SDNのような新しい技術が登場しても、ネットワークを支える基礎はそうそう変わりません。一度は学んだことがある「TCP/IP」。本当にふに落ちていますか? 本連載ではツールを使って、実際に手を動かし、目で見ながら、TCP/IPの仕組みを基本から「実感」していきます。
いまや「通信しないコンピューターなんてあり得ない」といっても良いくらい、コンピューターと通信は切っても切れない関係になりました。しかし、それほどまでに重要性が高いにもかかわらず、通信の説明というのは概念的になってしまいがちで、実感しながら学ぶのが難しいことが多いように思います。なるべく分かりやすい切り口で、自分の手で確かめながら通信の仕組みを学べるといいですよね。そんなことを目指して、この連載をスタートすることになりました。これまでの連載「TCP/IPアレルギー撲滅ドリル」や「セキュリティプロトコルマスター」も併せ、どうぞお付き合いいただければ幸いです。
「通信を学ぶ」という時、その多くの時間は「プロトコルを学ぶ」ことに費やすことになります。そうと聞くと冒頭から難しい話に思えるかもしれませんが、これから話すことはいたって当たり前の話ですので、心配はいりません。
プロトコルとは、一言で言えば、コンピューター同士が通信するときの通信の進め方(手順)の取り決めです。その手順はあらかじめ厳密に定められていて、通信をしたいコンピューター同士は、お互いにこの決められた手順に沿ってやりとりをします。こうすることで、相手のコンピューターの機種やOSに関係なく、お互いに情報をやりとりすることができるようになります。
人間の世界での出来事に例えると、もっと分かりやすくなります。例えば、われわれがフランス旅行に出かけて、空港や駅でホテルの場所を尋ねたいとしましょう。このとき、お互いの母国語同士(日本語とフランス語)では意思疎通ができませんが、英語という共通の言語を使えば、コミュニケーションが可能になります(図1)。
これは、お互いが「英語」という取り決めに沿って情報をやりとりすることにより、成し遂げていることです。もっと細かい部分では、音声、手話、筆談などの数ある会話手段のうち、音声という同じ手段を使っていることもまた、お互いにある共通の取り決めに沿っているものと見ることができます。
この例での「英語」「音声」は、あらかじめ決められた手順や方法です。これらをお互いに合致させる、つまりプロトコルを合致させることによって意思疎通を実現しているわけです。
ほら、見えてきませんか? 情報のやりとりを行うには、お互いが共通の手順に沿うことがとても重要です。そしてそのやりとりの仕組みを知ることは、そこで使われている手順を学ぶことにほぼイコールであることが分かるでしょう。
さて、この連載では、数あるプロトコルのうち、私たちがコンピューターを利用するときによく接するものから順に取り上げていきます。なぜならその方が、よりイメージを膨らませやすいからです。
またそれと併せて、実際に自分の手で試してみる機会をなるべく多く設けようと思います。手を動かすことは、ただ読むだけより、理解を深めることにつながります。
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