拡張現実(AR)用ヘッドマウントディスプレイ「HoloLens」のエミュレーターを使ってHoloLens用アプリの作り方を解説する本連載。初回は、その概要と環境構築方法、基本的な使い方について。
マイクロソフトの拡張現実(AR)用ヘッドマウントディスプレイ「HoloLens」のエミュレーターを使ってHoloLens用アプリの作り方を解説する本連載。
初回は、HoloLensの概要やOculus Riftとの違い、HoloLens Emulatorの概要、環境構築、基本的な使い方を解説する。
マイクロソフトの拡張現実(AR)用ヘッドマウントディスプレイ(HMD)「Microsoft HoloLens」(図1)が、2016年3月30日に出荷された。対象地域は北米(アメリカとカナダ)で、価格は3000ドル(4月13日現在、約32万円)だ。
「Microsoft HoloLens」はコンピュータを内蔵したHMD。OSにはWindows 10を搭載しており、サングラスのような構造をしている透過ディスプレイに映像コンテンツを表示して、現実の世界を拡張するものだ。
では、HoloLensを装着すると、一体目の前に何が見えるのか、大変に興味のあるところだ。どんな世界が広がるかは下記動画で紹介されている。
日本での発売時期は未定だが、マイクロソフトの年次カンファレンス「Build 2016」では、日本航空(JAL)がパートナー企業になるという話もあったので、近い将来には日本での発売もあるかもしれない。
では、以前から開発者の間で流行している「Oculus Rift」とはどこが違うのか。下記動画は、Oculus Rift内で見える世界と現実世界の動きが並んで見えるので、分かりやすいかもしれない。
このように、Oculus Riftは仮想現実(バーチャルリアリティー:VR)向けのHMDであって、HoloLensとは根本的に異なっている。HoloLensはバーチャルな世界を体験するものではなく、自分の思い描くもの全てをあたかも、自分の目の前に存在するかのように表示させるものだ。例えば、現実世界に、人体の内部を表示させたり、インターネットの画面を見せたり、妖精やモンスターなどのキャラクターを表示させたり、天体ショーを目の前で展開させたりすることができる。拡張現実(AR)の典型なのだ。また、HoloLensが実現する世界はMR(Mixed Reality)などとも呼ばれている。
Oculus Riftは、より没入感を突き詰めて作られており、現実とは別の世界に人を連れていくものだが、HoloLensは現実世界を拡張するもののため、Oculus Riftよりはエンタープライズ用途を想定しているものといえるだろう。先に挙げたJALがどのようにHoloLensを活用するのかはまだ不明だが、おそらく、より没入感が必要となるフライトシミュレーターではなく、機体の製造過程で活用されるのではないだろうか。
HoloLens用アプリの開発環境としては、現在のところ、Visual Studio 2015 Update 2やUnity(さまざまなプラットフォームに対応したゲーム開発環境)が挙げられる。例えば、Unityで作成したキャラクターを、HoloLensを通して現実世界の中で動かすことができるのだ。
しかし、3000ドルという決して安い価格ではなく、まだ北米だけの販売ということもあって、日本の開発者にはまだ身近な話ではないと思われてしまうかもしれない。しかし、マイクロソフトは無料で使用できる、Microsoft HoloLens Emulatorも3月30日に公開した。
HoloLensの端末を持っていなくても、HoloLens用のアプリが開発可能な、デスクトップ版のHoloLensエミュレーターだ。「Build 2016」において、HoloLensの発売と同時に、この「Microsoft HoloLens Emulator」の公開も発表された。
HoloLens Emulatorでは、Windows Universal Platform(UWP)やUnityで作成したプロジェクトを、このエミュレーターに配置して疑似的にHoloLensの体験ができるようになっている。このエミュレーターが起動した画面が図2だ。
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