OpenStackをベースにvCPE機能を検証、商用展開を視野に――デル、ブロケードらOSCA参加企業が成果を発表CPEのクラウドサービス提供が具体化

レッドハット、デル、インテル、ブロケードというOSCAメンバー企業4社が、vCPEの商用化に向けた共同検証の結果を発表。OpenStackやLinuxなどを使ったvCPEの実用化に向けて弾みを付ける。OSCAも「OSCA 2.0」として、新たに「Software Defined X」「IoT」にも活動範囲を拡大するという。

» 2015年10月21日 08時00分 公開
[原田美穂@IT]

 2015年10月20日、レッドハット、デル、インテル、ブロケード コミュニケーションズ システムズ(以下、ブロケード)の4社は協同で、OpenStackを利用した通信およびサービス事業者向けのクラウド型NFV(Network Functions Virtualization)ソリューション商用化に向けた共同検証の結果を発表した。

 今回の検証は、通信におけるユーザー側の設備である「CPE」(Customer-premises equipment)を、キャリア側のクラウドで仮想的に実装し(vCPE)、実運用可能なレベルでのサービス提供が可能なことを示すリファレンスとして位置付けられる。

今回の検証により実現するvCPEサービスの概要 L3以上の各種機能を事業者側のクラウド環境にオフロードする

 具体的には、1台のサーバーに40インスタンスの仮想ルーター(vCPE)を集約、40Gビットのインターフェースで、各インスタンスの通信性能を1Gビット均等に維持、合計で、物理ネットワークと同等の40Gbpsの通信性能を達成している。

 「vCPEのクラウド提供が実現すれば、拠点側に必要な設備はレイヤ−2の設備(ブロケードのEthernetファブリックなど)のみで済む。ルーターやファイアウオールといったレイヤー3以降の機能はVPN(Virtual Private Network)でクラウドに接続して利用できる。CPEを各拠点構内設備として置く場合の管理運用コストを圧縮する」(ブロケード 執行役員 SDN/NFVビジネス開発本部 The New IP推進室担当 尾方一成氏)

 これまでも、同様の検証は行われてきたが、「今回の検証のポイントはリソース割り当てを“フェアに”配分した上で、ベアメタルと同等の性能を出したことにある。事業者がネットワーク機能を集約し、サービスとして提供する場合に重要な技術。従来はベストエフォートで性能を検証する段階だったが、今回の検証では一歩進んで、具体的なサービス提供が可能であるというリファレンスになるものを示した」(レッドハット アジア太平洋地区 事業開発戦略本部 テレコム&NFV チーフテクノロジスト 杉山秀次氏)という。

リソース割り当てはLinuxの仮想マシン管理用ライブラリであるlibvertの機能拡張によって実現しているという
検証環境を構成する要素

 検証環境では、レッドハットの「Red Hat Enterprise Linux」を含むOpenStackディストリビューション「Red Hat Enterprise Linux OpenStack Platform 7」(RHELOSP7)、デルのサーバー「Dell PowerEdge R630」、ブロケードの仮想ルーター「Brocade 5600 vRouter」を使用している。また、通信性能に関しては、インテルが提供する「DPDK(データプレーン開発キット)」を使い、パケット処理性能を向上させている。この他、ブロケードでは、検証環境として自社の「New IPラボ」を提供している。

 共同検証実験の技術詳細はホワイトペーパーとして公開されている。なお、これらの活動は日本のITソリューション企業らによる組織「「Open Standard Cloud Association(OSCA)」の活動の一環である。

デル、インテルら日本企業によるOSCAの第2弾の活動は「Software Defined X」「IoT」も対象に

 そのOSCAは、この発表に先立つ2015年10月13日、「OSCA 2.0」としての活動を開始した。OSCA 2.0では従来の活動範囲に加え、新たに「Software Defined X」「IoT(Internet of Things:モノのインターネット)」を活動領域に加えている。既に2015年7月にはOSCAの検証拠点としてデル東日本支社内のソリューションセンターに「Dell Bigdata/IoTラボ」を開設している。

 OSCAは下記ロゴに示す通り、日本国内のサーバー/ネットワーク/データプラットフォームベンダーやSI企業らが参加、OpenStackやApache Hadoopなどのオープンな技術を使ったデータセンター内、データセンター間の接続に関する技術検証を推進し、参加企業合同で技術検証やリファレンスアーキテクチャを発表している。

本稿執筆時点でのOSCA参加企業一覧

 直近ではミドクラやブロケードといったネットワークソリューションベンダーも参加し、性能検証や相互接続検証などの情報発信を行っている。また、2015年8月には、F5ネットワークス、デル、レッドハットの3社でOpenStackのLBaaS(Load Balancer as a Service)機能の動作検証も実施している。

 OSCA設立以来3年半の活動成果として、OSCA会長でデル執行役員の町田栄作氏は「(オープンソースのIaaS<Infrastructure as a Service>基盤ソフトウエアである)OpenStackおよびHadoop関連ソリューションの普及が進んでいる」とし、現在80社以上の企業がOSCAの活動成果を受けた何らかのソリューションを導入しているとした。

 現在進行中の検証プロジェクトとしては、オープンソースソフトウエアの分散オブジェクトストレージ「Ceph」のOpenStack環境での性能評価やDockerのI/O性能特性の検証の他、本稿冒頭で紹介したvCPE性能評価などがある。

 インテル ビジネス・デベロップメント・グループ データセンター&IoT 事業開発本部 シニア・スペシャリスト 田口英治氏は「IoT時代のITインフラでは、IoTエンドポイントセキュリティやデータ分析など、多様な能力が求められるのと同時に、それらの要素のつながりが重要になる。それゆえにソフトウエア定義型のインフラ基盤を目指す必要がある」と、同社Software Defined Infrastructure(SDI)とOSCAの活動との関連性にも言及した。

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