では「統計量」を考慮して、結果の数字を見てみましょう。
今回は「R言語」を使って、二群の比率の差の検定を行います。
> prop.test(c(1000, 1500), c(5000, 5000)) 2-sample test for equality of proportions with continuity correction data: c(1000, 1500) out of c(5000, 5000) X-squared = 132.8, df = 1, p-value < 2.2e-16 alternative hypothesis: two.sided 95 percent confidence interval: -0.11706025 -0.08293975 sample estimates: prop 1 prop 2 0.2 0.3 > prop.test(c(12, 10), c(5000, 5000)) 2-sample test for equality of proportions with continuity correction data: c(12, 10) out of c(5000, 5000) X-squared = 0.045555, df = 1, p-value = 0.831 alternative hypothesis: two.sided 95 percent confidence interval: -0.001636569 0.002436569 sample estimates: prop 1 prop 2 0.0024 0.0020
ここから分かったことを、先ほどの表に追加します。
指標 | A | B | AとBの比較 | p-value | AとBの信頼度 |
---|---|---|---|---|---|
リンクの表示回数 | 5000 | 5000 | . | . | . |
PV | 1000 | 1500 | 66.67% | 2.20E-16 | 信頼できる |
数学をもっと勉強しようと思った人の数 | 12 | 10 | 120.00% | 0.8 | 全く信頼できない |
先ほどの結果に加え、PVはBの方が高いが、数学をもっと勉強しようと思った人の数はAとBで差があるとはいえない。効果を判断するには、「もう少しテストを続ける必要」があり、「もっとたくさんのリンク表示回数が必要」ということが分かりました。
「数学をもっと勉強しようと思った人の数」は簡単には比較できない数字なので、KPIとして定めるのは正しくなかったことも分かりました。
インターネットを通じてサービスを提供すると、「データ量」が増えます。データ量が増えてもユーザーに気持ちよくサービスを使ってもらうためには、「速度」を意識しなければなりません。力を発揮するのが、数学です。
本記事の命題「エンジニアに数学が必要なのか」についての私の解は、「数学の知識があれば、活躍できる機会が増える」です。「数学ができないと困る」というよりも、「できると仕事の幅が広がる」と思います。
なお、私が考える「数学ができるかどうか」は、「方程式が分かるかどうか」ではなく、一緒に議論できるかどうかです。数字に基づいて自分の考えていることを説明できると、より仕事が面白くなるでしょう。
Wantedly 執行役員 エンジニア 久保長 礼
ユーザグロースとiOSの開発をリードしたのち、現在はWantedly Visitの開発チームのリーダおよびプロダクトマネジメントを担当しています。
ブログでは、「技術」「ビジネス」「スタートアップ」をテーマに、「技術面接を受ける前に確認しておくといいこと」や「就活生に伝えたいスタートアップで働くということ」「サブスクリプション型のビジネスはさらに加速する」など、さまざまなことを書いています。
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