グローバルを股に掛けたキャリアを築いてきたIT業界の先輩にお話を伺うシリーズ。今回は台湾を代表するIT企業Acerで、BYOC部門を統括するMaverick Shih氏に、IoTの可能性や、アジアの島国からグローバルに打って出るときに必要なマインドを伺った。
アップルやディズニーなどの外資系企業でマーケティングを担当し、グローバルでのビジネス展開に深い知見を持つ阿部川“Go”久広が、グローバルを股に掛けたキャリアを築いてきたIT業界の先輩にお話を伺うインタビューシリーズ。第5回は、台湾を代表するIT企業「Acer(エイサー)」のBYOC(Build Your Own Cloud)ビジネスグループ社長 Maverick Shih(マーベリック・シー)氏だ。
台湾で生まれ育ち、米国の大学に進学し、卒業後はエンジニアとしてテクノロジ企業に就職して数々の特許を取得したシー氏。現在は母国でクラウド事業の推進に専念しているシー氏のキャリアの変遷は、台湾と同じくアジアの島国である日本のエンジニア読者の参考になるだろう。
阿部川“Go”久広(以降、阿部川) 本日はお時間を頂き大変ありがとうございます。最初に、エイサーのBYOC事業の内容や目的についてご説明ください。
Maverick Shih(マーベリック・シー:以降、シー氏) BYOCは、エイサーのクラウド事業の一つです。他社のクラウドサービスとの違いは、顧客が自身のデータを自ら持つという点で、「スマートホーム」「ヘルスケアサービス」「コミュニケーション」「コネクテッドカー」の四つの分野に焦点を当てています。
ヘルスケア分野について具体例をお話ししましょう。私たちは、医療画像システム企業と、救急患者の症状を救急車の中で観察できるシステムを共同で開発しています。
従来は、救急患者の搬送時は、救急車が病院に到着してから医師が症状を確認し、救急救命のためのチームを組織して診察を開始しました。しかし私どものBYOCを活用すれば、救急車内で患者の症状を観察し、データをクラウド上に置けるので、医師は救急車が到着する前にデータを見て症状を把握し、適切な処置や治療のためのチームを組織できます。テレビドラマ「ER」では、救急車が到着すると病院内は非常に混乱していました。しかしBYOCを利用すれば、効率的な診断ができるのです。
台湾では法律の関係で、患者のデータを一般のクラウドに載せることはできません。しかしBYOCを用いれば、ユーザーは自分のデータにオーナーシップ(所有権)を持てるので、私たちに「自分のデータをどこに置いて」と指示することもできますし、自分でサーバーを持つこともできますし、サーバーをレンタルすることもできます。これが医療分野における、BYOCの大きな可能性の一つです。
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