主催者にとって、コストを掛けないで会場のネットワークを構築してくれるCONBUがありがたい存在であるのは分かった。では、CONBUメンバーたちのモチベーションは一体どこから来るのだろうか? 東松氏は、「自己研鑚」と即答する。なるほど、会社でスマートフォンアプリを開発しているプログラマが、アフター5や週末にも自宅で自分の好きなアプリを開発するのと似たようなものというわけだ。
CONBUの活動では、「新しい技術など、業務上では実施できないようなことにもトライできる」(高橋氏)し、「生きたネットワークを経験できることが大きい」(田島氏)という。「生きたネットワーク」というのは、多くの人が多種多様な端末やアプリケーションを利用して実際にトラフィックを発生させる状況のことをいうそうだ。
実際、会場内のWi-Fiは、建物の構造、接続端末の数、人の移動などにより、予測のできない「カオス」の状態になる。それゆえに、「業務では経験できないノウハウをためることができる」(熊谷氏)。CONBUという形態で組織化したのも、「個人に蓄積しがちなネットワーク構築・運用のノウハウを共有して継続的に蓄積するため」(田島氏)なのだという。
「これまでトラブルが皆無であったことはない。毎回なんらかの問題が発生している。しかし、トラブルに気付かれることなく、なんとかリカバリーしながら運用してきた」(田島氏)
そんなCONBUメンバーに思い出深いトラブルの具体例を聞いたところ「あるユーザーが使っていた特定のプロトコルを利用したVPNが通らず、苦労したことがあった」(高橋氏)そうだ。これに対しては、夜間にデバッグを実施し、翌日には問題なく使えるようにしたのだという。
それにしても、「自己研鑚」のためとはいえ、事前の準備や当日のトラブル対応はさぞ大変であろうに、あえて無報酬でその苦労を背負い込む姿勢には敬服する。「この人たちは本当にネットワークが好きなんだなあ」などと、インタビューしながらぼんやりと考えていると、「ネット系のカンファレンスや勉強会に参加する人は、インターネットが好きな人ばかり。大好きなインターネットに接続できないような状況だけは作り出したくない」と岡田氏が熱い思いを語ってくれた。
また田島氏に言わせると、自己研鑚以外にも「異なるレイヤーの技術者と出会えること」も最大の価値の1つなのだそうだ。ネットワークエンジニアの世界では、横のつながりは比較的多いそうだが、Webやアプリケーション系の技術者との交流はあまり盛んではないのだという。CONBUの活動を通じてさまざまな出会いがあり、「多様な人脈が作れることが最大の財産」と東松氏は胸を張る。
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