エンジニアがエンジニアとして生き残るためには、ビジネス的な観点が必要だ。ビジネスのプロである経済評論家の山崎元さんがエンジニアに必要な考え方をアドバイスする本連載。今回は新入社員の迎え方を指南する。
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本連載では、嫌いな上司や営業マンとの共存術など、社内外の人間とのかかわり方を解説してきた。今回は「新入社員」との適切な接し方を伝授しよう。
4月になると、オフィスに新入社員がやって来る。
いわゆる新卒を採用しない会社もあるし、同じ部署に何人もの「新人さん」がやって来る会社もある。少々手間が掛かる場合もあるが、彼らを迎えるのは悪くない気分だ。
オフィスのしきたりを知らない彼らの参加を迷惑に思うよりは、喜んだり、面白がったりする余裕が先輩社員には欲しい。将来にわたって心を許せるような関係の後輩は、自社の新人社員の中にしかいない。
会社にとって「新人を採用している」という事実は、ビジネスを継続していこうとする意思とそのための余裕の表れだ。中途採用しか採らない外資系企業のようなケースを除くと、数十人以上の規模の会社で新卒採用ゼロが3年以上続くと、相当の閉塞感を感じるはずだ。
新人社員を迎え入れる側は、新人が「仕事のある生活」に十分慣れるように導くことが大切だ。
能力の高い先輩社員ほど、往々にして、新人に自分と同じような高いレベルの達成目標を課したくなるものだ。しかしこれは、少なくとも相手を見てからすべきものだ。新人の能力はまちまちだし、能力的な素質が高くても新しい環境への適応に時間がかかるタイプの人もいる。最初に与える目標は高過ぎない方がいい。
ズバリ言えば、新人は(1)時間厳守(2)あいさつ(3)お金の管理の三つが最初の1年でできるようになれば、まずは必要条件を満たしていると考えていいだろう。
毎朝遅刻せずにオフィスに来ることは、新人にとって相当の努力を要する「課題」だ。筆者は強度の夜型だったので、時間が自由な学生生活から定時出社厳守のサラリーマン生活への移行に努力を要した覚えがある。
朝9時の出社刻限に対して、8時59分に会社に着くような日が毎週一、二日あった。正直に言うと、寝過ごして先輩社員からの電話で起こされて遅れて出社したことも何度かある。
「時間厳守」は出社時間だけでなく、取引先との約束、仕事の締め切りなど、多くの場面で重要だ。そもそも「会社」は人と協力して何かを行うためにあり、そのためには人と時間を合わせることが重要だ。
前日に新人を連れて夜遅くまでお酒を飲んだとしても、先輩は翌朝涼しい顔をして出社し、少々つらくても新人に対して余裕を見せるべきだ。時間を守らなければならないという意識と、そのための努力と達成の経験を持たせることが、新人の成長と戦力化のためにぜひとも必要だ。
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