.NETのWindowsアプリ開発を学びたいが、何から手を付ければよいのか? そんなときは、こんなアプリ開発から始めてみよう!
※本連載は、「簡単! Visual Studio 2010入門」「簡単! Visual Studio 2008入門」「簡単! Visual Studio 2005入門」「簡単! Visual Studio .NET入門」を現在の最新環境に合わせて改訂したものです。
前回までの解説で、Visual Studio 2013(以降、VS 2013)で開発を行うための必要最低限の知識は習得できた。よって今回は、さっそくVS 2013によるアプリ開発の実践に乗り出し、実際に「時計」のWindowsアプリ(MyClock)を作成してみよう。
まずはVS 2013のIDEを起動して、新たにプロジェクトを作成しよう。作成手順は第1回の「2. プロジェクトを新規に作成する」を参照してほしい。
本稿では、プロジェクト新規作成のときに表示される[新しいプロジェクト]ダイアログで、次のように設定を行った上でプロジェクトを新たに作成した。
項目名 | 設定内容 |
---|---|
言語*1 | [Visual C#] |
プロジェクトの種類*2 | [Windows フォーム アプリケーション] |
[名前] | 「MyClock」 |
[場所] | <デフォルトのまま> |
[ソリューションのディレクトリを作成] | ON |
[ソリューション名] | <デフォルトのまま>(=「MyClock」) |
*1 [新しいプロジェクト]ダイアログの左側のペーンに表示されるツリーで[テンプレート]の下に表示される言語から[Visual C#]を選択する。
*2 [新しいプロジェクト]ダイアログの中央のペーンに表示されるテンプレートの一覧から[Windows フォーム アプリケーション]を選択する。
以上の設定でプロジェクトを新規に作成すると、最も原始的な(=ひな型の)Windowsアプリケーションが完成したことになる。後は、プロジェクトの「ビルド(=プロジェクトからプログラムを生成する作業)」を行うだけで、プログラムが実行できることは、第1回の「3. 初めてのプログラムを実行する」で解説した。
しかし実際のアプリ開発では、第1回の「生成されたプログラムを動かす」で解説したように、このひな型のプログラムに機能を付け足していく「プログラミング」もしくは「コーディング」の作業が必要だ。
では、実際のプログラミング作業に入っていこう。
実際のプログラミング作業で最低限必要となる作業手順は次の通りだ。
それでは、この手順に従って「時計」アプリ(MyClock)を作っていこう。
最初に、「時計」アプリ(MyClock)に必要な機能について考えてみよう(この作業をソフトウェア開発の用語で「要件定義」もしくは「要求分析」と呼ぶ)。筆者は、「時計」アプリには次のような機能が必要だと考えた。
これらの機能を実現するプログラムを図示してみよう(なお、コントロールとコンポーネントについては、「改訂版 C#入門」の「Column - コンポーネントとコントロール -」を参照してほしい)。
次の図面は、先ほどの3つの機能を図で表したものである。
これが「時計」アプリの設計図となる。
実際のプログラミング作業での設計方法は、会社やプロジェクトチームによってさまざまに異なる。ほとんどの場合、本稿の例ほど単純な設計ではない。特に、C#やVisual Basic(以降、VB)のようなオブジェクト指向言語を使う開発プロジェクトでは、UMLモデリングという設計技法が用いられることが多くなっている(UMLモデリングについては「5分で絶対に分かるUML」を参照されたい)。
先ほどの設計図では、3つのオブジェクト(Windowsフォーム、Labelコントロール、Timerコンポーネント)が含まれているのが分かる。このそれぞれのクラス名やオブジェクト名は次のように決めた(筆者の独断により決めた名称である。これらの名称を個々のオブジェクトに設定する方法は後述する)。
フォーム/コントロール | クラスまたはオブジェクトの名前 | |
---|---|---|
(a) | Windowsフォーム | 「Display」クラス(Formクラスを継承した派生クラス) |
(b) | Labelコントロール | 「timeNow」オブジェクト |
(c) | Timerコンポーネント | 「secTimer」オブジェクト |
MyClockアプリで使用する3つのオブジェクト |
ここでの注意点としては、Windowsフォームの名称が「クラス名」となるのに対し、LabelコントロールやTimerコンポーネントの名称はクラスが実体化(=インスタンス化)されたときの「オブジェクト名(=オブジェクトを参照する変数名)」となることである。
それでは、以上の設計内容を基にプログラムを実装していくことにしよう。
なお、以下で解説するプログラムの前提知識としては、第3回の「.NETのコードを理解するための基礎知識」と第4回の「Visual Studio 2013のひな型コードを理解する」の内容の理解が必要である。もし、ひな型コードの理解に不安が残る場合には、もう一度おさらいに読み返すことをお勧めする。
プログラムの実装では、基本的に、前々回に説明した次の4つを主に使用する。
具体的な実装方法の解説に入る前に、その前提知識として、プロパティウィンドウの操作方法について、もう少し詳しく次の画面で示しておくことにする。
プロパティウィンドウでは、Windowsフォームやそこに配置したコントロール/コンポーネントのプロパティとイベントハンドラーを参照・設定できる。プロパティとは、フォームやコントロール、コンポーネントなどのオブジェクトの性質情報のこと(例えば、色、位置、名前など)。イベントとは、フォームなどのクラスや、コントロール/コンポーネントなどのオブジェクトが発行するメッセージのことで(メッセージについては、第4回の「Application.Runメソッドの理解」を参照してほしい)、イベントハンドラーとは、そのメッセージが発生したときに実行されるメソッドのことである(メソッドについては、第3回の「メソッドを定義するには?」および「定義済みのメソッドを使用するには?」を参照されたい)。
それでは、設計内容を基にプログラムを実装していこう。
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