自社に今、そしてこれから必要なセキュリティ対策を検討する前に確認したいのが、「敵」の手口です。セキュリティ関連組織やベンダーでは、そうした時に役立つさまざまな観測結果やリポート、調査結果を公開しています。ぜひ一次ソースに当たってみてください。
標的型攻撃をはじめとする不正アクセスやサイバー犯罪、Webサイトの侵害とそれを踏み台にしたマルウエア感染など、日々さまざまな脅威が報じられ、セキュリティ対策の必要性が叫ばれています。さて、セキュリティ対策に取り組む上で大事なのは「敵を知り、己を知る」こと。何がどんなふうに危険にさらされているのかを知らなくては、対策の方針を立てることはできません。しかも攻撃の動向は継続的に変わっており、いつまでも昔の常識で考えていては裏をかかれる、ということを忘れてはいけません。
そんなときに参考になるのが、セキュリティ関連の組織やITベンダーが提供しているさまざまなリポートや調査結果です。中には定点観測網を基に毎月、あるいは四半期ごとに定期的にまとめられているものもあり、おおまかな傾向をつかむことができる他、今注目すべき手口は何かなど、参考になる情報を得ることができます。最近の例で言えば、国内でも多数の被害が報じられた標的型攻撃について深く掘り下げたガイドが公開されており、どんなステップで侵入が行われるのかを知り、欠けている対策を補う際に役立ちます。
これらリポートや調査結果のもう一つの使い方は、サイバー攻撃・犯罪によってどれほどの被害が生じる恐れがあるかを把握することです。対策を実施するとなれば、上司や経営層に必要性を訴え、しかるべき予算を確保する必要があります。このときに「このままリスクを放置するとどのくらいの被害が生じるのか」「そのリスクに対してどの程度投資を行うべきか」の目安として、調査結果で得られた被害額を使うこともできるでしょう。
最近では、こうしたリポートを元にしたサイバー攻撃関連の報道がマスメディアでも珍しくなくなりましたが、一つ、注意していただきたいことがあります。見出しにしやすい「数字」や「犯人像」だけが一人歩きしてしまうケースがあるのです。「○億件」といった大きな数値であればあるほどインパクトは大きく見えますが、その攻撃は本当に脅威なのでしょうか。数字は少なくても、本当に憂慮すべき動きが他にあるかもしれません。また、サイバー犯罪の犯人像もあれこれ取りざたされますが、検挙に至るケースを除けば、断定できるケースは多くありません。
表に出ている報道だけではなく、ぜひ一次資料に直接当たって、動向を確認していただきたいと思います(なお、これら調査結果も、インターネット全体の動向を全て網羅しているわけではなく、暗闇にサーチライトを当てて一部を把握しているに過ぎない、ということも頭の片隅に置いておいてください)。
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