嫌いな上司の対処法経済評論家・山崎元の「エンジニアの生きる道」(11)(1/2 ページ)

エンジニアがエンジニアとして生き残るためには、ビジネス的な観点が必要だ。ビジネスのプロである経済評論家の山崎元さんがエンジニアに必要な考え方をアドバイスする本連載。今回は嫌いな上司がいるときのチェックポイントとケース別対処法を伝授する。

» 2015年03月16日 18時00分 公開
[山崎元,@IT]
経済評論家・山崎元の「エンジニアの生きる道」

連載目次

 本連載「エンジニアの生きる道」ではこれまで、社内の人間とのかかわり方について、営業マン同僚との共存術を解説してきた。今回は誰もが思い当たる節があるであろう「嫌いな上司」を取り上げてみよう。

上司が嫌いな場合のチェックポイント

 エンジニアも人の子だ。上司が嫌いな場合があるだろう。職場に対する悩みで最も多いのは上司に対する不満だが、この不満はしばしば深刻なものになる。場合によっては、転職を決意すべき理由にもなる。

 上司に不満を持っている人は、以下の5つのポイントをチェックしてほしい。

  1. 上司は自分にとってマイナスになっているか
  2. 仕事の実力はどちらが上か
  3. 上司の会社内での実質的な力はどの程度か
  4. 上司か自分の人事異動の可能性はあるか
  5. 自分が転職しようとした場合の可能性はあるか

 詳しく説明していこう。

1 上司は自分にとってマイナスになっているか

 上司の仕事の与え方や評価の偏りなどにより、仕事での成長が阻害されたり、社内や業界内での評価が下がったりするような実害があるなら、急いで手を打つ必要がある。しかし、単に「上司が無能だ」とか、「人格的に尊敬できない」といったことなら、問題とするにおよばない場合が多い。

 まずは、そもそも何らかのアクションを起こすべきかどうか必要性を見極めたい。

2 仕事の実力はどちらが上か

 次に、上司と自分との会社での力関係を冷静に評価しておくべきだ。エンジニアの場合、技術に関する知識や技能でどちらが優れているかは、価値の多寡に直結するし、お互いの精神的な力関係にとっても重要な問題だろう。

 筆者が、若手のファンドマネジャーだった1980年代から1990年代にかけては、資金運用に関連する新しいテクノロジが導入されていた時代だった。若手の方がベテラン社員よりも仕事に関する知識が豊富になる逆転現象が、資金運用の現場ではしばしば起こっていた。「一対一なら、仕事では勝てる」という力関係がある場合、部下は上司の譲歩を引き出しやすかった。

 ただし、第三者の前で上司の実力のなさを暴くとか、上司に圧力を掛けるなどの行動は、上司の社内の地位、上司か自分の異動の可能性、上司の性格などを見極めた上で実行に移すべきだ。

 エンジニアは金融業界の人材よりも技術の差がはっきりしやすいし、価値観上も技術の優劣が重視されやすいかもしれない。この点で、技術に関する彼我の優劣を過大評価し過ぎるかもしれないので、注意しておきたい。

3 上司の会社内での実質的な力はどの程度か

 無能な上司でも、社内で力を持っている場合もある。「上司が社内でどのような評価を受けているか」「社内の有力者の誰と親しいか」、といった状況の把握も重要だ。

4 上司か自分の人事異動の可能性はあるか

 上司の問題は(上司から見ると部下の問題でもあるが)、「お互いに離れる」ことが、最もベーシックで有効な解決方法だ。上司か自分の人事異動の可能性も考えておく必要がある。

 ただし、「あと2、3年でどちらかが異動する可能性が大きい」場合は、判断が微妙になることがあろう。しばらく我慢して行動のリスクを回避するか、2、3年は長過ぎると見て行動に出るかは、人と状況によるだろう。

 筆者なら「確実に2年以内で異動できる」というめどが立たない限りは、転職の可能性を探りながら、上司への対抗措置を考えるだろう。これは、筆者が転職慣れしていることと、既に複数回転職していて転職の機会コスト(※)が小さいことが影響しているかもしれない。

 一生で40年働くとすると「2年」は職業人生の5%に相当する。「時間の無駄は過小評価しない方がいい」とは申し上げておきたい。

※ 機会コスト:同じリスクレベルの別の投資機会から得られるであろう収益。この話の場合は、初めて転職する人よりも転職を複数回している人の方が、「転職しない」ことで得られるだろう利益が小さいことを意味する。

5 自分が転職できる可能性はあるか

 もちろん、自分が転職できるかできないかの可能性をあらかじめ考えておくことも重要だ。上司と明確に対立した場合、転職が必要になることは少なくない。後になってから考えるのでは遅い。

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