Apple Watchが殺すかもしれないもの、それは……?ものになるモノ、ならないモノ(57)(1/2 ページ)

アップルが新たに発表した「Apple Watch」。小さなディスプレーから追い出されるものの筆頭は、やはり広告なのではないだろうか。

» 2014年10月06日 18時00分 公開
[山崎潤一郎@IT]
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新たなアップル製品の登場、そして

 2014年9月9日に発表されたアップルのウェアラブル端末「Apple Watch」。アップルが世に問う新ジャンルの製品としては「iPad」以来となるこの製品の発売が待ち遠しくて、胸躍らせている人は多いだろう。

「One more thing」として華々しく発表されたApple Watch

 アップルらしいおしゃれなプロモーション動画を興奮と期待に胸踊らせながら見入っていると、一つの考えが頭をもたげてきた。これが普及したら人々のiPhoneへの接触時間、つまりiPhoneの画面を見入る時間が減ってしまうのではないのか。そうなったときに、現在アプリやウェブサービスに表示されているバナー広告ってどうなってしまうのだろうか、という疑問だ。

 1.5インチと1.65インチの2つの画面サイズが用意されているApple Watchだが、3.5〜5.5インチといった画面を持つiPhoneと比較すると、画面の物理的面積はかなり小さい。発表イベントのプレゼンでは、指で画面上をピンチすると表示コンテンツが見えなくなり、最悪のユーザー体験を提供することになる、といった趣旨の話をして場内を沸かせていたが、それこそ、ここにバナー広告を表示すると、コンテンツの半分が隠れてしまうのではないかと心配になる。

 Apple Watchは、SNS、メッセージ、通話、メールはもとより、音楽、写真、地図などのアプリも全て腕時計を確認するような動作で利用できるようになる。そうなると移動中などは、iPhoneをカバンの中に入れたままという人も多くなるではないだろうか。実際、発表会では、Facebook、Twitter、Pinterestといったサードパーティ製のソーシャルメディア系アプリも紹介されている。移動中などのちょっとしたスキマ時間にタイムラインを確認する場合は、カバンやポケットからiPhoneを取り出す必要がないことは容易に想像がつく。

 サードパーティ製アプリにしても困ったことになりはしないだろうか。フリーミアムモデルが主流のアプリビジネスにとって、バナー広告は収益獲得手段の一つだ。開発者に向けにアプリ開発環境「WatchKit」の提供が予定されているそうだが、開発者が広告収益をベースとした無料アプリを作った場合、バナー広告を入れるスペースをどのように確保すればいいのだろうか。仮に、広告表示ができない場合、これまでiPhoneで稼いでいたインプレッション(広告表示回数)のうち、いくばくかは消滅することになる。

画面の物理的面積縮小は、広告ビジネスの縮小をもたらす?

 そうなると、開発者だけでなく、アドネットワークを運営する会社の収益も減少する。アプリだけでなく、広告を収益源とするWebメディアにとっても、広告のインプレッションが減ることで広告枠の価値が下落することにはならないのか。Apple Watchだけではない。他の腕時計型ウェアラブル端末も同様の機能を有しているだけに、似たような状況になりはしないのか。メガネ型のGoogle Glassに至っては、メガネのレンズに投影されたコンテンツと共にバナー広告が表示される光景を想像しにくい。

 振り返れば、ネット利用の主戦場が、パソコンからスマートフォン(スマホ)に移った時点で、広告の表示領域は極端に減少している。そして、ウェアラブル端末の登場だ。このような画面の物理的面積縮小は、ネット広告業界と広告を収益源とする無料のメディアにとって明るい未来が開けている、とはイメージしにくい。一応は、こうやって@ITというWebメディアで原稿を書く機会を与えられている筆者だけに、この分野がこの先、どうなってしまうのかと気になるわけだ。

 実際、スマホの時代になってユーザーの広告に対する“目”は厳しさを増している。ジャストシステムが2014年7月1日に公表した「スマートフォン広告に関する調査」では、広告の面積が大きいほどストレスを感じるユーザーが多いという結果が出ている。物理的に限られた面積で情報を取得したり発信したりするデバイスだけに、画面に目的外の情報が混入すると、ユーザーのストレスを一気に高めるのだろう。

 パソコンの場合は、その広大(?)な画面から、少々えげつない広告が表示されても、その部分の意識を遮断してしまえば特に違和感は覚えないし、容易にそれができる。スマホはそうはいかない。内容以前の問題で、コンテンツとはかけ離れた違和感のあるデザインで広告が挿入されるといやでも視界に入り意識せざるを得ない。そうなると「邪魔だな」「不快だな」という思いが一気に爆発する。

関連記事

スマートフォン広告に関する調査(ジャストシステム/Fastask)

https://www.fast-ask.com/report/report-smartphone-20140701.html


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