詳細は省きますが、最近、立ち上げから関わっていた仕事を突然切られるという経験をしました。その理由が理不尽だったので、正直とても悔しく、残念な気持ちになりました。
かつての私だったら、相手を「あの野郎!」と憎み、恨み節になったことでしょう。ひょっとしたら、「私の何がいけなかったのだろう?」と意識を過去に向けて、ネガティブ思考のループに入っていたかもしれません。
けれども、今回は違いました。比較的落ち着いていて、「まぁ、ダメになったものは仕方がない」と事実を受け入れ、「これも、次に行けっていう合図かもしれないな」と、未来志向の解釈を付けることにしました。
だからといって、悔しさがゼロになったわけではもちろんありません。しかし、少なくとも、過去に引きずられ、感情的になった時間は、かつてに比べると少なかったような気がします。また、「今、やるべきことは何か」を考えて、前向きな行動へとつなげることもできました。
ネガティブだと思っている出来事に、ポジティブな解釈を付ける方法は、それほど難しくありません。体験した出来事に、次の言葉をつなげて考えてみてください。
××のおかげで
××だからこそ
例えば、先に紹介した「今まで一生懸命取り組んできた仕事を突然切られて、すごく悔しい」なら、「今まで一生懸命取り組んできた仕事を突然切られた」という事実と、「すごく悔しい」の解釈に分けた後、次のように考えてみます。
今まで一生懸命取り組んできた仕事を先方の都合で突然切られたおかげで……
今まで一生懸命取り組んできた仕事を先方の都合で突然切られたからこそ……
だからといって、気持ちがサクッと前向きにポジティブになるわけではありませんし(怒りの感情が強いときほどそうですよね)、「感情的になっているときに、そんなこと考えられるわけがないだろう」と思うかもしれませんが、「事実」と「解釈」を分けるだけでも、「別に、自分が悪いわけではないな」と少し冷静になれます。
また、「おかげで」や「だからこそ」は、意識を過去から未来に向ける効果があります。感情は意識と連動して変化するので、ネガティブな感情をポジティブな原動力に変えるきっかけになります。
仕事をしていると、嫌なことや苦しいことがたくさんありますよね。
そういうことがないのが1番良いけれど、ゼロにするのは現実的に難しい。また、起こってしまった出来事をなかったことにはできません。
しかし、事実に対する解釈なら、変えられる可能性があります。だからこそ、どんなネガティブな出来事にも可能性を見いだせるのです。
ストレスフルな職場でエンジニアが心穏やかに働くための感情コントロールについて、6回にわたって説明してきました。
私自身、感情的になることはしばしばあります。なかなかいい状態を取り戻せないこともたくさんあります。
けれども私は、感情を抱くことを悪いことだとは思いません。感情を抱くからこそ、「喜び」を感じられるのですし、ネガティブな感情を抱くということは、その背景に「本当は○○だったらいいのにな」という「理想」が必ずあるはずだからです。
感情的になったときは、「本当は何がしたいんだろう?」「本当はどうありたいのだろう?」とよく考えます。それが、自分自身を知るきっかけになっています。
また、感情を拒否する姿勢から受け入れる姿勢に変えることで、自分とうまく付き合えるようになりました。ストレス耐性も上がり、心が強く、柔軟にもなりました。
感情コントロールは、自分を良い状態に保ち、整えるための術です。仕事は毎日の営み。感情コントロールができれば、良い気分で働く時間が増えるし、仕事もうまくいくと思います。
皆さんに楽しく働いてほしいと願って、筆を置きます。
竹内義晴著 すばる舎 1566円(税込み)
自分の「感情スイッチ」を探し、より実践しやすい感情スイッチの切り替え方を、[気付く→受け入れる→鎮める→切り替える→活かす]の5つのステップで紹介していく
書籍「感情スイッチを切りかえれば、すべての仕事がうまくいく。」では他にも、感情コントロールの理論と実践しやすい方法を紹介しています。
しごとのみらい理事長 竹内義晴
「仕事」の中で起こる問題を、コミュニケーションとコミュニティの力で解決するコミュニケーショントレーナー。企業研修や、コミュニケーション心理学のトレーニングを行う他、ビジネスパーソンのコーチング、カウンセリングに従事している。
著書「感情スイッチを切りかえれば、すべての仕事がうまくいく。(すばる舎)」「うまく伝わらない人のためのコミュニケーション改善マニュアル(秀和システム)」「職場がツライを変える会話のチカラ(こう書房)」「イラッとしたときのあたまとこころの整理術(ベストブック)」「『じぶん設計図』で人生を思いのままにデザインする。(秀和システム)」など。
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