CONBUの存在を知ったとき、筆者には1つ大きな疑問があった。「アクセスポイントなど、ネットワーク構築に必要な機材はどうやって調達しているのだろう?」という疑問だ。大人数の接続に耐えうる機器は安くはないはずだ。
これについて熊谷氏は、「アクセスポイントなどは、ヤフオクを使って中古の機材を自分たちで購入する。業務用の機材は安価に購入できる場合も多い」と答えた。つまり、メンバーの“私物”を持ち込んでいるというわけだ。ただし、LANケーブルの総延長が長くなるような場合などは、そうした消耗品的な機材は「主催者側にお願いして用意してもらうこともある」(熊谷氏)という。
また、もう1つ気になるのが、会場のアクセス回線だ。バックボーンは固定回線であるだけに、さすがに自前で持ち込むというわけにはいかないだろう。これについて高橋氏に聞くと、「会場のアクセス回線は、フレッツ光で十分対応可能」だという。
例えば、2015年8月にビッグサイトで開催された「YAPC::Asia Tokyo」では、来場者約2500人、同時接続端末数は約1200台にも及んだそうだが、「最大時の負荷は200Mbps程度だったが、回線がボトルネックとなって通信品質が劣化するということはなかった」と高橋氏は言う。なるほど、大方のカファレンス会場であれば、フレッツ光などの光回線は既に導入済みなので、それを利用すれば十分というわけだ。
また、「イベントの日程とiOSのアップデート日が重なった」こともあったそうだ。このときのイベント主催者に別途話を聞くと、主催者サイドでは「会場でのアップデートはお控えください」といった「お願い」を参加者に呼び掛けることを考えたそうだが、CONBUのメンバーたちは「いや大丈夫です。ネットワークは使われてナンボですから」と言って特に何もしなかったのだそうだ。「彼らのプロ意識には驚きました」とは、そのときの主催者の弁。
大本氏によれば、むしろ「バックボーン回線の部分より、無線LAN区間での干渉や混雑によるスループット低下が問題になることの方が多い」という。そのため、CONBUではアクセスポイントの設置方法についてひと工夫を凝らしている。なんと、アクセスポイントを譜面台の上に設置するのだ。
「アクセスポイントと譜面台」、この奇妙な組み合わせは、「高さと角度を調整でき、かつ、安価に入手できる」(熊谷氏)という理由からきている。では、「高さと角度調整」は、どうして必要なのだろう? 「会場が混雑してくると譜面台の高さ調整機能を利用してアクセスポイントの高さを下げることがある。そうしてアクセスポイントの電波の到達範囲をコントロールしつつ、追加でアクセスポイントを設置することで、干渉を防ぎながら端末の接続可能台数を増やすことができる」(大本氏)のだそうだ。
話を聞いていると、アクセスポイントの設置方法についても随分ノウハウが蓄積されていることがうかがえる。また、設営時に電波の状態を計測する機器もあるそうだが、「Wi-Fiの電波の飛び具合は、入場者たちの状態で大きく変わるので予測できない。現場で経験則に従って対応するしかない」(熊谷氏)という。一説には、人体の約6〜7割は水分だといわれるが、水は電波を吸収するため、人がいる状態とそうでない状態とでは、電波の状況も大きく変わるのだろう。
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