1つのIPアドレスを複数のノードで共有可能とし、サーバーの分散配置や災害対策などを実現する「IP Anycast」技術について解説する。
IP Anycast(IPエニーキャスト)とは、通常はインターネット上の特定のノード(注1)に対して一意に割り当てられるIPアドレスを、特定のサービスに対して共通に割り当て可能とするための技術の呼称である。この技術を使うと複数のノードで1つのIPアドレスを共有することができ、サーバーを分散配置することが可能になる。
広域ネットワークにおけるIP Anycastは、経路制御技術との組み合わせにより実現される。経路制御技術を適切に使用することにより、インターネット上に同一のIPアドレスを持つ複数のノードが存在していても、利用者から見てネットワーク的に近い(参照:「ネットワーク的に近い」とは何を指すのか、今後公開予定)位置にある適切なノードが選択される。
あるゾーンを管理する権威DNSサーバー数は、プロトコル上の制約(参照:「DNSにおけるUDPの制限って何ですか?」)により上限がある。
IP Anycastを適用することにより、この制限の範囲内でDNSサーバー数を増やすことが可能となり、かつ、災害やDDoS攻撃などによる障害の影響を局所化・緩和することが可能となる。
IP Anycastは、RFC 1546により定義されている。また、DNSサーバーへのIP Anycastの具体的な適用方法についてはRFC 3258に記述されているので、興味がある方はそちらも参照するとよいだろう。
注1:ネットワークを構成する個々の要素、すなわちコンピューターやルーターなどのことである。
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