Apache Sparkとは何か――使い方や基礎知識を徹底解説Amazon EMRで構築するApache Spark超入門(1)(2/3 ページ)

» 2016年08月24日 05時00分 公開
[川原仁人コラビット]

Spark 2.0のインストール

 Sparkがどんなものかを体験するため、インストールして実際に処理を実行しながら学んでいきましょう。

 公式サイトのダウンロードページから2.0.0を選択してダウンロードしてください。パッケージタイプは「Pre-built for Hadoop 2.7 and later」でOKです。

 ダウンロードしたものを展開すると「jars」ディレクトリ以下には依存のjarファイルが入っています。そして、「lib」ディレクトリ以下にjarファイル、「bin」「sbin」ディレクトリ以下には、実行スクリプトが配置されているはずです。この実行スクリプトを使うことで、対話型で分析したり、記述したアプリケーションを実行したりすることができます。

 主要なスクリプトを下記に挙げておきます。

  • spark-submit:実装したアプリケーションを実行するためのスクリプト。spark-shell、spark-sqlなども中身はこのspark-submitを使用している
  • spark-shell:対話型に処理を実行できるツール
  • spark-sql:sparkの計算をsqlで実行できるツール
  • pyspark:Pythonで記述したSparkアプリケーションを実行することができるツール。対話型でも実行できる
  • sparkR:統計言語RからSparkを利用できるツール

 本稿では、この中からspark-shellを使っていきます。

Sparkの処理を実行してみる

Sparkスタンドアロンモードを試す

 Sparkのクラスタは1つのマスターと複数のワーカーで構成されています。

 クラスタ起動スクリプトが用意されているので、試しにローカル機でマスターとワーカーを立ち上げてみます。

 まず、マスターを立ち上げるために、展開したディレクトリに移動して下記のコマンドを実行します。

./sbin/start-master.sh

 「starting org.apache.spark.deploy.master.Master, logging to ...」と表示され、ログのパスも確認できます。

 もし、「localhost: ssh: connect to host localhost port 22: Connection refused」というメッセージが表示された場合は、リモートログインの設定の変更が必要なので確認してみてください(Macの場合は必要です)。

 Sparkには処理の状況が確認できる便利なWebのユーザーインタフェース(以下、WebUI)があり、クラスタやマスターの詳細を確認できます。

 WebUIを使うには、下記のURLにアクセスしてみてください。

  • http://localhost:8080/

 ページ内には、マスターのURLやREST URL、Alive workersなどが表示されているはずです。もしページにアクセスできない場合は、起動に失敗している可能性があるので、ログを確認して見てください

WebUIの表示例(赤枠部分がマスターのURL)

 次に、ワーカーを立ち上げます。本番運用では別ノード上で行うものですが、今回は、ローカル内で立ち上げます。引数に先ほど立ち上げたマスターのURLを指定してください(マスターのURLは前述のWebUIで確認できます)。

./sbin/start-slave.sh {マスターのURL}

 うまく立ち上がると、WebUIの「Workers」にも追加されます。

 クラスタ起動スクリプトは他にもあり、マスターとワーカーを一気に立ち上げるものや、設定ファイルに記載のワーカーを一気に立ち上げるもの、それらを停止するものなどがあります。

  • sbin/start-master.sh:マスターのプロセスを立ち上げる
  • sbin/start-slaves.sh:設定ファイルに記載のワーカープロセス群を立ち上げる
  • sbin/start-slave.sh:ワーカーのプロセスを立ち上げる
  • sbin/start-all.sh:マスターとワーカーを同時に立ち上げる
  • sbin/stop-master.sh:マスターのプロセスを停止する
  • sbin/stop-slaves.sh:ワーカーのプロセスを停止する
  • sbin/stop-all.sh:マスターとワーカーのプロセスを停止する

 自分自身でクラスタを構築する場合は、ホスト名やポートなどを指定して各サーバ上でこれらのスクリプトを実行する必要があります。

 停止したい場合は、下記のコマンドで終了させることができます。今回は引き続き立ち上げたクラスタを使っていくので、立ち上げたまま次に進みましょう。

sbin/stop-all.sh

spark-shellの実行

 先ほど立ち上げたクラスタにspark-shellでつなげてみましょう(--masterのオプションにはマスターのURLを指定してください。マスターのURLは前述のWebUIで確認できます)。

./bin/spark-shell --master {マスターのURL}

 下記のような表示が出てきたら、準備OKです。

 ちなみに、先ほどのWebUIの「Running Applications」にNameが「Spark shell」となっている行が追加されているはずです。

 spark-shellで下記のScalaのコードを実行してみます。これは、1から1000の数値をそれぞれ2倍にした数値を足し上げる処理です。処理は、10のパーティションに分けています。パーティションとは並列実行可能なデータの単位です。

sc.parallelize(1 to 1000, 10).map(_*2).reduce(_+_)

 早速、計算結果の数値が返却されたと思います。これくらいの計算量であれば、すぐに終わります。

 では、ちょっと時間のかかりそうな処理に変更してみましょう。1000までではなくIntの最大値を指定してみます。

sc.parallelize(1 to 2147483647, 10).map(_.toDouble*2).reduce(_+_)

 筆者の環境だと1分ちょっとかかりました。

 このように計算量が多くなると、処理に時間がかかってしまいます。しかし、複数台のクラスタ上で実行した場合は、複数のノードで並列実行されますので、もっと早く終わることが期待できます。

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