「IP Anycast」って何ですか?DNS Tips

1つのIPアドレスを複数のノードで共有可能とし、サーバーの分散配置や災害対策などを実現する「IP Anycast」技術について解説する。

» 2015年12月22日 05時00分 公開

 IP Anycast(IPエニーキャスト)とは、通常はインターネット上の特定のノード(注1)に対して一意に割り当てられるIPアドレスを、特定のサービスに対して共通に割り当て可能とするための技術の呼称である。この技術を使うと複数のノードで1つのIPアドレスを共有することができ、サーバーを分散配置することが可能になる。

 広域ネットワークにおけるIP Anycastは、経路制御技術との組み合わせにより実現される。経路制御技術を適切に使用することにより、インターネット上に同一のIPアドレスを持つ複数のノードが存在していても、利用者から見てネットワーク的に近い(参照:「ネットワーク的に近い」とは何を指すのか、今後公開予定)位置にある適切なノードが選択される。

図1 IP Anycastでは、ネットワーク的に近いノードに届く 図1 IP Anycastでは、ネットワーク的に近いノードに届く

 あるゾーンを管理する権威DNSサーバー数は、プロトコル上の制約(参照:「DNSにおけるUDPの制限って何ですか?」)により上限がある。

 IP Anycastを適用することにより、この制限の範囲内でDNSサーバー数を増やすことが可能となり、かつ、災害やDDoS攻撃などによる障害の影響を局所化・緩和することが可能となる。

 IP Anycastは、RFC 1546により定義されている。また、DNSサーバーへのIP Anycastの具体的な適用方法についてはRFC 3258に記述されているので、興味がある方はそちらも参照するとよいだろう。

注1:ネットワークを構成する個々の要素、すなわちコンピューターやルーターなどのことである。


米谷 嘉朗(よねや よしろう)

所属:株式会社日本レジストリサービス (JPRS) 技術研究部

1999年から国際化ドメイン名(Internationalized Domain Name)の標準化にたずさわる。2003年にJPRS入社。IDN・EAI(Email Address Internationalization)等識別子国際化の活動、DNSに関連するコミュニティ活動に従事。IETF precis WG前共同チェア、DNSOPS.JP幹事。

著書・執筆:RFC 5504


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