を目指す人の選択肢、米ヴイエムウェアVMworld 2014

米ヴイエムウェアは8月最終週に米サンフランシスコで開催したVMworld 2014で、同社のSoftware Defined Data Center(SDDC)構想の目的が、「諦めない」ユーザー組織の支援であること、そしてこうしたユーザー組織が使える選択肢を具体的に広げつつあることをアピール、Docker、OpenStackの2つの注目される動きにも対応した。

» 2014年09月01日 07時55分 公開
[三木 泉,@IT]

 米ヴイエムウェアは8月最終週のVMworld 2014で、「Software Defined Data Center(SDDC)」構想のユーザー組織にとっての意味を改めて説明、ユーザー組織にとっての具体的な選択肢を増やす製品を発表した。

 下の記事でもお分かりいただけるように、VMware vSphereをベースとするヴイエムウェアのSDDCは、当初から比較的具体的な「構想」だ。ソフトウェアでできるだけITインフラを抽象化し、その上で仮想化されたサービスを提供する。さらにITインフラの導入と拡張の自動化、そしてサービスレベル制御の自動化を進める。ITインフラの導入や運用にかかわる面倒な作業は排除し、ユーザー組織がビジネスの言葉で、これを制御できるようにしていく。

 米ヴイエムウェアのCEO、パット・ゲルシンガー(Pat Gelsinger)氏は、今回のVMworldの基調講演で、「勇敢さ」、「Power of AND」という言葉を使ってSDDCのユーザー組織にとってのメリットを説明した。「勇敢さとは、不透明さに直面したときに決断できるということだ」。

 企業のIT運用は、不透明さを増している。従来のオンプレミス運用における課題から、クラウドサービスへの全面移行を進める企業もある。また、ある程度クラウドを使ったあとで、何らかの理由でオンプレミスに戻る企業もある。しかし、その企業がクラウドサービスに移行する原因となった課題を、オンプレミスで解決できないままなら、戻ったところでその組織がハッピーにはならない。つまり、どちらを活用するにしても、ポジティブにいえば何らかの割り切り、ネガティブにいえば何かの諦めに基づいていることが多い。

 ゲルシンガー氏が使ったPower of ANDという言葉は、日本語に訳しにくいが、「いいところ取りの素晴らしさ」といった意味だ。単純な割り切りに基づく選択で、さまざまなことを犠牲にするのではなく、あらゆるニーズを満たせるやり方を考えようとする、「勇敢な」ユーザー組織を支援したい、ヴイエムウェアは、そのための技術や製品を顧客に提供していくと、同氏は強調した。

 ヴイエムウェアがVMworld 2014で行った発表のなかで、最も象徴的なのは、仮想化アプライアンス「EVO:RAIL」だ。詳細については別記事をお読みいただきたい

 EVO:RAILは、「VMware Virtual SAN」を今年3月にリリースし、ヴイエムウェアのソフトウェアだけで、ITインフラをひととおりつくれるようになったことから実現した製品だ。ユーザー組織がVMware vSphereを使っていても、一部で感じている課題を解決するための、ヴイエムウェア流の新たな選択肢の1つといえる。

 EVO:RAILは決め打ちのハードウェア/ソフトウェア構成により、「ITインフラ製品の選択や導入設計、見積もり、機器の組み上げ、初期設定作業、検証などに時間とコストが掛かる」という課題の解消を狙っている。「運用ノウハウがない、運用が複雑化する」というニーズにも応えられる。規模の拡張作業にもエキスパートは要らない。ハードウェアとソフトウェアのライフサイクルも合致している。EVO:RAILには、プライベートクラウド構築・運用までの機能はない(vCloud Directorは含まれていない)。また、柔軟な構成やチューニングには向かない。それでも、IT調達・利用の新しいやり方という点で、1つの選択肢であることは確かだ。

2つの「中抜き」にどう対応するか

 最近、新たなアプリケーションデリバリの仕組みとして、Dockerへの支持が急速に高まっている。例えばレッドハットは、これをクラウド時代の新たな抽象化レイヤとして推進している。

そこで、Dockerのようなコンテナ仮想化が広がってくれば、ハイパーバイザ型の仮想化は不要になるのではないかという議論も出始めている。ヴイエムウェアにとっては、「中抜き」にもつながりかねない話だ。

 だが、ヴィエムウェアはコンテナ型仮想化とハイパーバイザ型仮想化は補完関係にあるとし、関係会社米Pivotalとともに、Dockerコンテナオーケストレーションツール開発プロジェクト「Kubernetes」への参加をVMworld 2014で発表した。これについても別記事でお届けするが、メディアセッションには、グーグル、Docker、Pivotalも参加。アプリケーション間の分離性を確保するには、ハイパーバイザ型仮想化が必要とし、相互に協力して企業の仮想化基盤上でのDocker利用を推進すると説明した(Kubernetesにすでに参加しているマイクロソフト、レッドハットも、ハイパーバイザ型仮想化を排除しようとしているわけではない)。

 また、OpenStackの勢いも増している。ハイパーバイザを直接オーケストレーションするOpenStackは、こちらもVMware vSphere/vCloud Directorのような製品に取って代わるものになるのではないかと言われ始めている。VMworld 2014で、ヴイエムウェアはVMware vSphereをベースとしたOpenStackディストリビューションを提供すると発表した(別記事をお読みいただきたい)。

 ヴイエムウェアは、vCenter経由でVMware vSphereをOpenStackから管理・制御できるコンポーネントを提供しており、これを利用してvSphereをサポートしているOpenStackディストリビューションはすでにある。今回新しいのは、ヴイエムウェアが自らOpenStackディストリビューションを提供すること。OpenStackへの期待に、同社として積極的に応えていくことをアピールした。

VMware vSphereのイノベーションが止まったわけではない

 上記は、VMware vSphere自体の進化よりも、その活用の仕方に新たな選択肢をもたらすものとも表現できる。だが、ヴイエムウェアは、VMware vSphereは今後さらに進化していくとアピールした。

 β版を提供中の「VMware vSphere 6.0」では、VMware FTが複数の仮想CPUで構成されるアプリケーションをサポートする。また、複数のvCenter間にまたがるvMotionをサポート。VMware NSXによるネットワーク/セキュリティのポリシーを維持したまま、仮想マシンを複数データセンター間で任意に移動できるようになることをデモで示した。

 一方、ヴイエムウェアが展開しているクラウドサービス「vCloud Air」(vCloud Hybrid Serviceから改称)も、企業向けにプライベートクラウド管理サービ予定する。

 これらの活動を通じて、「Power of AND」を求めるユーザー組織に、さまざまな選択肢を提供していくとしている。

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