Microsoft Build 2018 vs. Google I/O 2018[機械学習視点]: FPGA vs. TPU、ML.NET vs. ML Kit気になるニュース&ネット記事

2018年の年次開発者向けカンファレンスがマイクロソフトとグーグルでほぼ同時期に開催され、両者とも今年はAIを軸に新機能や事例が紹介されている。特に機械学習の観点でそこで発表された主要ニュースをまとめる。

» 2018年05月09日 05時00分 公開
[一色政彦デジタルアドバンテージ]

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 今週はマイクロソフトとグーグルの年次開発者向けカンファレンスが開かれており、両社とも、AIを製品のあらゆる場所に組み込んだ内容が多数発表されている。この記事では、特に機械学習という観点でニュースを取りまとめてみた。

大型デベロッパーカンファレンスの方向性

 まずはその概要を紹介しよう。次の節からカテゴリごとに個別の発表内容も紹介していく。

Microsoft Build 2018の概要

 まずはマイクロソフト主催のBuild 2018から。基本的な方向性としては、ここ数年と同じく“Intelligent Cloud, Intelligent Edge”(クラウド+AIと、IoTエッジデバイス&MR+AI)ビジョンに基づいて、新機能や事例などが紹介されたというのが筆者の印象である。詳しくは下記の記事を参考にしてほしい。

 また、面白いところでは、昨年生産を終了していたKinectがAzure AIが利用可能なエッジデバイスとして再提供されることが発表され、一部のファンが喜んでいる。提供時期についての説明はなかったが、下記リンク先の公式サイトで連絡を受け取る手続きが行える。

Google I/O 2018の概要

 次に、グーグル主催のI/O 2018。こちらも、大きな方向性としてはマイクロソフトと同じように思えた。ただし、グーグルにはAndroidがあり、こちらを軸に最新のAI技術やIoTを活用する新機能が多く発表されたという印象を筆者は持っている。

 新しいAI/ML技術に刷新した事例としては、例えば下記リンク先に示されている、新しい“Google News”がある。これはAndroid/iOS向けに提供されている既存の“Google Play Newsstand”や“ Google News & Weather”といったアプリ、およびWebの“Google News”を置き換えるものである。すでに展開開始しているが、127カ国全員が利用可能になるのは次週としている。

AIハードウェア: 機械学習専用プロセッサー

 各社のクラウドプラットフォーム上で利用できる機械学習用のプロセッサーについても両者それぞれに発表があった。

Microsoft Azure: FPGA

 マイクロソフトは、2017年8月22日にリアルタイムAI処理のための“Project Brainwave”を発表していた。今回のBuild 2018では、そのプレビューが公開されており、この“Project Brainwave”では(GPUではなく)FPGAが採用されているという。

Google Cloud Platform: 新“TPU”

 一方のグーグルは、ご存じのとおり、TPU(Tensor Processing Unit)という独自設計の機械学習処理用プロセッサーを、GCP(Google Cloud Platform)向けにすでにベータとして提供開始している。今回のI/O 2018では、その第3世代となる「TPU 3.0」が発表された。

機械学習用のライブラリ/ツール

 両イベントでは、機械学習用のライブラリやツールも発表、公開されている。

Microsoft: ML.NETライブラリ

 まずマイクロソフトからは、.NET&C#開発者のための機械学習(ML)ライブラリが公開されている。オープンソースで、Windows/Linux/macOSのクロスプラットフォーム対応。現時点では「まだ開発段階」とのことだが、GitHubから参加して、開発をヘルプしてくれることを求めている。

 ちなみに、これは従来から提供されているCognitive Toolkit(CNTK)とは別物である。念のため。

 ML.NETは、(恐らく.NETから利用できる)TensorFlow/CNTK/Light GBM/Accord.NETといったライブラリをサポートする、拡張可能なフレームワークとしても機能する(このExtensions機能はまもなく登場予定とのこと)。機械学習ライブラリにおける「1つの共有API」といったポジションを目指しているようだ。これに対して筆者は、(このExtensions機能の実物がないので正確には分からないが)「TensorFlowなどをバックエンドに使える“Keras”のような機能」というイメージを持っている。

 また、説明不要だと思うが、Windows MLとも別物である。2018年3月に発表され、使えるようになっているWindows MLは、アプリケーションで訓練済みの機械学習モデルを使用するためのものである。一方、ML.NETは、カスタムの機械学習モデルを作成するためのものである。

Google: ML Kit

 次にグーグルからは、iOS/Android開発者のための機械学習キットが公開されている。この機能はFirebase上で利用できる。キットの内容としては、

  • 画像キャプション(ラベリング)
  • テキスト認識(OCR)
  • 顔認識
  • バーコードスキャニング
  • ランドマーク認識
  • スマートな返信(もうすぐ提供予定)

といった機械学習モデルを組み込める基本APIが提供されていることに加えて、基本APIではカバーできないものについてはTensorFlow Lite形式の独自モデルを組み込める機能を提供してサポートする。

 グーグルはこれまでも機械学習のモバイル最適化に尽力してきており、この点がマイクロソフトのAI戦略とは一線を画していて面白い。もちろんマイクロソフトもIoTエッジデバイス方面へのAI機能搭載に力を入れているわけだが、その注力の仕方はグーグルの方が集中的であるように見える。

その他の関連ニュース

“Google Research 部門”を“Google AI”にリブランド

 5月7日に、ブログ記事「Google AI Blog: Introducing Google AI」などで発表されている。既存サイトが拡張され、あらためて以下のサイトが公開されている。

Google: PoseNetモデル with TensorFlow.js

 人間の姿勢推定(Human Pose Estimation)がリアルタイムに行えるPoseNetモデルのTensorFlow.jsバージョン(つまりWebブラウザー向け)が公開されている。

Pose Detection in the Browser: PoseNet Model(GitHub「tensorflow/tfjs-models」から引用) Pose Detection in the Browser: PoseNet Model(GitHub「tensorflow/tfjs-models」から引用)

 ちなみに、こういった軽量のモデルを優先して出してくるあたりが「グーグルはモバイル/IoTデバイスでのAIを強力に推し進めている」という筆者の印象に影響している。

まとめ

 以上、カンファレンスでの発表内容を中心に、特に機械学習に関連する部分に絞って紹介した。Hope this helps.

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